「こんな爽やかな秋があるのかよ!」No.3
「おはよー」
「おはようございます、未来さん」
僕は記憶喪失のこともあってかあまり眠れなかったです。
「未来さんは朝が苦手みたいですね、コーヒーでも淹れましょうか?」
「うんー、おねがいー」
「少しお待ちくださいね、今淹れますから」
「朝になったら元に戻ってると思ったけどそんなことなかったかー」
「思い出せず申し訳ないです……」
僕は寝れない時間を僕が書いたらしい小説を読んで思い出そうとしていた。
昔の作品はバトルものが多く僕が夢見たように書かれていた、はっきり言って万人受けではないだろう。
「お待たせしました」
「ありがとー」
僕は未来さんにコーヒーを渡す。
そういえば未来さんは昨日、僕の両親にも連絡してくれたらしい。
ただ僕の両親は今海外に出張中で帰れる状況でもないとのことだそうだ。
「僕は今日、学校にいたほうがいいですかね?」
「うーん、思い出すまでは行かないほうがいいかもね。 周りもそうだけどつっくん自身も混乱しちゃうだろうし」
「わかりました」
未来さんが学校に行っている間に僕にできることをしましょうか。
それと僕の最近の小説も読んでみましょう、なにか見つけることもあるでしょうから。
「じゃあ、行ってきます!」
「いってらっしゃい」
なんか照れますね、こういうの。
さて、僕にできることをしましょうか。
「あれ? おかしいですね」
洗濯は未来さんが学校に行く前にやっていってくれたので部屋の掃除をしようと思ったのですが……
掃除をする前より汚くなってしまったような気がします……
僕ってもしかして不器用なのでしょうか……
「それならしょうがないですね、では小説を読みましょう」
僕が手に取ったのは僕が最近書き始めて人気の作品らしいです。
人気なら読んでみる価値はありそうですね。
「これって……」
僕は、いや俺は思い出したように本を置き制服に着替え始める。
なんで忘れていたんだ! こんなに大事なことを、こんなに大事な人たちを。
「まだ、八時十分だな。 よし行ける!」
俺は家を飛び出しマンションの階段を駆け下りる。
注意されようが知ったこっちゃない、俺は進まなければいけないんだから。
「はあっ、はあっ」
全力ダッシュは運動不足な俺には堪えるな……
だけど止まるわけにはいかない!
「なにが未来さんだ! 未来に気を使わせてんじゃねえよ俺!」
よし、このペースでいけば余裕で間に合うぞ!
「あれ? 開隆、今日は休みじゃ」
「俺はめっちゃ元気ですよ」
校門で服装チェックをしている担任に一言伝えてまた俺は走り出す。
見えた! 俺のクラス!
バンッ!
あ、強く開けすぎた……
どうしよう、みんなの視線が集まっちゃたな。
「おはようみんな! 開隆紗月、完全復活だ!」
「「えー!?」」
六実とゴリラが驚きの声を上げる。
なんだよ、そんなに俺のこと好きなのか?
「つっ、くん…… 思い出してくれたの……?」
「当り前だ! 未来こそいっちょ前に徹夜なんかしやがって」
「やっぱりバレちゃったかー、でも思い出してくれてありがとう!」
未来は少し涙目になっている。
そんなに嬉しいのかよ、帰ったら色々と謝らなくちゃな。
まあ、そんなことで紗月、完全復活!