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初めての馬
真琴は競馬場に来ていた。
真琴が人生で初めて足を踏み入れる場所である。
馬のレースには統計学的な解析が入る可能性があるとはいえ、まだ統計学を勉強中の真琴にはそれを十分に使うことはできない。
一方で、競馬の情報を解析するためには競馬の勉強もしなければならない。勉強のために一番てっとり早いのは、やってみることである。数学の問題も、とりあえず適当に計算してみることが難問を解くための解法を閃くのにてっとり早いのと同様である。
競馬場の賑やかな雰囲気に飲まれてしまわないように、真琴は心に固く決めていた。
今日は1000円だけしか使わない。と。
1000円は、学生にとって大金である。親の仕送りで生活している真琴にとって重要な生活費の一部である。しかし、統計学の勉強のために重要な投資でもある。
真琴は、勘で数字を選び、鉛筆で線を引いた。3−5−10の三連複に500円と2−4−8の三連複に500円に決めた。
そして、券売機に貴重な1000円を投入した。
親からの仕送りで競馬を始める主人公です。