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合コン

 合コン。

 合同コンパ。

 男なる生き物と女なる生き物が、それぞれを恋愛の対象として見れるか見れないか、それを判断するためだけに集まる集会。

 互いが合議に至れば、晴れて対の者となることが許されるが。

 はたして。

 私こと(みね)志津香の運命やいかにーー!?


 そして翌日。

 夜はバイトがないということで、愛ちゃんがもともと予定していた――そういえばそんなことを以前言っていた――合コンをセッティングしてもらうことになった。

 急な誘いにも関わらず、ノリが良いのか、相手の男性組は承諾してくれて、晴れて合コンの手はずとなった。

 さて。

 さてさて。


「こここ、この服で良いのでしょうか」


 ここはとあるおしゃれなレストラン。

 来てみたかったのよね。雑誌にも載ってたし。

 その座席で、隣に座るキサキさんが緊張に震えている。

 衣服は以前私と買った服で、まあかなりエロス。こんなのの隣に座った私はちんちくりんのぽぽいのぽいでしかないだろう。

 ま、今日は私じゃなくてキサキさんのための場なんだからいいんだけど。

 せいぜい引き立てますよ。


「ゴウコンとは、まず立って名乗りをあげる必要はあるのでしょうか? ルールは? 審判はどこに? 時間はどれくらい与えられているのですか?」

「キサキさん落ち着いて。試合じゃないの」


 現れた男性陣に正拳突きをみまわしそうな勢いだ。

 一方で愛ちゃんはというと、異常なまでのおめかしをしていた。

 ミニスカすぎてここに来るまでに何度かパンツが見えた。

 でもそれを指摘すると、場末のバーのおばさんのように「見せてんのよ」といった。

 痴女だ。

 お相手の男性からしたら、嬉しいことこの上ない人材だろう。

 で、その愛ちゃんはというと、男性陣が向かっているとのことで店の外まで迎えに行っていた。


「来たみたいよ」


 言ってる傍から、男性陣を連れた愛ちゃんが店内に戻ってくる。

 本当ならドキドキするべきところなのだろうけれど、しかし妙に落ち着ている。

 それはきっと、私に恋愛する気がないからだろう。

 早く終わってほしいとまで思っている。


「は~い。お待たせ~」


 男性陣を連れて席に戻ってきた愛ちゃんの声がワントーン高い。

 どうやら獲物を刈る態勢に入ったようだ。

 ここはライオンの狩場となった。

 そんなこともつゆ知らない男性陣が来て、私は席を立ちあがる。


「ども。初めまして~」


 チャラい!


「うっすー。若いね」


 骨格のしっかりした爽やかイケメン!


「……」


 なんか喋れ!

 と言った感じの3人組の男に、私は会釈する。


「お、押忍!」

「キサキさん、座ろっか」


 案の定てんぱり始めたキサキさんを座らせ、全員が席につく。


「じゃぁ~、お互い初めましてってことでぇ~、自己紹介しよっかぁ」


 言わずもがな愛ちゃんだ。

 本日この時間のみ、この甘ったるい言葉遣いで終始お届けすることになることを、謝罪しておく。


「私は、穂田愛って言いますぅ。ここは高校の同級生。私の前の席に座ってるスーちゃんとはマッチングアプリで知り合ったんだぁ」


 この後の自己紹介はきつい。


「えーっと、嶺志津香です。高校2年です。よろしくおねがいします」


 無難が一番。

 でもスーちゃんことチャラ男が「普通~。でもそこがウィ~」って言ったのが癇に障った。

 笑顔笑顔。


「ドウモ! ハジメマシテ! コンバンワ! 私のナマエは――」

「キサキさん一回おっきく息すおっか」


 ジャパネットたかたの通販番組のように声を張るキサキさんを制止する。

 目の前で少し笑いが起こった。


「はい……嶺キサキと申します。不束者(ふつつかもの)ですが、お手柔らかに」

「嫁入りする気?」


 小さくひとり突っ込んだ。

 ま、無事自己紹介を終えたので良しとしたい。

 前に進もう。


「なんか女子高生って初々しくていいねぇ! しかも読モレベルの美女ばっか! 俺はスーちゃんこと末田(すえでん)卓也。スーちゃんって呼んでくれな!」


 この人はない。

 次。


「あーっと。俺は野良(のら)(がみ)(げん)。卓也とは大学が同じで、誘われてきました」


 この人は、あり。

 いや、恋愛する気はないんだけど。

 でも女の子が理想とする男子な気がする。腕の血管が良い味出してる。

 キサキさんが練習台にするとしたらこのタイプか。今の兄に近いような。


「……布衣(ふい)。おんなじ大学」


 見た目通りにとっつきにくそうな3人目。


「こら、下の名前もちゃんと教えてやれよ~」

「……」

「おい、それは無しだって言ってたろ」

「一人だけ名前言わない方がずるいっしょ~。ねぇ?」


 やめて。男3人のもめ事を私たちに振らないで。

 しかしこの布衣って人、何がそんなに嫌なのだろうか。


「布衣ランドって言うんだこいつ」

「ランド? って、英語の?」

「そ。陸って書いてランドって読むの。それが恥ずかしいから言わないんだよな~いつも」


 チャラ男が勝手に言って、勝手に話を進める。

 この手のタイプは大嫌いだ。

 案の定、布衣さんは不機嫌そうに視線を逸らし続けている。


「いいじゃないですか。かっこいいですぅ!」

「そうそう。俺もいっつも言ってるんだけどねぇ」


 楽し気に愛ちゃんとチャラ男が話をかきまわす。

 まぁ幹事として場を盛り上げようとしてくれているんだろうけれど。

 この布衣さんって人には同情する。

 でもこの人にも問題はありそうだ。喋る時に目を合わさないし、不機嫌を隠そうともしない。自分以外は敵みたいな顔して……。


「あ」


 あることに気が付き、素っ頓狂な声を挙げてしまい、すぐに口を押える。

 

「キサキさん」

「はいっ!」


 カチコチに固まるキサキさんを引き寄せる。

 ていうかこの人、兄とセフレなくせして何を緊張するのだろうか。いろいろと順序がおかしい気がする。

 私は彼女にだけ聞こえるように、耳元で言った。


「キサキさん、今日キサキさんが落とすのは布衣さんにしましょう」

「どうしてですか?」

「見てくださいあのTシャツ」

「……おおっ、気づきませんでした」


 そう。布衣さんが来ているTシャツは、私たちがやっていたゲームのもの。

 あえてあんなTシャツを着るくらいなのだから、ゲーマーなのだろう。そこらへんに売っているものでもない。

 そして何より、あのぶっきらぼうでカッコつけた感じ。

 昔の兄にそっくりだ。

 中学時代の兄と同じというのがいかんせん痛々しいけれど、でもこじらせている感じが同じ。

 兄を恋人として攻略するのであれば、おそらく兄の中二病的な部分を刺激して牙城を崩すのが正攻法な気がする。勘だけど。


「あの男は兄だと思って。頑張って」

「……はいっ」


 キサキさんは目に力を入れて返事してくれた。



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