8話
窓からの光で目が覚める。
真っ暗な画面のスマートフォン。
……どうやら、寝落ちしてしまったらしい。
時間は六時三十分、学校にはまだまだ余裕で間に合う。
起き上がり、机の上を見る。
そこには、横になってるメタ吐露ン。
……一応、持って行くか。
そう思い、寝ているメタ吐露ンを起こす。
「おーい」
「……」
無視しやがった。本気で捨ててやろうか。
そこで気づく。メタ吐露ンを持ち上げると、その下に鉛筆で文字が書かれていた。
「bにa、t……?」
bat……コウモリ? カシャッと一枚写真を撮る。
何があったんだ、こいつ……。というか、手とかないのにどうやって書いたんだ。
とりあえず、学校で奏太達に相談してみるか。
・・・・・・・・・・
時は飛んで放課後。
「あの機械が動かなくなった?」
「うん。ほら」
机の上に置く。奏太はそれを振ったり、卵に亀裂を入れるみたいに机で叩く。
しかし、メタ吐露ンからは何の反応もない。
「確かに動かないな。こうされたら多分、『ヤメロ! ヤメロ! ゼッテエ許サネェ!』とか言うのにな」
奏太が声真似をする。何故か上手い。
「そういえば、こいつを朝みたとき机にこんなのが書いてあったんだ」
「へぇ……何これ?」
「わかんない」
朝に撮った写真を見せる。
「コウモリ? なにこいつコウモリになんかされたの?」
「でもコウモリなんてめったに見ないよ」
「うーん」
「うーん」
まったくわからない。
もうこのついでにうるさかったので捨ててしまおうか。
「彩、お前なんかわかるか?」
「私も全然わからないわ。もう捨てちゃえば?」
意見同じなのか。
彩もメタ吐露ンをガンガン叩く。
すると、メタ吐露ンの背中の部分がポロッと落ちる。
「あ」
「あ、じゃねーよ壊れたぞ」
「どこが壊れたの?」
「いや、背中あたりから……ん?]
何が落ちたのか……見てみると――。
・・・・・・・・・・
「イヤー、色々迷惑カケタミタイデスマンスマン」
雑にメタ吐露ンが謝ってくる。
あの後、背中から落ちた所に電池が入っていた。
そこから、あのメッセージはbatteryと書こうとしたのでは、という考えに至り、電池を買ってきてつけたらすぐに目覚めた。
電池と書こうとしたらしいが、変換機能が使えないぐらい電池がなかったらしい。
昨日、機械なのに眠いとか言い出したのは電池が切れそうだったから。
「おまえ……単四電池で動くんだな」
「セヤデ。電池買ッテキテクレテアリガトナー」
「どういたしまして。じゃ、帰るか」
俺が言ったことに肯定と感謝を返される。
奏太が帰る意思を示したので帰ろうと思う。
「そういやお前って、どうやってあの文字を書いたんだ?」
「ン? コレヤデ」
そう言い、メタ吐露ンの目の部分から、シュッと鉛筆が出る。
……無駄に多機能だな、こいつ。
・・・・・・・・・・
帰り道を歩いていると、メタ吐露ンが急にしゃべり出す。
「オ、アレ見テミ」
「あれ?……どれ?」
「アレヤアレ」
「要領を得ない会話だ……」
奏太が嘆息する。あれあれ言うメタ吐露ンの方向を見ると、工場みたいなのがあった。
「あれがどうしたの?」
「ワイガ造ラレタ所ヤ」
「じゃ、じゃああのおじさんがいるの……?」
「ウン」
思わぬ所であのおじさんの住処を見つけた。
「……ちょっと、見に行ってみない?」
「まぁちらっと見てみるか」
「いいんじゃないかしら」
奏太と彩に、同意をとり工場らしき所へ向かう。