「こんな冬があってたまるかよ!」No.4
ピーンポーン
「はい、どちら様で?」
「はあ、はあ。 俺だ! 紗月だ!」
「ちょっと待ってね、今出ていくから」
全速力で自転車をこぎ杏樹の家までやってきた。 疲れはとうに限界を超えているが関係ない。
「ほんとに来たのね…… いいわ、少し上がっていって」
「なるべく手短に頼む。 少しでも早く未来を見つけたいんだ」
「なら、急がば回れよ。 手当たり次第では分からないこともあるわ」
杏樹はやけに落ち着いている。 なにか未来の居場所に関することを知っているのだろうか。
それなら早く教えてほしい。
「ならお茶くらいは頂くけどさ。 杏樹はこのことについて何か知っているのか?」
靴を脱ぎ、客間のテーブルの前に座る。 前にご飯をご馳走になった時の席だ。
部屋の端には蘭ちゃんもいて、俺がテーブルに来ると同時に反対側に対面するように座った。
「私より蘭の方が今起こっていることについて知っているから。 蘭、頼むわね」
「うん。 紗月にい、落ち着いて聞いてね……」
「な、なんだって!?」
十分後、俺はとんでもないことを伝えられた。
それは簡単に説明すると拗ねて家出したしただけだという。
ほんとに何してんだよ…… 蘭ちゃん曰はく理由は分からないけど数日したら戻る的なことを言っていたらしい。
「話を聞かせてくれてありがとな蘭ちゃん。 良かったらまた今度遊びにでも行こうか」
「え、いいの!? やったぁ! 紗月にいとお出かけだー!」
蘭ちゃんとは花火大会以来だな、と思ったがすぐに気持ちを切り替える。
さて、俺も行くとするか。
「じゃあ、あのバカ未来を見つけてひっぱたいてくるとするよ。 杏樹、わざわざお茶までありがとうな」
「何言ってんのよ。 いつでもお茶くらい出すわよ」
「じゃあ、カレーの日にでも頼む」
「もちろん、じゃあ行ってらっしゃい。 みーちゃんに教えてあげなさいね、紗月が家族で運命の相手だってね!」
俺はあえて返事をしなかった。 というか返事ができなかった。
いや、流石に運命の相手だって言えるわけないだろ…… そう心の中で思うことにとどめた。
そしてとある場所が頭の中にフラッシュバックしてきた。 そこは幼稚園の頃、すなわち未来がまだ一人暮らしをする前の話だ。
よく三人で遊んでいた秘密基地があったはずだ。 確かあれは……
「あそこか!」
疲労でほぼ動かない足を持ち上げ自転車にまたがる。 頼むからまだ壊れないでくれよ……
場所はわかった。 あとはそこに行くだけだ!
待ってろよ未来、説教は死ぬほどしてやるから頼む。 とにかく無事でいてくれよ……




