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稽古

道着に着替えて嫌がる俺を、博直さんが無理やり道場に引き摺り込む。


「始めるぞ。」


ストレッチをして軽く汗を流したらところで、実践形式の練習をすることになった。相手は博直さんで、審判を先輩が務めてくれる。互いが位置につき準備が終わる。


「勝負、始め!」


先輩の合図で動き始めた。


勝負は大差で博直さんが勝った。海結が見学してる手前ダサい負け方はしたくなかった。出来ればかっこよく勝ちたかった。


「ブランクがあったとは思えないほどよく動けてたじゃないか。」


先輩から慰められる。でも、それは言い訳にならないと先輩もよく知ってるはずだ。


「すみません。そっとしておいて下さい。」


「あっ...」


先輩から遠ざかる。途中海結から声をかけられたが無視した。今は顔を見せたくないし見たくない。


「なにを落ち込んでいる。ワシに負けるのは初めてではないだろう?」


しばらく道場の隅で蹲っていたところを、博直さんに話しかけられた。確かに負けるのは初めてじゃない。勝った記憶がほとんどないぐらいには負けてる。


「でも、今日は勝ちたかったんです。」


「それは、海結ちゃんが見てたからか?」


考えているたことを言い当てられて恥ずかしくなる。


「なんでかは分からないですけど...」


「こりゃ、あの子も苦労するわけだな。」


またしても豪快に笑う。


「なにがですか?」


「なんでもない。」


また海結たちのところに戻って行った。先輩が海結に基本の型を教えている。すると、海結がバランスを崩して転けた。鼻で笑ってやったら睨まれた。ひとしきり睨んで満足したのか稽古に戻った。


海結の稽古が終わり二人で帰り道を歩いている。


「運動が苦手って本当だったんだな。思い出しても面白い。」


「ああ〜!転けたのは忘れてよ〜!」


「無理。」


あんなに面白いものを見せられてわすれろという方が無理な話しだ。人があれほど綺麗に転けるのを初めて見た。


「それなら、翔太くんだってあんな負け方しちゃって...」


「...ッ」


触れられたくなかった話題に触れられて思わず息を呑む。まあ、あれだけ酷い負け方をしたんだ。ダサいと言われても仕方ない...か。


「でも、かっこよかったよ。」


「は?」


理解が追い付かない。かっこ悪い、ダサいならまだしも、かっこいい?


「どうしたの?」


「だって、かっこ悪かった。って言われると思ったのに...」


「そんなこと思わないよ。私は素直に必死に頑張ってる君をかっこいいと思ったんだよ。」


それから黙って歩く二人は夕日に染められていた。

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