「こんな青春な夏が来ていいのかよ!」No.2
「紗月ー、アイスー」
「俺はアイスじゃねえぞ」
「けちだなー」
「はあ…… てかもう帰れよ……」
やっとクーラーを設置できたと思ったら今度は暑苦しい奴が居座るようになってしまった……
まじで帰れよ雄二……
「仕方ないだろ、クーラーが俺を離そうとしないからな」
「そういう仕様だから」
ただ最先端で風が人を追いかけるだけだから。
「「お邪魔します」」
え、だれだ?
「杏樹に蘭ちゃん!?」
「あ、私が呼んだの! いらっしゃいー」
「生き返るわー」
みんな新しいクーラー目的なの!?
「新しいクーラーにしたって聞いたから来ちゃった!」
蘭ちゃんならゆるせる……
ただな
「定員オーバーだから雄二、じゃあな」
「え!? 俺かよ!?」
当り前じゃないか。
「じゃあ、男二人は別の部屋で」
なんだって!? なんてことを言うんだ杏樹!
「ひどくないか!? なあ未来?」
「うーん、バイバイ?」
そんなあ…… ここって俺の家じゃなかったっけ……
「まあ、あきらめろ紗月」
そうだな…… 蘭ちゃんまでもがあっち行け、みたいな目で見てくるし……
なんてね、作戦通りだ。
「一体急にどうしたっていうんだよ……」
俺と雄二は部屋に押し込められ二時間出てくるなと言われた。
「女子には男が知っちゃいけない秘密があるんだろうよ」
「なんで雄二を俺の部屋に入れなくちゃいけないんだよ……」
「え!? ひどっ!」
汗臭いのが布団に移ったらどうする……
まあ、そんなことより
「あと、二時間どうする?」
「スルー!? ま、まあゲームでもするか……」
「雄二に貸すコントローラーなんてないよ?」
「俺は覚えてるぞ、紗月が四人分もコントローラーを持っていることを」
ちっ! 覚えていやがったか……
「しょうがないなー、じゃあ手加減はなしな」
そのあと俺たちは某人気乱闘ゲームをして時間を潰した。
意外にあっさりと時間は過ぎ夕方過ぎになった。
「もういいよー」
あ、舞先輩もいる。
そりゃそうか、なんせ今日は雄二の誕生日なんだからな。
あれ? そういえば口にしてなかったっけ?
「あれ? なんで舞先輩までいるんだ?」
「それはな」
俺は準備してくれていた女子陣に目でサインを送った。
「「雄二の誕生日だからよ!」」
パァンと全員でクラッカーを鳴らす。
雄二はと言うと驚きのあまり思考停止しているようだ。
「み、みんなぁ」
やめろ、男の泣き顔なんて見たくない。
気持ち悪いだけだぞ。
「まあ、ドッキリは成功ってことでいいな」
「うん! 大成功ー!」
準備の段階で蘭ちゃんや杏樹まで手伝ってくれるとは思ってなかったけどな。
まあ、雄二が珍しくおとなしく照れてるのが見れたのは良かったな。
「はいよ、ありがたく思えよな」
「紗月、なんだこれ?」
「プレゼントだよ! 恥ずいから言わせんなや」
俺は雄二に似合いそうなGジャンを、未来はそれに合わせるように中に着るパーカーを買ってやった。
「いつも運動しに行くような格好ばっかしてるから少しは先輩のために気を遣えよな」
「うう、紗月ありがたいけど心に刺さるよ……」
雄二にはそのくらいがちょうどいいだろ。
「私と蘭からはこれ」
「これは…… なんだ?」
「うそでしょ…… ここまで服に関心がないなんて……」
やっぱりみんな考えることは一緒なんだな。
雄二は中身を別にすればイケメンなんだから特に服とかは気を使った方がいい。
先輩のためっていうのもあるけど、残念なイケメンって見ていて悲しくなるだろ?
「いい雄二? これはねアンクルパンツっていうの! くるぶしが出るくらいの長さで決して丈が短いわけじゃないからね!」
「お、おう…… ありがたく履かせてもらうな」
「つ、次は私っ!」
うん、ちっこい 蘭よりも……
「私はこれ!」
どうやら先輩は靴のようだ。
ここまで全員方向性が合うなんてよっぽど雄二が服に関心ないってことなんだろうな。
「お! これは俺が前からずっと欲しかったスパイクじゃないか…… 舞先輩、ありがとうございますね!」
ちがったわ、この流れだったらこ普通ドレスコード的な靴じゃないの?
それにしても雄二が一番喜んでるし、さすが彼女って感じだな。
「じゃあ、解散っ!」
「え、早くないか!? もう俺の誕生日会終わり!?」
「あ、先輩と蘭ちゃんたちはご飯食べていきな」
「俺だけ除外なの!? ひどくないっ!?」
やっぱり、みんなで食べる飯は美味しいな。




