「こんな青春な夏が来ていいのかよ!」No.8
「紗月にい、はいあーん」
「あ、あーん」
なぜ俺は今蘭ちゃんからたこ焼きをあーんをされているんだ?
「おいしい?」
「う、うん 美味しいよ」
「むふふー」
蘭ちゃんは純粋無垢な笑顔を見せてくる。
やめてくれ、灰にでもなりそうだ……
「なんで突然俺を花火大会に誘ったんだ?」
「結構突然聞くんだね」
「あ、ごめん」
蘭ちゃんということもあってか空気読めない感じで聞いちゃったな。
一応デートみたいなものだししっかりしなくちゃな。
「全然いいよ、私が紗月にいを誘ったのは」
「あれ? 紗月何してんだ?」
「蘭ちゃん、ちょっと逃げるぞ」
聞き覚えのある声がして俺は咄嗟に蘭ちゃんの手を握り人ごみに紛れ込む。
このまま人が少ないところまで避難しよう。
「ちょ、紗月にい急にどうしたの?」
「少しだけ我慢してな、あの悪魔が見えなくなるまでは……」
こんな状況を見られたら絶対ややこしいことになるに決まってる。
あのゴリラの場合は弁明する前に噂を広められそうだからな。
「あの、手……」
「ん? 何か言ったか?」
雄二に集中しすぎて聞き取れなかった……
あいつ、うろうろしてないで早く立ち去れよ……
バナナでも投げればどっか行くかな。
「蘭ちゃん、もうちょっとこっち来れるか?」
「う、うん」
屋台の陰に隠れているため結構近づかないと雄二から見えてしまう。
俺は無意識に蘭ちゃんを体で隠すように抱き寄せていた。
「よし、もう行ったみたいだな」
「も、もういいんじゃないかな!?」
蘭ちゃんはゆでダコ並みに顔を赤くしていた。
その顔を見て俺は我に返った。
なんて恥ずかしいことをしていたんだ……
「ご、ごめん! 友達に見つかれまいと周りが見れなくなってた!」
「こ、こちらこそちょっと心地いいなとか思ってごめんね!」
え!? そんなこと思ってたの!?
紗月君まさかのモテモテ!?
「初めてこんな男子の近くに……」
そんなことないみたいだ……
「と、とりあえず通りに戻ろうか」
「そ、そうだね!」
蘭ちゃんと気まずくなってしまった……
ここは年上としてしっかり埋め合わせしないとな。
「少し早いけど花火を見る場所でも探そうか」
「そうだね、下駄は慣れなくて少し疲れたんだよね」
これは空気読めたのでは!?
まあ、変な気は使わず普通に接する方がいいと思うんだよなあ。
「場所はどこらへんにするの?」
「そうだな…… 神社の境内とかはどうだ?」
会場からは少し離れるが丘の上にあり町が一望できる場所だ。
知っている人も多くはないだろうし穴場だろう。
「いいね! 行ってみよっか!」
まだ屋台が賑わっているが俺たちは住宅街への道に歩き始めた。
このあと神社に行かなければと後悔することも知らずに……
蘭ちゃんは書いていて楽しいキャラです!
今後登場増えるかも?




