3話
暗闇の中、壁伝いで、無言で歩くことしばらく。そろそろ自分が壁なんじゃないかと思い始めてきた。そう、俺は歩く壁。ウォークするウォール、なんつって!
…さあ、気を取り直していこう。
そういえば、転生のでてっきり赤ちゃんからスタートすると思っていた。暗すぎて自分の体すら確認できないわけだけど、たぶん元の体と変わらないはずだ。服の感触も制服のままだし。
これ、転移といったほうが適切なのでは?でも俺は死んだわけだし…。考えてもよく分からない。
カサカサ。カササササ。
「ひっ」
またこの音だ。割と初めから聞こえていたけど、もしかしたらやばいモンスターかもしれない。
もし本当にモンスターで、肉食で、腹ペコで、俺の独り言をきいていたら、そいつはどうするのか。心のギャルは言う。たぶん俺君のこと食うよねー。マヂやばいよねー。
そう考えれば考えるほど、俺の独り言は少なくなっていく。
「でもなにかしゃべってないと、気が持たないんだよな」
おっと、つい考えが口からもれてしまった。いっけね。
カサカサ!カササササ!
うわ、また音が聞こえた。さっきより心なしか音が大きい。…気のせいだよね?
カサササ!ササササササササササササササ!
うーん、近づいてきているなー。目には見えないけど、なんか迫力増してきたなー。
…よし、逃げよう。
うおおおお!音と反対方向にダッシュ!脚力には自信あり!
「キシャアアアア!…ジャッ、ジャッ」
いや鳴き声こわっ!一体どんな生物なのか、見当もつかない。
俺は周りに何があるかも気にせず、懸命に走る。
幸運にも鳴き声は近づいてこない。どうやら追ってくるつもりはないようだ。
「ふっ、俺のチートスキルに恐れをなして逃げたか」
まあそのチートスキルの存在はまだ確認できてないんだけど。ハハハ。
と、俺がウイニングランを決めているそのとき。
ゴッッ!
「いたっ!」
壁にぶつかった。そのまましりもちをつく。
「く、油断していた」
むしろ、なんでぶつからないと思って走った。若さか?これが俺の若さなのか?
ふと、自分の額に違和感を感じる。触ってみると、少しねっとりしていた。
おうふ、出欠かあ。めっちゃジンジンする。
「…ちょっと休憩するか」
足元が見えないため、しゃがんで手探りで安全確認。かなり固い平らな地面。
傷口が上を向くように、仰向けになって寝そべる。
ふと、思う。
「俺、生きてここから出られる?」
…グギュルルルル。
お腹が空いたというより、何か食べないといけない気がした。