新一とカオスと競馬場(1)
今回は、3人で競馬場に来ている。
秋山真琴と弘中新一と菊池嘉織好の確率論の0班メンバーの3人である。
「期待値で計算するとさー、どう考えてもさー、単勝の中で比較するとさー、この50倍とか100倍とかのが高くなるけどさ。これって、当たるのか?」
真琴は、オッズを見て、疑問を抱く。
「でも、50回賭けて1回でも当たれば、プラスですよ」
新一が答える。
「あんた、じゃあ、それがいつ来るんだよ」
真琴はそれに間髪入れずにツッコム。
「とりあえず、3人で別々に賭けますか? 10頭のうち3頭をカバーしたら30%の確率で当たりますし」
カオスが言う。
「いや、待って。あんたはリスクヘッジという言葉を知らないのか? 一人で2頭ずつ賭けたら、10頭のうち、6頭もカバーできるんだよ。60%だよ、誰か当たるでしょ」
「いや、知らないすね」
「知らないです」
新一とカオスは、真琴の言葉に首を振った。
「実際、前回、当たる方に全額かけてれば、2倍の金額が当たっていたんですよ」
新一が言う。
「そうですよ」とカオスも同意する。
「一点集中ですよ」
カオスは親指を立てて、自信満々である。
「あんたたち、それ、まじで言ってんのか?」
「大丈夫です。僕ら数学者の卵ですよ。確率とか、お手のものです」
新一とカオスの暴走を真琴には止められない。
3人が買ったのは、期待値の高いものから3つ。それぞれ、112倍、83倍、52倍である。
当たった時は、大きい。3人揃って、いわゆる大穴狙いである。
「あんたたち、期待値って、なんか違うくね? そもそも当たらなかったら意味ないじゃん」
真琴がぼやいた。