真琴のアルコールデビュー(2)
佳子の家は2LDKの分譲マンションの一部屋だ。
「ただいま」
と佳子が家に入ると、部屋の奥からネコがやって来た。
「賢そうなネコですね」
二人の方に歩み寄ってくるネコを目に、真琴が言う。
「あら、わかる? すごく賢いのよ。前にも言ったと思うけど」
競馬の三連単をネコが予想した話である。でもどうやらネコが競馬を予想したのはあの一回だけだったようである。そして、最近は何か人が変わったように部屋中を歩き回っているらしい。
二人がお酒を飲み始めて数時間が経った。
そこには、真っ赤になったミロのビーナスがいた。
まさに、ミロのビーナスである。もちろん上半身が裸である。
赤く熟れた桃が二つポヨポヨと揺れている。
「ちょっと、真琴ちゃん。なんで服を脱ぐの?」
佳子が言う。顔を少し赤くさせながらも酔いはそれほど回っていない。
「うぇぇぇえ? なんデェエですかぁっつて? 脱ぎたぁいからに、決まっってるヤァないレスか」
完全に酒に酔っ払った真琴が、意味不明なことを言っている。
テーブルの上には、空になったチューハイの缶と黒縁メガネが転がっており、椅子には上着が、床にはキャミソールとブラジャーが転がっている。
「もっーうちょーッツつつと、脱いだホーガァァァ、気持ちーーーンレすよ」
と、スカートに手をかける真琴を、佳子は眺めるだけだった。
家に連れてきておいて良かった。佳子は心の底から思った。
数学者のネコはトラに転生してしまったため、ネコは人が変わったように歩いています。もはや、普通のネコだからです。
数学者が転生したネコが、トラに転生した話は、こちらです。まだご覧でない方は、是非ともご覧ください。『素粒子物理学を研究する理論物理学者だった私は、気がつけばライオンになっていた〜身につけた物理学の知識はライオンになっても役にたつ〜』(https://ncode.syosetu.com/n0834gf/)




