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辺境の村にて.2

店番も終わり午後になると父親も酔い止めの頭痛薬を飲んでから店番に立つ。


それはとてもめずらしいことなので私もいぶかしむ。


「お父さん?珍しいね、店番に立つなんて?雨でも降るんじゃないのー」

「るせーな!酔っぱらいな千鳥足接客を見せてやろうか……てて。あっちにふらふら、こっちにふらふらだこら」

「自慢になりませんよ、のんべ!あなたのせいで貯金も貯まらないんだからね」

うっぷんをはらすようにキツくなる。そう言いつつも頭痛薬と水を一緒にわたす。


「はぁ。お父さんのいいとこは『薬の知識』と『野草の知識』があることくらいですね!」


「それはどうも、光栄の至りですなぁ。娘よ。ぶーぶー言ってないで稼いでな」

「ふんだ。出掛けてきまーす」

私は昼食のお弁当を持って外へ。ムカつくぜ。父さんよ。



傾斜の強い場所に建てられた村の坂道を上がっていくとその先には大きな木がある。世界樹程ではないが、かなりの年月この村を見守ってきた大木だ。


そこでぽかぽか陽気に当てられて景色を眺めながら食べるパンは最高なのだ。気づいたら打とうと寝てしまうこともある。



「おっと早かったな。今日は俺が一番乗りかと思ったのによ」

幼馴染みの一人ティシュだ。金髪を逆立てて小振りの斧を左手に持っている。木こりだから森の中に入っていくのにお昼になるとわざわざ戻ってくる。



「おや。木こりの少年。開拓は進んでいるかね?」

隣に座りパンをかじり疲れた顔をするティシュを労いつつ尋ねる。


「分かってて聞いてる?父さんがオーバーワークしてっからな。腰を痛めるんだよ」

ティシュの父親は仕事熱心でやり過ぎる時がある。

その結果で腰を痛めてしまったのだ。


「腰痛の薬いるよねー?」

バスケットから腰痛の薬を取り出してわたす。

「お、悪いな。いくらだ?」

「いいよいいよ。うちの親いつも好き勝手だから、こっちも少しだけね~」

ティシュは、私の笑顔を眩しそうに見た後うつ向く。おや~?おやおやおや~?

もしかして照れてる?



「ありがとな」

ティシュは顔を見ないようにして受けとる。見るとドキドキするから。なんちゃって。そんなことないか。



「……でも。アストリアは冒険者になるんだよなー」

食後に寝っ転がりながら言葉にする。寂しさを吐き出すように。ティシュ?

夏の終わりの秋の風が混じり始めてる。



「だねー。私は冒険者になって稼ぎまくるんだー。えへん!」

「せいぜい死なないようにしろよ」

「大丈夫、大丈夫。頑張ってるからね!それよりさ~」

寂しい雰囲気を吹き飛ばしたくて。私は明るく言葉を風に乗せる。




「おやおや。相変わらず仲良いね~」

「うわぁ~!ティリア。久しぶり!」

私はは嬉しくてティリアに抱きつきます。

ティリアは私たちのお姉さん的存在。

緑の髪の整った顔立ち。スラリとした背丈。スタイルのよさ。私にとっての憧れの女性。

小さい頃からいてしてもらっていたのでみんな、ティリアによく懐いていた。


そのティリアが帰ってきた。陶芸家としてそれなりに有名で、ティリアの作品はここからはなれたとこにある街に出回ってるのだ。

そして、街でも有名な美人なので声をかける人も多いとか。


「や。アストリア。相変わらずの明るさでおねーさん癒されるよ~」

「もう。それほどでもあるけどね~!

帰ってくるなら言ってよ~!」

「ごめんごめん。びっくりさせたくて。それにしても二人の仲の良さは相変わらずだね~。いつ結婚するの?」

ティリアの言葉にびっくりする二人。

慌てて立ち上がるとぶんぶんと首を振る二人。


「ち、違うよ~~!ティシュはただの幼馴染みだよ!」

「そ、そうだぞ!だれがこのちんちくりんと!」

「むー!今、ちんちくりんて言った!?」

「ほ、褒めてるんだぜ。ちんちくりんみたいに可愛いって!」

「上等!」

喧嘩するほど仲の良いこと。相変わらずの関係でティリアは嬉しく思いつつ、大きな大木を見上げる。


村のシンボルの名も無き大木。みんなからは千年樹と呼ばれていて子供たちはここでよく駄弁った。


風に吹かれてかさかさと葉を揺らす。木漏れ日が綺麗でつい見上げてしまうティリア。ここは変わらないなと。

都会のせかせかした時間の中にいるとゆったりとしている。そんな感じ。


ユニもやって来たのでティリアも三人とお昼をたべることにした。昔、よくそうしたように。

うんうん。みんな揃って良い感じだ。このまま成人の日もにこにこと乗り越えたいものだ。



つづく


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