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第十一話

毎週月曜日と木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。

                AFTER THAT




「目覚めさせたのは、間違いだったのかなあ」

と僕は葉山に聞いてみた。

「さあね。けど、あのままにしておけば、眠ったまま死ぬ事になっていただろうね」

「なんか自信なくしたな・・・・・・最初から出鼻を挫かれた感じだよ」

「バーチャル体験なんてなくして、普通に目覚めさせたらいいのに・・・・・・。現実世界に戻る時、あんなに怖がっていたのに」

「その方向性も考えておくよ」

葉山はうんうんと頷いて見せた。

「それよりも、今日は君に是非とも会わせたい人がいるんだ」

「誰?」

「これから案内するよ」







「長谷川徹です、よろしく」

その老人は白薔薇園にいた。彼は薔薇を手入れするのが仕事らしい。

「なぜ、日本は鎖国状態に陥ったか、この人に聞いてみてよ」

葉山はそう僕に耳打ちして帰っていった。

「・・・・・・」

長谷川さんは、黙々と仕事を続けている。

「・・・・・・」

なんかやだな、この沈黙。

「あの、綺麗ですね。この白薔薇」

「この薔薇は、特別なのですよ」

長谷川さんは静かに微笑んだ。

「この薔薇の根が、ある男が開発したウイルスに効くんですよ」

「ウイルスって?」

「ある男がばら撒いた殺傷率の高いウイルスの事ですよ。生存率10%・・・・・・恐ろしいウイルスでした。これが日本中に人から人へ感染して広まったのです」

「ああ、それで日本は鎖国状態になったんですか?」

「そうです。そして、この白薔薇を元に特効薬が作られたのですが、これを服用すると、今度は生殖能力が落ちましてね」

「今では子供が20人程しかいません」

どうりで、子供の姿が無いと思ったら、そういう事か。

「でも、新しく薬が開発されましてね。最近ようやく使用され始めました」

「そうなんですか」

「今度の薬は副作用無しだそうです」

「この薔薇を育てる必要も無くなりました・・・・・・。もうこの仕事も無くなるでしょう」

長谷川さんは寂しげに呟いた。

「・・・・・・」

僕は長谷川さんに掛けてやる言葉も無いままに、彼が立ち去るのを見つめていた。







「ウイルスをばらまいたある男が誰かって?彼に聞かなかったのかい?」

葉山は驚きの声を上げた。

「なんとなく聞きづらくなってしまって・・・・・・」

「あの男もはっきり言えばいいのに」

葉山は早口で愚痴をこぼした。

「いいかい。ある男ってのは、長谷川の事だよ。ウイルスを作り、日本中にばら撒いたのは長谷川徹、その人だよ」

「ええっ!本当に?」

全然そんな風に見えなかったけど・・・・・・。

「でもなんで自分のした事なのに、ある男なんて言ったんだろう」

「さあね。その様子だと、ほとんど事実を教えてもらってないみたいだね」

まったく、と葉山は深いため息をした。

「2030年に長谷川徹ら数名により、ウイルスをばら撒かれた日本は、鎖国状態になった」

「なぜウイルスなんてばら撒いたんだろう」

「それは本人に直接聞いてごらんよ。どう答えるかね、ふん」

と葉山はせせら笑った。

「あらかじめ作られた特効薬により、長谷川ら数名は命を取り留める。長谷川は世界中にウイルスをばら撒くつもりだったけれど、それは阻止された。仲間の裏切りによってね。仲間の一人が、警察に告発したんだ。長谷川の目論見(もくろみ)はあと一歩のところで警察に捕まるといった事態になったのさ。それから、特効薬は一般に広められた。この特効薬には、副作用があり、生殖能力が著しく衰えた。その為、人口は激減し、元から少子化だった為、子供も20人程度しかいなくなった」

葉山は険しい顔になって話を続けた。

「しかし、最近になって、新薬が発明された。ようやく、鎖国をしないですむようになったよ。・・・・・・長かったよ、本当に」

葉山はしみじみと言葉を吐いた。

「何であんな事件を起こしたのに、死刑とかにならないの?」

「それは、彼がウイルスを一番知っている人物だからだよ。いままで変幻自在のウイルスを解明出来なかった為、彼に特効薬を作ってもらっていたけど、新薬が出来たんだ。ようやく彼を裁けるときが来たんだよ」

葉山はふふと笑った。

「長谷川徹を裁くのは高野、君だよ」

「えっ?」

「彼が君に裁いて欲しいと言ってね、本人たっての希望なんだよ」

「そんな、僕がする事じゃないでしょ。被害に遭った人達とかがするべきだよ」

「皆死刑を望んでいるよ」

「それなら、それでいいじゃないか」

「ま、考えといてよ。彼を死刑にするのか、どうなのか」


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