「こんな急に行っていいのかよ!」No.3
「おいおい、まじかよ……」
懐石料理のいい匂いがする。 が、そんなことよりなんなんだ!? なんで二人の部屋で一つの掛け布団なんだ!?
「私は別にいいけど…… つっくんはいや?」
なんでそんなに可愛い聞き方してくるんだよ……
と、とりあえずロビーに電話してみるか。
「あの、最上階のものなんですけど…… 二人で泊まっているんですが掛け布団が1枚しかなくて……」
『大変申し訳ありません! ですがそのお部屋は一人向けのお部屋でして……』
「他の部屋から持ってくることとかって出来ますか?」
出来なきゃ二人で寝ることになるぞ…… 頼む……
『本当に申し訳ありませんっ! ただいま全室満室でして……』
終わった…… しょうがない、疲れてはいるが今日は徹夜だな。
「どうだったー?」
会話を聞いていた未来が訪ねてくる。
「他の部屋も満室でどうしようもないってさ」
まあ、有名な旅館だからな。
満室でも不思議ではないな。
「とりあえずご飯食べない?」
布団の衝撃が凄すぎて忘れていた。
「ああ、さっさと食べようか 待たせてごめんな」
「大丈夫だよー、電話してる間に釜飯が炊けたみたいだし!」
お、それは俺いい仕事したな。
「それじゃあ! いっただっきまーす!」
「いただきます」
未来はお預けを食らっていたからか物凄い勢いで食べていく。
「つっくっんのもーらいっ」
おい、人の取るなや。
「それで、布団の件どうする?」
「ん? もちろん一緒に寝るー!」
当たり前のように答えやがったぞこいつ。
「自分の言ってることわかってるのか?」
躊躇無く言うくらいだからな…… 多分言っても無駄だな……
「そりゃわかってるよー! つっくんだからいーの!」
俺ならいいらしい、つっくんテレちゃうぞ。 まあたまに布団に潜り込んでくるような奴だしな。
「わかった、折れてやるよ…… ただ50㎝は離れることな」
そうしないと色々問題あるだろ?
「うう、わかった……」
こいつ、ひっつく気満々だったな。
「ふあ〜、今日は疲れたから俺はもう寝るぞ」
もうそろそろ気力が限界だ……
「私も眠くなってきたから寝るー」
二人で布団に入るとやはり狭く感じるな、それに横からいい感じの温もりが……
だめだ、寝れる気がしないぞ……
「ねえつっくん、私はつっくんのことが好き」
「急にどうし」
「ちゃんと聞いてね、私は一人の男の人としてつっくんが好きなの。 つっくんは私のことまだ家族みたいだと思ってる?」
ちゃんと聞かれると困るな……
「気持ちは嬉しいんだが俺は家族として接しているつもりだ、だけどたまに家族以上としての感情が出てくるのも事実なんだ」
俺はちゃんと本当のことを言った。
「すぅ…… すぅ……」
こいつ大事なところで寝やがったよ。
しょうがない、俺も寝るか……
「つっくんー、朝だよー」
なんかものすごくうるさい目覚ましだな……
なんだ未来か……
「思ったよりも寝ちまったみたいだな」
「そうだよ! もう十時だよ? さっさと起きて観光行こうよー」
そうだな、未来へのお礼も兼ねた旅行なんだし起きてやるか。
旅館をチェックアウトして今は海沿いの繁華街をぶらぶらしている。
「潮風が気持ちいいねー」
確かに涼しく潮の匂いがする。
「次はどこいくんだ?」
ここに来るまでにも茶屋やお土産屋などを複数回っている。
「次はねー、あそこっ!」
未来が指差す先にはかんざし屋があった。
かんざしなんて興味あるのか、一応女子だもんな。
「なんか失礼なこと考えてるでしょ」
なぜバレた。
「その店が気になるんだろ? は、入ろうぜ」
「むう、覚えておけよー」
覚えません、絶対に。
「あ、これすごい可愛い!」
未来が手に取ったのは桜の形のガラス細工がついたヘアピンだった。
確かにこれは可愛いし未来にも似合いそうだな、ここは一つ買ってやるか。
「おばちゃん、これ一個ちょうだい」
「わ、悪いよ!」
「この旅行は未来への恩返しなんだからこのくらいさせてくれよ」
「う、うん! 宝物にするね!」
「そろそろ帰らないと明日の学校に影響するぞー」
もう日が暮れ始めている、電車で片道3時間だからな。
「わかったー、今日はすっごい楽しかったよ!」
今日もだろ、あんなにすぐに寝るくらいなんだから。
早速ヘアピンもつけてくれてるし、俺にとってもいい旅になったな。
「また二人で旅行行こうね!」
「ああ、行こうな」
「約束だよっ!」
ついに旅行編が終わりましたね!
いろいろ進展があったように思える2人ですがしばらく日常編が続く予定です!
旅行を機に仲が近まった紗月と未来をよろしくお願いします!




