絶世の美女
馬を選ぶ方法は一定の効果をあげていた。
あれから3回ほど3人で競馬場に行き、真琴は2勝1敗であった。ナリタブラリアーンはそれなりに真琴の期待に答えている。しかし、収支はプラス200であった。どちらも1.6倍の単勝が当たり、これまでのところ、黄金比の女のジンクスは破られていない。
そして今日、3人はまた競馬場に来ている。
「もう、あんたたちのせいで2000円も使っちゃったのよ」
真琴は、カオスと新一に対して怒声をあげる。カオスと新一にそそのかされて、今日はノリで、違う馬にかけてしまったのだ。しかも2回も。
「やっぱり、ナリタブラリアーンじゃないと、私の期待に応えてくれないのよ。私の収入は親の仕送りだけだからね、2000円は結構大きいのよ」
真琴は言った。
「え? 秋山さん、これまで親の仕送りで競馬やっていたんですか?」
カオスと新一は、目を見開く。
「何よ、あんたたち。その目は」
真琴は頬を少し赤める。
「だって僕とカオスとはアルバイトをしているんで、そのお金で競馬をしているんですよ。いや、秋山さんもアルバイトしているものだと思っていました」
新一が落ち着いた声で言う。口元は少しにやけていた。
「いや、私こんな見た目でしょ? それに、人と接するのが苦手だから、アルバイトとかしたくないのよ」
「そうなんですか? でも、秋山さん、そんな見た目悪くなさそうですけどね。その前髪をあげて、メガネを取ったら、雰囲気変わると思いますよ」
新一は言った。
「僕もそう思います」
とカオスものっかる。
二人に催促され、真琴は、右手で前髪をあげ、左手でメガネを外した。
すると、そこには黄金比の顔を持つモナリザと同様に美しい、容姿淡麗の女性がいた。
「めっちゃくちゃ可愛いです」
二人は目の前に突如現れた美女に驚きを隠せない。
「あらそう、なんか照れるわね。でも、やっぱ、しばらく勉強に集中したいから、アルバイトはいいや。最悪、お父さんに頼めばなんとかなるし」
「いやいや、競馬ですった金を親父に頼るとか、どんだけっすか」
新一は冷静を装いながら応えたが、心臓はバクバク音を立てていた。
「そうですよ」と、同意するカオスも、同様であった。
『真琴のレース収支;マイナス6400円』