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勝負

あの日の昼休みに海結がキレてからも懲りずに絡んでくる金髪にそろそろうんざりしてきた頃、アイツを黙らせるいい機会が来た。


「今日の体育は男女一緒に百メートル走をする。来たるべき体育祭の選考基準にでもしてくれ。」


我が校はそれなりの偏差値にも関わらず行事には積極的な高校である。それ故、体育祭の前に百メートル走のタイムを測ると先輩から聞いていた。

なにを隠そうこの百メートル走こそが金髪を黙らせる恰好の機会という訳だ。


「おい!」


「なんだい?上水流くん。」


それぞれが走る順番に並び出した中、俺は金髪を呼び止めた。


「そろそろお前の相手するのも面倒だからな。どちらがあいつに相応しいか決めようぜ。」


「ふっ。いいじゃないか。この百メートル走で勝負しようってことだね。君にしてはいい考えだね。」


馬鹿にするような微笑みを浮かべる金髪。自分が負けるとは微塵も思っていないのだろう。

しかし、俺は負ける訳にはいかない。どちらが海結に相応しいかを決めると言った以上、負けてしまえば隣に立つことは許されない。


「そういうことだ。負けても泣くんじゃねえぞ。」


「それは僕のセリフだよ。君如きが僕に勝てると思っているのかな?」


勝てると思っていないならこんな勝負仕掛けるわけがない。俺は自分の運動能力に自信はある。あとは相手次第だが、そこに関しては全くの未知数という他ない。


最後尾に並んだ俺たちの番がついに来た。俺たちの会話も聞こえていたみたいで、みんな興味津々でこっちを見ていた。


「これだけのギャラリーが居るんだ。負けても文句は言えないよ。」


「関係ないな。お前こそ散々馬鹿にしてきた俺に負けて、無様な姿晒されても文句言うなよ。」


売り言葉に買い言葉、互いに宣誓を済ませ位置に着く。


「位置について、よーいドン!」


先生の合図に合わせて走り出すも、スタートが少し遅れてしまった。それに対し金髪はいいスタートをきっていた。

五十メートルあたりを過ぎたところでその差は約二メートルから三メートル程。その差を保ったまま八十メートルあたりで前を走っていた金髪がこっちを向いて、勝ち誇った笑みを浮かべた。

だが、この差でその油断は命取りだ。ここぞと思いラストスパートをかけて追いつき、追い抜いた。そして、そのままゴールテープを切った。


「勝負は俺の勝ち。俺と海結に絡んで来るなよ。」


肩で息をしながら手を膝について俺を見上げてきた。その顔は、悔しさと絶望に歪んでいた。

いい物を見れたと浮かれていた俺は、あの会話をクラスの全員に聞かれていたという事実を忘れていた。



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