「こんな爽やかな秋があるのかよ!」No.8
「で、何するんだ?」
雄二に強制的に連れ出され俺は知らない道を歩いている。
「それは内緒だな、逃げだされても困るし」
「そんなにひどいことでもされるのか? 俺は……」
「まあ、お楽しみってやつだな」
そういえば雄二にだけは一回だけ誕生日を話したことがある。
このゴリラが覚えているかは分からないけどなんか嬉しいな。
「そーだよ! お楽しみ!」
「うわっ! びっくりしましたよ……」
急に後ろからタックルが飛んできた。
声と軽さからきっと舞先輩だろう。 雄二といるのに舞先輩がいなかったのは違和感だったので少し落ち着いた。
これで雄二が暴走することはないだろう。
「紗月君! 今日は誕生日だそうではないか! おめでとう!」
「あ、どうも……」
「なんだい? 私からのプレゼントが嬉しくないのかい?」
「いや、嬉しいですけど……」
舞先輩が俺に差し出しているのはすごくかわいいアザラシのマスコットのキーホルダーだった。
俺が驚いたのはかわいいところではなく、その大きさだった。
とにかくでかい、だいたい10センチくらいだろうか。
「心配しなくていいよ、男子が可愛いのをつけているのはプラスだからね」
そういう問題じゃないんです。
これをつけてたら逆に引かれそうなんですけど……
「わ、わかりました…… つけせてもらいますね」
「うん! アザラシっていう案はゆーくんが考えてくれたんだよ」
なるほど、俺がアザラシみたいだと。
こんどお仕置きが必要みたいだな。 でもいいか。
雄二が俺の誕生日を覚えていてくれただけで凄いんだからな。
「おっと、もうそろそろいいか」
ん? なにがだ?
「そうだね! そろそろ行こっか!」
「えーと、どこにですか?」
「それはもちろん紗月の家だぞ?」
あ、もう帰っていいんだ。
「ただいまー」
鍵もかかっていたし誰もいないのか。
未来は…… 多分杏樹と買い物かな。
「ふうー、つかれ」
扉を開けた瞬間
パァーン
「「「「おめでとーう!」」」」
「え……」
目の前で起こっていることに俺は頭が追い付かないでいた。
えーと、未来と杏樹、六実に佐藤さんまで!?
これはもしかして祝ってくれているのか……?
「なにキョトンとしてんのー? 早く着替えてご飯食べよー、今日はご馳走だから!」
「お、おう。 すぐ着替えてくる」
ダッシュで部屋に戻るとリビングの方から「ちょっと佐藤さん! 覗きに行かないで!」
と杏樹の声が聞こえてくる。
次から佐藤さんには注意しよう……
「さあー、改めておめでとーつっくん!」
「おめでとう、りゅーくん」
「え、これってあだ名ないといけないやつ!? えーと、おめでとう師匠?」
「あ、ありがとうみんな!」
まさか雄二が全員を集めてくれたのか?
「よかったねー、私たちが日にちを覚えていて」
雄二君、明日にでも話そうじゃないか。




