第一話:過疎の村
・中学二年 : 山本 太一 男子
・中学二年 : 川井 朱里 女子
・中学二年 : 谷村 里美 女子
・中学一年 : 木島 源太 男子
・小学六年 : 橋本 響 女子
・小学五年 : 山本 杏子 女子
・小学四年 : 鈴木 宗近 男子
・小学三年 : 木島 孝治 男子
・小学二年 : 原田 翔 男子
・小学二年 : 原田 則子 女子
・教師 : 長谷川 幸助 男性
過疎の進む村にある、小中一貫校。
生徒数、10人。教師、1人。
過疎っている村だけあって、村人はみんな顔見知り。
生徒たちは、みんな家族みたいなものだ。
校舎の、一つの教室に集まって、仲良く教えあいながらプリント問題を解くのがほとんど。
学年ごとの授業とかはさすがに無理だから。
そんな学校も、来年、廃校が決まっている。
それまでも、何度も廃校の話は出ていたらしい。しかし、生徒の受け入れ先となるとなり町の学校は、車で片道一時間。
登校時はともかく、下校時は、低学年、高学年、中学生と、スクールバスを三台用意する必要があり、分校扱いのこの学校に教師を一人派遣するのと、スクールバスを三台用意するのとでは、コストの面で結構な違いになるらしい。
(なお、通学には保護者が持ち回りで車を使えばという声もあったものの、負担が大きすぎると反発があった模様)
そのため、これまでは、たった一人の男性教師に10人の生徒、児童を丸投げ状態だった。
それでも良かった。みんな、それでも良いと思っていた。
朝一時間早く起きて、夕方一時間遅く家に帰ることに比べたら、見知った顔ぶれで和気あいあいと過ごした方が良いと思っていたから。
けれど、それも、今年まで。
来年からは、同じ学校に通うにしても、学年ごとにバラバラ……というか、正規の状態になる。
みんなで授業をするのも最後ということで、この最後の夏の思い出作りに、何かしたいことは? と意見を出しあったとき、彼女は言った。
「恋がしたい」
と。
花が咲くような素敵な笑顔で、そう言った。
……けれど、それは。
恋をしたいと言った彼女は、川井 朱里。中学二年の女子。
教師含めて11人しかいない学校内では、誰が誰を好きとか、みんな知っている。
男子のほぼ全員から好意を寄せられている朱里は、しかし、誰のことも友達でしかないと言う。恋愛対象にはなっていないと。
だからこそ、恋というものをしてみたいと言い出したらしい。
「誰と?」
困惑した様子で問うのは、朱里と同い年の谷村 里美。
同じく同い年の山本 太一と、親の都合で付き合っているが、当の太一は朱里のことが気になっている様子。
と、いうのも、朱里は元々都会の方から自然豊かで空気のきれいなこの村に両親と共に移住してきた者で、元々身体が弱く儚げな様子は、男子と一緒になって駆け回る他の女子とは印象が大きく違い、注目の的になっていた。
唯一の教師の長谷川 幸助から見ても、村の子どもたちとは色々違うということが分かる。
幸助は、元々この村の出身で、高校からとなり町に出て大学を卒業し、教師として分校扱いのこの村の学校に赴任したわけだが、廃校になるとかならないとかでひと悶着あったらしいと聞いていた。
そもそも、定年後に臨時雇用されたおじいちゃん先生が退職したら、それに合わせて廃校になることが決まっていたという。
そこでまた、ひと悶着。
それなら、この村の出身の幸助が適任だろうと白羽の矢がたったわけだった。
高校、大学と、七年ほど故郷から離れていた幸助のことを覚えている生徒もいて、嬉しくなったわけだが……。
それに合わせるように、病気により余命数年と宣告された朱里とその両親と合流することになり、道案内を兼ねてしばし一緒に行動してからは、都会からの移住に不安の残る朱里をなにかとサポートすることになり、この村で過ごす三年の間に、教師としてではなく兄のような気持ちで接するようになっていた。
そんな中で、また出てきた廃校の話。
またひと悶着あるのかと思いきや、今度は正式に廃校になるらしい。
というのも、校舎の耐久年数が限界にきているという。
最初の廃校の話も、校舎の耐久年数が理由になっていたという。
しかし、村の方で反対運動をしたら、定年退職をして暇になりそうなおじいちゃん先生が名乗りをあげ、限界まで頑張ってくれていた。
その後釜が、地元出身の幸助だった。




