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ペルティカの箱庭  作者: 綿貫灯莉
第1章 穏やかな暮らし
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第11話 収穫とお礼

 稲が収穫できるくらいまで成長したので、明日雨が降らなければ稲刈りをしようという話になった。



 当日は近所の人以外に、町の中心部からも何人かきてくれた。収穫は基本的に町の人たちも参加して、手伝ってくれた人達に後日お礼にお米を渡すのが一般的らしい。


「今年は豊作だから、たくさん声をかけたのよ」


 シェアトは担当してもらう場所をみんなに指示しながらそう言った。

 刈り取りはコツがあるようで、なかなかルクバト達のようにできず、私たち三人は完全に足手まといだった。それでもたくさんの人が参加してくれたので、なんとか目標としていた範囲の刈り取りが終わった。



 刈り取った分の半分の精米が終わると、さっそくお礼に渡すお米の準備をした。精米したものと、精米前のものをそれぞれ麻袋に詰めて荷車に乗せていく。それらを近くに住む人から順番に配るのだが、ひとり一袋ではなく、どれだけ必要か聞いてその数を渡していくらしい。

 あちこち手伝いに行っている人は食べきれない量を貰うことになってしまうので、少しづつ貰うほうが都合がいいのだという。



 お米を配る日は食事当番のシェアト以外のみんなで出かけた。


「こんにちはー。お米持ってきました」


 農作業の合間らしく、東屋で休んでいるご近所さんを見つけ、ナシラが声をかけた。


「ありがとう。じゃあ、精米してないのを一袋、家に運んでおいてくれるかい?」


 そう言って、遠くの木造の家を指差した。


「わかりました。戸の前に置いておきますね」


 了解すると、荷車を動かした。

 そこは荷車の入らない小道の先にある家だったので、近くまで行くとルクバトが袋を抱えて小道を通り、高床になっている建物の階段を上がって戸の前に置いた。


 そうやって近所の家から順番に配っていくと、中心部に着く頃には半分くらいになっていた。


 野菜を売っているお店の店主も、手伝ってくれたひとりだったので声をかけた。


「こんにちはー。先日はありがとうございました」


 アルドラと私でお礼を言うと、精米したお米を三袋渡すかわりに、誕生の家の菜園で育てていない野菜を分けてくれた。


 他にも茶葉を取り扱っているお店や食器を扱っているお店にもお礼にいった。


「誕生の祝祭の時はよくわからなかったけど、意外と色んなお店があるのね」

「用事がないと、路地には入らないからな」

「でもルクバトは色んなお店を知ってるわよね」

「まあ、あちこちで音楽隊のみんなが働いているから、詳しくもなるさ」

「何かおもしろいお店とかある?」

「この路地を真っ直ぐ行った右手に、少し変わった釣具屋があるよ。俺はやったことないけど、川の水を引き込んだ釣り堀があるらしい」


 アルドラとルクバトが話していると、クラズがキラリと目を光らせた。


「見てみたい」


 そう言って路地の先を見つめた。


「あとはミラクの買い出しを待つだけだから行っておいで。俺は広場で待ってるから」


 ルクバトが笑顔で許可してくれたので、私はアルドラと目を合わせ、クラズと一緒に行こうとすると、心配だからとナシラもついてきた。

 路地をぐんぐん進むと、ルクバトが言っていた通り釣り堀に出た。手前の右手側には釣り竿や針など色々な種類の釣具を売っているお店がある。

 クラズはふらーっと釣具屋の中に入っていき、釣り竿やウキなどを見始めた。私とアルドラは釣り堀まで降りていき、何が釣れるんだろうと覗き込んでまわった。

 ナシラは釣具屋の前で私たちを気にしながらも店主と何か話している。



「そろそろ広場に戻ろうか」


 見学していた私たちにナシラが小声で話しかけてきた。振り向くとそこにはナシラとクラズが立っていて、クラズが何かを大事そうに持っているのが目に入った。


「何か買ったの?」


 尋ねると、クラズは嬉しそうに


「新しいウキを買ったんだ」


そう言って、持っていた小さな木箱をそっと開けて見せてくれた。

 誕生の家では、農作物が売れると私たちにも売上の一部が渡される。家の運営費を除くと微々たる金額ではあるが、それでも自由にできるお金があるのは嬉しい。そうはいっても使う場面がないので、私はもらったままベッドの木箱に突っ込んである。

 クラズはそのお金を使って、初めて自分のものを買ったようで、どこか誇らしげだ。


「これでますます釣りが楽しくなるわね」


 アルドラがキラキラした目でウキを見ている。

 その様子を見て、なんだか私まで嬉しくなった。

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