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第八話

毎週月曜日と木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。

                   2ndステージ




 俺の寿命はあと3ヶ月と宣告された。医者は二つの選択を俺に示した。

一つはこのまま死を待つこと。

一つは冷凍仮死状態で、新薬が作られるまで待つという方法だ。

迷わず俺は冷凍仮死を選んだ。

俺は再び目覚めた時に、どんな未来が待っているのか、楽しみに思いながら眠りについた。




 第一日目




 「雪村さん、起きてください」

誰かが呼んでいる。もう少し寝かせてくれ。

「ご気分はいかがですか?」

再び女の声がする。

「―眠い」

俺は眠気が取れないまま答えた。

「起きて下さい」

その声に俺はようやく目を覚ました。

「―何?ここは何処?」

何だろう病室のようだけど。

「医務室です」

ようやくさっきから話しかけてくる人物に目がいった。黒髪の美人だ。

「手足の痺れはありませんか?」

手足?なんだすごい事になっているぞ。身体が筋肉ムキムキだよ。

「痺れはないよ。鏡みせてくれる?」

「こちらにございます」

女の人が指差す方へ立ってみた。

「・・・・・・」

すげえ俺男らしくなってるよ。いや,男になってるよ。あのひょろひょろした体がない。

「眠る前に希望されていたものでしたから、体を改造させて頂きましたが、お気に召しましたでしょうか?」

「おう、満足だよ。十分」

そういえば、眠る前に筋骨隆々の身体になりたいって希望してたっけ。・・・・・・眠る前?ちょっと待てよ。じゃ今は何?目覚めているって事は・・・・・・

「―今何年になる?」

「2050年です。」

「うっそ、五十年近く経ってるわけ?眠ってからそんなに経つの?」

マジかよ。じゃ俺の同級生ジジババばっかりじゃん。

「ええそうです」

「そっかあ・・・・・・俺の両親とかはもう亡くなってるよな?」

「はい、二十年程前にお母様が、二十五年前にお父様がお亡くなりになっています」

「・・・・・・」

死に目に会わなかったか・・・・・・ごめんなあ、父さん、母さん。

「じゃ俺今六十四才」

「そうです。見た目は若くても、骨などは脆くなっていますので、気を付けて下さいね」

「ふうん。何処から見ても健康そうに見えんのになあ」

俺は鏡の前でポーズをとった。

「それにしても、この服変だよ。他のないの?」

白くて身体にフィットしている。ピチピチしすぎて変な感じだ。

「その服は着たままにしておいて下さい。眼鏡を着けたら説明しますので」

と女の人は、競泳選手の眼鏡のような物を差し出した。

「眼鏡?これを着けるとなんかあんの?」

「眼鏡を掛けてみて下さい。」

「・・・・・・変なデザイン。競泳選手じゃないんだから・・・・・・」

とりあえず言われるままに眼鏡を掛けてみる。

「―ん?何にもないぞ」

ブンという音と共に文字がいっぱい表示された。あらゆる物に対して文字が表示されているみたいだ。

「なんだこりゃ」

女の人を見ると『ツジ型キョウコ』と表示されていた。

「『ツジ型キョウコ』ってなんだ?」

「私の製作ナンバーです。」

「何、なんだって?」

「私はアンドロイドです。ですから、商品名として『ツジ型キョウコ』という名称が与えられています」

「アンドロイドぉ?」

俺は彼女の顔をまじまじと見つめた。

「―確かに」

確かにアンドロイドだこの人。人形っぽいもん。

「私をキョウコとお呼び下さい」

「わかった、キョウコさんだね」

「はい」

キョウコさんは笑顔を見せた。・・・・・・笑顔が少しぎこちない、やはりアンドロイドか。

「ここに服の一覧表がございます。この中から服を選んで下さい」

目の前に服が次々と早送りされる。

「これでいいや」

タンクトップにジーンズ、こんなもんだろう。

「これですね」

キョウコさんが服を再確認した。そして、キョウコさんが何らかの操作をすると、いきなり俺の姿が、タンクトップを着た姿に変わった。

「うそー!なんだこりゃー!」

思わず俺は叫んだ。鏡の前に立つ俺は、さっきの服じゃなく選択した服を着こんでいる。

「眼鏡を掛けていると、服を着ているように見えるのです。一度眼鏡を外してみて下さい。先ほどの服を着たままの状態になります」

言われた通りにすると、さっきの変な服だ。まじで未来ってすげえ。

「あとこの手袋をつければ、眼鏡の操作が可能です」

「どうやってするの?」

おお、何だ?次は。俺はワクワクした気分でキョウコさんを見た。

「最初にこのシステムを起動させるポーズをとってもらいます」

「ポーズってどんな?」

「Vサインとか、あとは親指を立てるとかです」

「じゃVサインで」

「では登録しますので、ポーズをとって下さい」

「イエイ」

俺はVサインをとって見せた。

「OKです」

『Hayama On Line System』と表示されると、パソコン画面のようなものが立ち上がった。

「すげえなこれ、何が出来るの?」

「SNS、メール、買い物、ゲーム、ナビゲーション等あらゆる事がこの眼鏡で出来ます。」

「あなたの自宅に行きましょう。ナビゲーションを立ち上げてみて下さい」

「ナビゲーションね。これかな」

ナビゲーションという文字に触れると行先を訊ねてきた。

