プロローグ
主人公視点ではありません。
___創成期/名もなき世界___
仲間たちといつものようにテーブルを囲み、ボードゲームをしていた。私を入れて4人のプレイヤーで遊ぶのだが、この日はどういうわけか1勝もできなかった。
「あー、運が悪いね、これは。ついてない。ダイスの出目がわるーい!」
私がそう負け惜しみを言うが、ほかの3人は「はいはい、そうですね」という感じで全然相手にしてくれない。おかしい、昔だったらスルーされることなんてなかったのに。
負けたことに納得がいかないのでもう一戦だけ付き合わせようと思ったが、ふとアイデアが浮かんだので口にしてみる。
「ダイスを二つにするのはどうだ?それで、好きな出目のほうを選べるようにしよう」
すると1人が、その程度なら別にいいぜ、と言った。負けるとは微塵も考えていないようである。
また1人は、かまいませんよ、と言った。こいつは割といつもイエスマンだ。
最後にリーダーが、じゃあそうしよう、と笑顔で言った。リーダーは腕が4本ある。右上手と左上手のそれぞれにダイスを持ち、右下手と左下手でサムズアップを作った。
皆が同意する。私は嬉しくなって、「さっさと次行くぞ」と言ったのだが、三人ともなぜか不思議そうな表情を浮かべた。
「次って、なんだ?」
リーダーの言っていることが理解できなかった。ルールを変えたのだから、もう一戦やろうと、そう言っているんだ。私が答えると、リーダーは悲しそうな、申し訳なさそうな顔で、「ごめんな」と、ただそれだけの短い言葉を発して、気づけば消えていた。
ほかの二人も、悔しい、やりきれないといった顔のまま、リーダーの後を追うように消えていった。
「なんで…、先に行っちゃうの…?」
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そこで目が覚めた。
かなり懐かしい夢を見た。懐かしいけど、忘れるはずもない。
しばらく思い出にひたっていたいが、彼らのためにも、やらなくちゃいけないことがある。
簡単なことだ。人さらいと同じだけど、女神のふりをすれば、容易に騙せる。
その程度のことで心を痛めていたのは、ずっと昔のことだ。