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辺境の村にて.4

「さて。みんなに問いたい。わしの嫁候補を見つける手段を!」

村長の言葉にみんなしーんとなる。夏の終わりだけどまだ少し暑い。集会所の中はむしむしするからきっと村長なりの冗談なんだろ。寒くするためのね。

その空気がひんやりするくらいに寒い。思惑通りか。




「村長!魔物をどうにかすることを考えるんでしょう!」

「おお。ちょっとした茶目っ気なのに怒るでない」

「ふん。もうろくしたなじじい」

「ダントン。貴様はいつも飲んだくれてアストリアに迷惑かけておるのに偉そうじゃの。てか誰がじじいじゃ!」

「それじゃあ、くそじじいだな。それに俺は『うわばみ』のスキルがあるからな。いくら飲んでも酒の神よりは酔いの回りは遅いぜ」

「「「「よってるっつーの!」」」」

みんなのツッコミをスルーしてダントンは酒を飲む。

それが私には恥ずかしい。

こんな時くらいシャンとしてほしいもんだよね。



「おいおい。魔物をどうするかだよ」

「そうよ。ゴブリンの巣が発見されたのよ」

「トレクさん、なんとかなりませんか?」

話しを向けられたトネクは教会の神父。村が貧しいからか癒しの術を使うのにお布施を取らないからみんなから慕われてる。

トレクは元は冒険者としても活動していた細身のおじさんといった感じだよ。



アストリアが教会の裏手の木で木登りしても穏やかに微笑んで許してくれたので子供たちからも慕われている。まあ、その後でダントンに怒られたのだけど。のんべめ!



「猟師たちの報告もあって見回りに出ていたが山の中腹に穴が掘られていてそこを住みかにしているようだ。だが私一人ではどうにもならないよ」

「はい。私!私がいるよ!」

そこへ元気よく手を上げたのは私。

こんな重たい空気でも気にならないのだ。

それに師匠に鍛えてもらってるからなんとかなると思う。



みんな、なにを言ってるのかと呆れている。

私はまだ、成人前の小娘と思ってるのだね。

仮に成人を迎えていても道具屋の娘を連れてはいけないとかかな。



「アストリア、空気読め。お前の出番じゃないな」

「断る!私は師匠に色々教わったから!少しは役に立つよ!」

ダントンが止めても怯まない。だってただの酔っぱらいだから。家のことを任せきりだから強く言われる筋合いはないのだ。


「うるせぇ!お前はただの小娘だ!なにかしたいなら傷薬でも用意しておけ!」

「お父さんだって酔っぱらいじゃん!私だっていつかは冒険者になるんだよ?

人に文句を言ってないでお酒を卒業しなよ!?あなたぼっちになるよ!」

「お前は親に口答えするのか!冒険者なんか出来る訳ないだろう。ここで薬屋でもしてろ!そうして俺を養え!」

「なにそれなにそれ、ばーか!そんなんだからお母さんも出てくんだよ!ばーか!」

シンと静まる集会所内。誰もヒートアップする親子喧嘩を止められない。


「てめ……」

ダントンが沸騰寸前のまま私にドスドスと村人を押しのけて近づくが村長の一喝に止められる。


「やかましいわい!親子喧嘩なら他所でやれ!今は村のことを考えい!」

これはヤバイみんな思う。村長の悪い癖が発動した。


「そしてもっとわしに注目せい!」

じたばたと駄々っ子みたいに床に寝転がるので村人たちは呆れる。いい年してなにしてんだかと。しかし村長は自分が注目されないのが昔から嫌だったね。


「おほん。村長、話し合いをしましょう」

トレクは咳払いすると村長を宥める。村長もハッとして我に返ると恥ずかしそう。恥ずかしいことには変わらないのだ。

てか、私の心配もしてほしいんですけどね?


「ダントンも落ち着きなさい。アストリアも親に向かって言い過ぎです」

「「うぐっ」」

トレクに優しく窘められれば二人とも黙るしかない。密かにホッとするユニの横でティリアが手を上げる。



「あの。それなら私を送ってくれた冒険者な頼んだらどうかな?」

ティリアの言葉に大人たちはそうかと納得するものの女性や子供たちからは不満の声が上がる。


「ええー!あの人たち態度悪いぜ!」

「ホントになー。遊んでくれねーし!」

「私は口説かれたわ。あの戦士の人、いやらしいわ」

「あー、私もだった。でもいいかも」

「リンダ、あなた正気!?」



ティリアもうんうんと頷く。ユニも羊たちを邪険に追い払われたのでいい気はしない。


「しかし、腕はそれなりにあるのなら頼んでみてはどうかな?」

「そうだな。しかし、いくら支払えばいい?」

「ギルドを通さなくていいのか?」

村人たちが口々に意見を飛ばす。


「だから~!私が行くって!」

「「「お前は黙ってろ!」」」

村人たちに一斉に言われては私は膨れるしかない。ちくしょうめ。


「うう。ユニ。みんなが私をいじめるよ!?」

「まあまあ。みんな心配してるんだよ。アストリアはまだスキルも覚えてないんだから」

抱きつく私を宥めるように背中を優しく撫でる。やっぱり良い匂い。



「そうだぞ、アストリア。お前はなにするか分からないからな」

「ティシュまでそんなこと言う~?魔物を倒したくないの?」

「俺は木こりだからな。そんなのは冒険者に任せておけばいいって」

ティシュは夢がないなと思いつつも木こりとして頑張ってるから私よりは立派かとも思う。






ティシュ視点




昔、よくやっていたのが、村を出ては近くにいる狼型の魔物に石を投げては挑発して追いかけられる、命がけの追いかけっことか。


山に住む鷹のような魔物の上に飛び乗り空を飛ぼうとして失敗したりとか。

もちろん村の大人に怒られたけれど。


それでも成長して美しくなっていくアストリアにときめく俺としては、アストリアに危険な真似をしてほしくない。


いつか旅立ってしまうアストリアとそれまで楽しく平和に過ごしたいから。

横目でチラリとアストリアを盗み見る。

もう少ししたらこいつも村を出てくんだな。

小さい頃から当たり前のように隣にいたから。

ティリアが村を出た時とは違う寂しさが胸に広がるかもしれない。



つづく

人気でないですねー。ワールドウォークの方はもうしばらくお待ちください。

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