「こんな急に行っていいのかよ!」No.2
「今日私たちが泊まるのはここ!」
俺の目の前にはここら辺では一番有名な旅館があった。
「ほんとにここに泊まるのか? だいたいどこからそのお金が湧いてくるんだ?」
「ほんとだよー! 毎日の食費やらを実は貯めてたんだー」
嘘だろ、まだ一週間だぞ!? どんだけ節約してんだよ! てか節約してあんな毎日豪華なのかよ!
「部屋一緒だけどいいよね?」
「ああいいぞ」
ん? 今なんて言った!?
「一緒なのか!?」
「だってさすがに二部屋とるお金はないよ?」
確かにな…… まあ我慢するか……
「じゃあチェックインしてくるー!」
そういうと受付にダッシュしていった、はしゃいでる子供かよ。
なんか受付のお兄さんが未来にペコペコしてるぞ? 何かあったのか?
「未来どうした? なにお兄さんを困らせてんだ?」
「あ、つっくん! 実は部屋は予約してたんだけど、ミスで人を入れちゃったみたいで代わりの部屋になるんだけどいい?」
「俺は全然いいぞー」
そんなことで怒る俺でもないしな、何度も言うが俺は紳士なんだから。
「代わりの部屋を用意しますので少々お待ちください!」
「だいぶ焦ってるみたいだね?」
「そりゃ、老舗の旅館だしな。 ミスの一個も評判に響いたりするんだろ」
「大変だねえー」
未来に限っては騒ぎ立てるとは思えないしそんなに焦んなくてもいいと思うんだが、色々と大変そうだな。
「お待たせしましたっ! こちらの鍵をお持ちくださいっ!」
「ありがとうございまーす」
お兄さんも未来の様子を見て安心したみたいだ、なんか俺までホッとする。
「何階だ?」
「えーと、最上階みたい!」
まじか、予約した部屋より何倍もいいじゃないか。
「うわー、殿様になった気分だねー!」
「これはすごいな……」
いい匂いがする畳に町が一望できるベランダまでついている。
「やっぱり来てよかったでしょ?」
「ああ、最高だ」
これは本音だ、こんなにいい旅館に泊まったのなんて初めてだしな。
「二人っきりでこんな景色を見られるなんてロマンチックだね!」
「そうだな、確かにきれいだ……」
この景色は一生忘れないだろう、きらびやかに光る繁華街とその後ろにある海。
今までこんなにきれいな景色は見たことがない、つい見とれてしまう。
「きれいって私が?」
雰囲気台無しだよ……
「ここはお風呂も天然温泉らしいよ!」
「ほんとにすごいな」
「でしょ! ずっと前から機会があればって調べてたから!」
「だったらご飯の前に行ってみるか。」
俺としては天然温泉は入ってみたいしな。
「そうしよっか!」
「覗いちゃだめだよ?」
「覗くかバカ」
「ああ、ひどい!」
お互い違う扉に入り俺は服を脱ぎ湯船に浸かる。
ご飯前だからか男湯には俺以外誰もいなかった、こんな広い温泉を独占できるなんて最高だな!
「つっくんー、いるー?」
なぜ呼び掛けてくる。
「ああいるぞー」
「女湯は私以外誰もいないけど、そっちも?」
「ああ、そうだが」
「すっごい気持ちいいねー」
「気持ちいいと思ってほしいなら放っほうっておいてくれー」
「えー、いいじゃんかー」
もう無視しよう、せっかく温泉に浸かっているんだしゆっくりしよう。
なんか、「ひどいよー」とか「後で覚えてろよー」とか聞こえてくるけど気にしない気にしない。
「さすがにのぼせそうだな、そろそろ出るか」
俺はだいたい三十分くらい温泉を堪能して湯船を出た。
ロビーに向かうとフルーツ牛乳を一気飲みしている未来がいた。
「普通はコーヒー牛乳じゃないのか?」
「甘いねつっくん! 銭湯はコーヒー牛乳で温泉はフルーツ牛乳なのだよ!」
銭湯と温泉ってそんなに違いねえじゃねえか。
「さて、お風呂も上がったし部屋に戻ろっか!」
「そうだな、腹も減ったしな」
「おいおいまじかよ……」
俺は並べられた懐石料理より和室に敷かれている布団に目が行ってしまった。
なんで大きめの敷布団が一枚なんだよ……
旅行編中編いかがでしたか?
多分これからの後編もとい夜編が気になっていると思います!後編はいつもより多く書くつもりなので悶々とする紗月くんを想像しながらお待ちくださいね笑
個人的に同級生と旅行なんて行ってみたいですね、行く相手がいませんが……
ま、まあこれから夜を共にする二人をよろしくお願いします!




