第十話
毎週月曜日と木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。
第十日目
「よお!」
キョウコさん抜きで『THE GAME PLAYER』の集合場所に来た俺は、ミナトちゃんと再び出会った。
「今日はアンドロイドいないんだね」
「ポイント稼ぐ方法を聞きたくてね」
「うん、じゃ教えてあげるよ。簡単だからね。ちょっと右手を出して私と握手して」
ミナトちゃんが、俺の右手を掴んで恋人つなぎをした。
「ええ?」
すると、繋いだ手からピンク色の光が生まれ、俺のホルスへと流れて行った。
「はい、これでいい。メニュー→ファイル→ポイントゲッター→スタートで操作してみて」
「えっと?」
戸惑う俺にミナトちゃんはいいから言う通りにと念押しした。
「わかった。メニュー・・・・・・ファイル・・・・・・ポイントゲッター・・・・・・スタート」
すると、100万ポイントという数字が、俺のポイントに加算された。
「うお、すげえ,何だこりゃ」
「簡単でしょ。このプログラム彼が作ったんだよ」
ミナトちゃんが一人の男を指差した。
「すごいなあ君、天才だよ」
まじで感謝するよ。
「それから、畑には週一度顔出せばいいから。月五十万ポイント稼いでいる人は週一だけでいいんだよ」
週一だけかぁ・・・・・・楽だなあ。
「それとこの事は誰にも内緒だよ。アンドロイドには言わないでよ」
ミナトちゃんは釘を刺してきた。
「うん、わかった」
「何だか、もう働く気失せたなあ・・・・・・」
「働かなくていいよ。毎日あたしらと遊ぼうよ」
「うん、そうだな」
楽が一番だなあ。農作業も悪くはないけど、こうしてゲームする生活の方が楽しい。
今日もガンアクションを楽しんだ。楽しかった。こんな日が毎日続けばいいのに・・・・・・。
第十一日目
まいった。ゲーム中に仲間とはぐれて、今自分が何処にいるのか分からない。
ナビを立ち上げるしかないか。ミナトちゃんは、この場所では、ナビを余り使わないようにって、言ってたっけ。ナビを立ち上げて、蛍光グリーンの矢印が出たらやばいって。その矢印の通りに行くとある店があって、その中に入ると気を狂わせる装置により気が狂うって。
「・・・・・・」
俺は悩んだあげく、ナビを立ち上げた。
「うわっ、嘘だろ?!」
蛍光グリーンの矢印が出た。ホルスを外してみる。
「・・・・・・まだ見える」
まだ矢印が消えない。どうなってるんだ?
「まじで?気味悪いよ」
けど行くしかないのか?帰り道も何も分からない。
「・・・・・・」
矢印と反対に歩くってのはどうだろう。
矢印と反対に歩いてみる。すると、歩く方向に矢印が向いている。
「何だよこれ」
矢印は歩く方向に向いている。
「どうなっているんだよ」
俺はパニックになった。歩けば歩くほど、訳が分からなくなっている。いつのまにか突き当たりに来たらしい、扉だ。『バーチャルリアリティ研究所』と書いてある。この中に入ったらおしまいだな。どうしようと悩んでいると扉が開いた。
「・・・・・・」
一人の男が出てきた。切れ長の鋭い瞳を持った青年だ。中肉中背、知的な感じだ。こういう男になってもよかったな、と筋骨隆々の自分の身体をちょっと恥ずかしくも思った。
「・・・・・・君が雪村明さんだね?」
「う、うん。何で俺の名前知ってるんだ?」
「…僕は高野一也、よろしく」
彼は俺の質問を無視して手を差し伸べた。
「・・・・・・」
よくわからないが、一応握手をしておこう。一見とても狂ったようには見えないけど、どうなんだろう。
「ここの中ってどうなってるわけ?人の気を狂わせる装置があるって聞いたけど」
「―そんなのは無いよ。ただ椅子が置いてあるだけさ」
「じゃ、君は狂ってないわけだ」
「その通り、単なるデマだよ」
「入ってみる?」
「本当に大丈夫?」
「大丈夫さ」
「本当かなあ」
まじで怪しい。
「入ってみればわかるよ」
「うーん、中を見てみたい気持ちもあるけど・・・・・・なあ」
やっぱ怖いよ。
「入れって」
高野が俺の手を引っ張ってドアへと導く。
「うわっ、ちょっと待ってよ」
俺がわめくと同時にドアが開かれた。高野に引っ張られて、中へと入る。
―・・・・・・部屋の真ん中で、何の変哲も無い椅子が置いてある。
「ほら、ただの椅子だろう?」
「本当だ」
「そこに座ってみて」
「う、うん」
俺は言われるままに、椅子に座った。高野が俺の手足にベルトを付け始めた。
「何だよこれ、外してくれよ」
俺はもがいたがもう遅い、完全に身動き出来ないでいる。
「ええ?どうなるんだ」
頭にヘルメットみたいなのを着けられた。これが気を狂わせる装置かと思うと余計に怖くなった。
「外してくれよ、何だよこれは」
「大丈夫。現実の世界に戻るだけだから」
高野がレバーを引いた。瞬間光が溢れ部屋が真っ白になった。それから真っ黒な闇へと変わっていった。
GAME OVER
「目覚めたみたいだね」
高野の声がする。何だ俺は眠っているのか?
「ようこそ現実の世界へ」
電灯のスイッチが入った。高野がベッド脇にいる。
「何だ?俺はどうなったんだ?」
手を見ると青白い腕がある。嘘だろ元に戻っているのか?
「鏡、鏡は?」
鏡が差し出される。鏡を覗くと想像した通り元の青白い嫌な顔だ。
「何だよこれ。何で元に戻ってるんだよ」
「これが現実の君。筋肉ムキムキの君はバーチャルの世界のみで出来た事だよ」
高野の隣にもう一人男がいる。
「誰あんたは?」
Tシャツ姿に白衣を着ている。医者か?
「葉山桐人」
「あんた医者?」
「まあ、一応」
「なんであの体に出来ないのさ」
こんな体に戻るなんて。胸に触れてみる。・・・・・・やはり胸がある。男になっていない。
「男にしてくれって眠る前に頼んであったじゃないか!こんな現実いらねえよ。バーチャルの世界に戻してくれよ」
俺は怒り狂った。
「じゃ、性転換手術を受けるかい?」
「そうしてくれよ。こんなヒョロヒョロした体はいらねえんだよ」
「わかったよ。けど筋骨隆々な体にはなれないよ。なりたきゃ自分で鍛えるんだよ」
「それでもいいよ。手術してくれ」
「了解」




