表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/13

8話

 考え終わり、レベルアップの選択を手早く行った。

 自分の中に、スキルの使い方が流れ込んでくる感覚。…なるほど、これなら問題なさそうだ。


 よし、うまくいった。あとは作戦を実行に移すだけだ。


 そして数秒のまもなく、背後からシュルルルという鳴き声に続き、ザラザラと砂利の落ちる音。


 アラクネは完全に脱出したようだ。


 ・

 ・

 ・


 脱出する瞬間を、俺は魔神像の上から見下ろしていた。


 どうやらステータスの敏捷(・・)が上昇すると、ただ速く動けるというだけでなく、体が軽く感じられる。おかげで難なくよじ登ることができた。


 そして、アラクネの目の前には2人の俺の分身(・・)がいた。それぞれの分身と、微弱な意思のつながりを感じる。


(よかった。レベルアップ効果を()()()()手に入れることができて)


 つい口角が上がってしまうが、くれぐれも声を漏らさないように気を付ける。なぜなら、音を立てると失敗するからだ。

 分身体の片方に意思のつながりを通して命令を送る。 


(アラクネを()で挑発しろ)


 すると。


「おいバケモノ!目が悪いようだが俺のほうを見ろ!」


 俺から見て右の分身、分身Aが声を張り上げる。

 アラクネは、その時初めて分身Aに気づいたようなそぶりを見せた。 


(分身Bも挑発だ)


 AとかBは便宜的に今付けたものだが、自分のコピーである分身に意思伝達上の障害はない。


「お前の相手は俺だ!俺のほうを見ろ!」


 分身Bも命令に従い大声を出す。

 対してアラクネは混乱したような表情だ。左右交互に首を振るばかり。そりゃあ、同じ声が二方向から聞こえてきたら戸惑うだろう。

 俺から見て、自分と全く同じ姿が二つもあるとちょっと気持ち悪いが、ちゃんと反応を確かめるため、という意図があった。


(うん、間違いない。あいつは声だけに反応している。目が退化しているんだ)


 あいつが俺を追ってきた原因、トリガーになったのはおそらく自分自身の声。

 今俺は目が見えているから、あいつにも目が見えているんだろうと思い込んでいた。しかし冷静になって考えてみれば、何も必ず目が見えているとは限らない。聴覚や嗅覚が人より敏感に働いている可能性だってあるんだ。

 アラクネは混乱の表情から一変、怒りの表情になる。牙をむき出しにし、より気持ち悪さが増す。


(さあ、どう来る。行動次第では作戦を変えなくちゃいけないけど…)


 そしてアラクネは下半身、蜘蛛の体を後ろ足4本で立ち上げると、尻をこちらに向け、糸を射出した!

予想通り。


 蜘蛛ならば糸を出せるのは何もおかしくない。そしてアラクネなんていうファンタジード定番モンスターが出てくる世界だ。スパイ○ーマンとまでいかなくても、糸を使った攻撃だって、何もおかしくない。現実にはないだろうが。

 糸は狙いたがわず分身Aに命中し、どういう原理か、体をぐるぐると巻いてしまう。そういうスキルがあるのだろう。


(分身A、糸の質感を伝えろ)


(ネバネバ。意外と丈夫)


 アラクネはすぐさま分身Aにとびかかり、下半身の蜘蛛の前足で胴体を切り裂いた。

 分身Aはボフン、と音を立てて煙になって消えた。なるほど、時間切れじゃなくてもダメージで消滅するのか。


 その間、分身Bをコッソリ魔神像の真横に動かしていた。

 だが足音でバレていたのか、アラクネは分身Bのほうにすぐ体を向ける。


(よし、必要な情報はおおよそ分かった。ここからが本番だ)


 俺は頭をフル回転させ、敵の動きに集中する。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