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辺境の村にて.9

「さて、アストリア。今日は成人の義。とは言っても緊張する必要はありません」

「ンメェ~」

「はい。ちょろっと教会でお祈りを捧げればいいんですよね?」

「ええまあ。そうなんですけどね」

「ンメェ~」

「それじゃあ行こう」

軽いなと思いながらもアストリアに続くのだが私は慌てて呼び止める。


「待ちなさい、アストリア。その子ヤギはなんですか?」

「あー、ほら。ユニがへこんでるからこの子だけ着いてきちゃったの。ほっとくのもかわいそうだし」

「そうですか。ならここに置いておきましょう」

「え?子やぎだよ?可哀想だよ?」

「……そう言われると私もなにも言えませんね」

静かにため息吐く私にアストリアはにこりと子やぎを見て微笑む。




アストリア視点



それに一緒に成人の義を受けたら子やぎもスキルを覚えるかもしれないのだ。

それはなんかワクワクすることで。アストリアが変わってることには違いないと言うこと。




「さ、おいで」

「ンメェ~」

子やぎを連れていって中に入ると教会の天井のステンドグラスに陽の光が反射してこちらに降り注ぐ。





「幻想的だね。陽が照らしてる時って」

「そうですね。光の女神様があなたのためにスキルを授けてくれますよ」

私は曖昧に頷く。もしも光の女神がいるならば孤児なんて意地悪なことはしないし。みんなもっと幸せだと思うから。




「さあ。アストリア。祭壇の前で祈りを捧げなさい」

「ンメェ~」

「あ、あなたではないですからね」

「はは。一緒に祈ろっか?」

「ンメェ~」

私に誘われて嬉しいのかな?鳴く子やぎ。師匠はもう諦めたように好きにさせることにした。


陽の光の下でしゃがんで祈りを捧げる。それは暖かくてどこか神聖に気持ちになる。ぽかぽか暖かくて……このまま……寝て………しまいそう……だ。






アストリア。アストリア。あなたに光の女神の加護を授けましょう……だから起きて下さい。



心の中に浮かぶ光の女神の声は優しくて穏やかになれる声だね。


「あ……あっつい!なに?この気持ち………」

身体が暑くてなにか迸るそんな気持ち。



あなたに星使いのスキルを授けましょう。

でもこれはレアなので人に話しては行けませんよ。信用出来る人にだけ話しなさい。



「……アストリア……アストリア?」

「……あ。師匠。おはよう」

「ンメメェ~~?」

我に返った私が子やぎの異変に気づく。

子やぎは自分の身体が暑くてなにかが駆け巡るのを感じて叫んでしまった。

なにやらみるみる姿を変えていくので二人は唖然として眺めている。


子やぎは、簡単に言えば獣人みたいにヒト型の子供になったのだ。


「な、なにがあったのですか?こんなの初めてですよ!」

「おお!か、かっくいー!凄いよ、ミシェル!」

ミシェルは子やぎの名前である。今、私が決めた名前なんだけど。


そのミシェルは自分の身体を確かめるように見てから師匠と私を交互に見る。


「ンメェ~。私の名前はミシェル。ユニ様に飼われている子やぎ紳士です」

「し、紳士なんだ?」

「そうです。アストリアさん、気を付けなさい」

「はい?あなたのお陰で私は進化しました。

子やぎの中でも勝ち組と言えるでしょう」

「か、勝ち組……」

師匠もどう反応していいか分からない。だってヤギが進化するとは思わなかったから。


「トレクさん。アストリアさんのスキルは明るさです」

「「は?」」

「そう言うことにしましょう」

子やぎはそう言うとンメェ~と鳴いた。

なんで嘘をつかないといけないのか分からないけどともかくこれで儀式はすんだ。


「さって帰るかな~」

大きく伸びをする私にトレクは尋ねた。

「待ちなさい。あなたのスキルはなんなのですか?」

「んー?師匠ならいっか。星使いだって」

「…………!」

愕然としてる師匠に手を振り私は駆け出した。ミシェルも続く。




ミシェル視点



「アストリアさん。アストリアさん!」

「なに~~~?」

「スキルのことは人に話してはいけませんよ」

「師匠なら大丈夫だよー!信用出来るし?」

「そうですかね~?ンメェ~」

子やぎとしてまだ長くは生きていないがあのトレクはみんなの前ではにこにことしているけどたまに怖い表情をしてることがある。だから心配だ。


通りすがりの村人に挨拶する時に酷く驚かれたのはこのミシェルが二足歩行でかけているからだろう。


「さてと、ゴブリン退治に行きますか?」

「アストリアさん。あなた生き急いでます?」

スキルを覚えたばかりなのだ。よく知りもしないで行かないだろう。


「へーきへーき!ミシェルも行こう」

「はぁ。しょうがないですね。ユニ様のことも心配ですが他の羊たちがいますからね。あなたは無鉄砲の不発弾みたいですからね。ついていきますよ。ウール100%の私がね」

「んー?それって羊のことだよね?」

「細かいことはいいですよ」

「でもそんなに無鉄砲って言うならさ。あの冒険者たちにでもまたお願いしよっか?」

ドカストたちのことだろう。しかしミシェルは表情をしかめた。

今朝方、アストリアのとこへ行くとき家の物陰であの冒険者の男と村娘のリンダがキスしていたのだ。チュッチュチュッチュとね。

村がピンチなのにそんなことしてることとリンダがあんな軽率な冒険者に引っ掛かってることに腹を立てたので、一声鳴いてやったらびっくりしてこっちを見ていたのが気分が良かった。

どやされながらもアストリアの元へと向かったのだった。リンダ。目を覚ませ。お前は街から来た男に憧れてるに過ぎない。



つづく

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