「自宅でいいのかな、行先は」

「ええ、そうです」

自宅を選択すると、オレンジ色の矢印が出た。

「PHR130、ナサテB型ここへ」

そうキョウコさんが呼ぶと、男性と変なぬいぐるみが出てきた。

「これが、ぬいぐるみロボットPHR130です」

「よろしくくわ」

ぬいぐるみがしゃべった。

「それから、彼がナサテB型、男性型アンドロイドです」

「よろしくお願いいたします」

俺より弱々しいイケメンの男性が礼を取った。

「冷凍仮死から目覚めた方には、少しでも社会に馴染むように専用のロボットを付けるようになっています。私を含めて三体の中から一つお選びください」

「んーそうだなあ。・・・・・・キョウコさんでいいや」

「では、私がお供いたしますね」

外に出ると、大きな吹き抜けになっており、その周りを廊下が一周している。天井はガラス張りが施してあった。あそこから光を取り入れてるのかな。下を覗くとかなりある。それに暗い、下まで光届いているんだろうか。

「まあいいや」

オレンジ色の矢印は右へと進むよう表示されている。そっちへ足を進めてみた。歩いてゆくと、様々な衣装を着けた人々が通りすぎてゆく。未来人は派手好みだなあ、と感心していると、女の人がセクシーなポーズで手招きしている。思わず彼女の方によってみると、「秘密の小部屋へようこそ」とささやいて消えた。

「キョウコさん、何今の?」

何だ何だ何で消えた?

「広告ですよ、雪村さん。落ち着いてください」

「え?広告?」

「風俗の店です。」

「風俗?」

「ええ。アンドロイドが相手をする店のようですね」

「へえ、どんなのかなあ」

「入ってみますか?」

「うん」

ちょっと興味あるなあ・・・・・・。どんなのだろう未来の風俗って。

入ってみると、暗闇にガラス張りになったアンドロイドが展示されている。

「・・・・・・?」

これが風俗?

「いらっしゃいませ。ようこそ秘密の小部屋へ」

店の人が近づいて来た。

「当店では、好きなアンドロイドをお持ち帰り出来る店です。さあどの娘がお好みですか?」

「・・・・・・ちょっと見てから考えるよ」

そう言うと俺は展示されているアンドロイドを見た。そういう感じの店か、ふむ。

「アンドロイドをSEXの対象にしたのは、一般女性に対してわいせつ行為をやめさせる為です」

とキョウコさんが説明してくれた。

「ふうん、痴漢とか性犯罪をやめさせる為?」

「そうです。おかげで一般女性への性犯罪は無くなりつつあります」

金髪、黒髪、茶髪、眼鏡、色々な容姿のアンドロイドがいる。俺はあるアンドロイドの前で止まった。『○○ゆき』これって片倉ゆきのことかな。雰囲気が似ている。

「これはお目が高い。2001年頃に活躍した歌手に似せて作らせたものですよ」

「やっぱりそうか」

他にも○○さやかとか、○○ともみとかもいる。いいのか、こんなことして。彼女らの許可はあるんだろうか?自分だったらすごく嫌だな。そう店の人に伝えると、彼女達の許可はきちんと取ってあると説明された。自分を売るなんてよくやるよ。俺は内心呆れた。実際○○かおりとか売れっ子は居なかった。ここに展示されている彼女達にも何らかの事情があるのかもしれない。そう俺は思い直した。

「おっ」

俺好みの娘がいる。眼鏡に黒髪、性格おとなしめか、いいなあこれ。

「この娘に決めますか?」

そうだなあ。けどなんかなあ・・・・・・。

「この娘だと、4万ポイントになりますが」

「何ポイントって」

「あなた様は『タワー』での生活が、初めての方でいらっしゃいますか?」

「うん」

「では、説明させていただくと、この世界で使うお金の代わりです」

「ほう」

「円=ポイントとして考えて下さい。円で言えば4万円ということになります。」

「4万円ねえ・・・・・・」

高いんだかわかんねえなあ。

「やっぱ人間の女の子に相手にされたいよな・・・・・・」

最初は人間の人と付き合いたい。

「やめるわ」

「は?」

「アンドロイドを相手にするのやめた。俺は人間の女の子と普通に恋してSEXしたい」

「・・・・・・そうですか、わかりました。では気が変わりましたら、こちらに寄ってくださいます様お願い致します」

「うん、わかった」

多分来ないな。

「出口は?」

「こちらになっております」

出口と表示が現れた。ドアが開く。

「どうぞ」

「ありがと」

「またのお越しを楽しみにしております」

「ああ、じゃまた」

店から外に出ると再び矢印が出てきた。便利だなあ、これ。様々な広告が、目の前で展開している。目がチカチカする。

「目がチカチカしてきたよ。広告多すぎだよ」

「雪村さん、広告が邪魔だったら、広告を見えない様に処理できますが」

「ああそう?じゃそうしてくれる」「はい」彼女はそう言うと広告を処理してくれた。

「ああ、すげー楽」

さっきまで、目の置き場に困ってたのに、広告が無くなってスッキリしている。しばらく歩くと、矢印が壁に向いて点滅している。何やら文字が出ている。文字は雪村宅とある。

「ここが雪村さんの家ですよ」

とキョウコさんが教えてくれた。

「INと表示されている所に触れると扉が開きます」

「ここだな」

INに触れると扉が開いた。部屋は1Kみたいな広さだった。ここが俺の家か。ちょっと狭いな。まあいいやと俺は部屋に入った。


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