「こんな非日常があっていいのかよ!」No.10
「海竜先生なんですよね?」
「なんでそう思ったんですか?」
やばい、やばいぞ。
てかなんで佐藤さんが気づくんだ……?
「この雑誌です」
そう言うとと小説バトルが載っている雑誌を取り出した。
「ここに書いていること、ほとんど実話ですね?」
「うっ……」
確かに女幽霊のモデルは佐藤さんだが……
「やっぱりですか」
「はい……」
バレてしまっては仕方がない……
「何が望みですか? こうやって言いに来たってことは何か要求があるんじゃないですか?」
おそらく素性を隠しているのはわかっているはずだ、だったらこうして言いに来たりはしないはずだ。
「話が早いですね、私の要求したいことは一つです」
「……なんですか?」
「お願いしますっ! 弟子にしてください!」
急に頭を下げてきた。
「え……?」
「実は私も小説家やっていて、海竜先生のファンなんです!」
「えと…… どうもありがとう?」
突然のファン発言はやめてくれ…… 緊張の糸が一気に切れて倦怠感がドッと押し寄せてくる。
「すみません、廊下でする話でもないので良かったら私の家に上がってください」
「じゃ、じゃあ お邪魔します……」
お隣りの佐藤さんちに移動してわかった、うちってめちゃ狭くね?
リビングには壁掛け大型テレビがあり、キッチンはオール電化で最新の調理器具がそろっている。
いったい佐藤さんは何者なんだ……
「さて改めてご挨拶させてもらいますね、佐藤改め豊浜 沙耶と言います 以後お見知りおきを」
ん? 豊浜 沙耶だって!?
「もしかして佐藤さんってあの友恋の作者の!?」
友恋、友達ですが恋をしてもいいですか? と言う200万部突破の大人気ラノベだ。
嘘だろ…… お隣りにこんなすごい人が住んでたなんて……
「そうですよー、ご存じだったんですね! 嬉しいです!」
「いやいや、物書きで知らない人はいませんよ……」
そう、俺とは違って。
「そういうことなら海竜先生も最近有名ですよ?」
「お世辞はやめてください……」
格が違いすぎるんだから……
「いえいえほんとですよ? 小説家たちの間で話題ですよ? たった一晩で重版作を書いた天才だって」
「あれはなんというか…… 人の助けがあったからで……」
ほとんど未来のおかげだからな。
「それでもすごいことに変わりはありませんよ! 読んで私もファンになっちゃったくらいですから!」
なんか照れるな……
「ですが先生? 今回の小説バトルのこの幽霊のモデルって私じゃないですか?」
「やっぱりわかりました……?」
「そりゃそうですよ! 実際私が驚かせたんですから!」
佐藤さん、もとい沙耶さんは笑顔交じりで言う。
なんか和むなあ。
「そこで勝手に私を使った海竜先生にお願いと言うか命令をします」
「えっ!? 急にそんな!?」
確かに許可は取ってないけど……
「私の命令はたった一つ! 弟子にしてください!」
「さっきもそうですが弟子ってどういうことですか……?」
いまいち意図がわからない。
「弟子は弟子ですよ? だからあんなことやこんなことまで言っていいんですよ?」
「からかわないでください!」
いたいけな高校生になんてこと言うんだこの人は……
なんと佐藤さんは売れっ子作家でした!
紗月君はどうなってしまうのでしょう……




