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真琴のアルコールデビュー(1)
秋山真琴と高村佳子は競馬場を後にした。
結局のところ、真琴は600円のプラスで、佳子は23000円のプラスだった。次のレースに買った三連単が無事に当たったのである。
「佳子さん、すごいですね」
「はは、まぁね。三連単狙いは、当たった時が大きいからね。いやぁ、良かった良かった」
佳子は満面の笑みを浮かべている。
「あっ、そうだそうだ、せっかくだから、お酒でも飲まない? ご馳走してあげるよ」
「えっ、いいんですか?」
真琴は飲み会に誘われるのが初めてなのだ。
「お酒は大丈夫? だよね? 競馬をやっているくらいだから二十歳だよね?」
「もちろんです。年齢的には大丈夫です」
「年齢的には、ってことは?」
「まだ飲んだことがありません」
真琴は首を横に振る。
「じゃあ、強いかどうかもわからないわけね。面白そうね、じゃあ、うちで飲みましょうか? その方が安全だし、やばかったら泊まっていけばいいし」
佳子は社会人としての良識を持った女性である。
「はい。じゃあ、佳子さんの家に、お邪魔します」
真琴は、えいっと右手を上げた。




