「こんな冬があってたまるかよ!」No.3
「もしもし! 未来か!? 今どこにいるんだ!?」
「え、えーと。 私なんだけど……」
電話の先の声は未来、ではなく杏樹だった。
でも一体なんで未来のスマホを持っているんだ?
「杏樹か、話は知っていると思うが何か分かったっぽいな!」
「いや、そういうわけじゃないんでけどね…… なぜか蘭がスマホを預かったらしくてこうして電話をしたのよ」
そういうことなのか…… そうしたら今現在未来の所在は一切分からないことになる。
俺はどうしたらいいんだよ……
「ただね! 蘭が言っている話だとこの町から出る的なことは言ってなかったみたいなの」
「そうか、他に何かあったら教えてくれ!」
「あたりまえよ、私はいつだってみーちゃんの味方だもの」
ブツッ
何か最後の言葉が引っかかるが一応杏樹も協力してくれるみたいだ。
とりあえずまたやみくもにでも探すしかない。
そう思い制服から動きやすい短パンと半袖のパーカーに着替えた。 隣に六実もいたが俺の部屋でもあるし恥ずかしがっている暇もない。
「俺はまた探してくる! 六実はここで情報集めを頼む!」
「待って! 私も探しに行くよ!」
「いや、だめだ。 まだこの家には手掛かりがあるかもしれないし、杏樹や雄二からの情報は俺一人ではまとめられないだろ? だから六実にはここで俺に随時連絡をしてほしいんだ」
そういいながら父の部屋からインカムを取ってきた。 これがあれば自転車を運転しながらでも連絡が取りあえる。
「わ、わかった! 電話も繋ぎっぱなしにしておくね!」
六実が言い切ると同時に俺は玄関の扉を開け階段をダッシュで駆け下りる。
未来の奴、まさか外にいたりしないよな…… この寒さだったらいくら厚着をしていても凍えるぞ……
「紗月、聞こえる?」
インカムを通して早速六実から連絡がきた。
「ああ、聞こえるぞ」
「未来ちゃんはもしかしたら学校方面かも! 管理人さんに連絡したら通学路の方に歩いて行ったのをみたらしいから!」
「早速ありがとな!」
この町の中で俺の家から学校方面…… 結構場所が絞られてきたな、駅とは逆方面だし住宅街でもあるから女子高生が一人で過ごす場所は限られる。
とりあえず学校前まで行ってみよう。
「はあ、はあ。 六実…… 他に情報はないか?」
自転車を全力でこぎ五分もたたずに学校前に着いた。
「うーん…… あ! スマホを蘭ちゃんが持っていたならそっちに行ってるはずだよ!」
「そうか! わかった、すぐに杏樹の家に行ってみる!」
さっきの電話で杏樹は引っかかることも言っていたし蘭ちゃんも含めて話を聞いてみる価値はありそうだ。 それにしてもなんで俺はさっきの杏樹の言葉が引っかかるって思ったんだろう……
『私はいつだってみーちゃんの味方だもの』
ん? 電話している状況だと味方になるのは俺じゃないのか? なんで杏樹は未来と言ったんだろう……
そんなことより今は一刻も早く杏樹たちに話を聞かないと!
俺は全速力で自転車をこぐ。 時間はもう九時になろうとしていた。




