大きな街に連れていかれました
「お出ましのようだな」
半面金属さんがつぶやいてから少しして、俺にもやっと何かが向かってくるのが分かった。
数分して広場に現れたのは腰をひもで縛ったローブ姿の人物が10人ほどだ。
見た目は俺と同じ人間で、人種的には欧米人っぽい。
彼らは俺たちの前まで来ると一斉に跪いた。
「ようこそおいでくださいました御使いの方々よ」
一行の先頭にいる白髪白髭の老人がうやうやしくそう言った。
その風貌から品性と知性の高さを感じる。まさに代表って感じだ。
それにしても御使いとか言ってたけど何だそりゃ。
期待に満ちた目で俺たちを見渡す老人だが、俺を見た瞬間固まった。
改めて他の4人を見回してから俺に視線を戻し、上から下までゆっくり見るとため息をついた。
あ、明らかに失望したな!
そして無表情になり、何事もなかったかのように視線を4人に向けると二度と俺を見ることはなかった。
ちくしょ~、見なかったことにするつもりだな。そりゃあ一般市民だけどさ、いじけちゃうぞ。
「お前たちが俺たちをここに呼んだのか」
またもや口を開いたのは半面金属さんだ。無口な人かなと思ったが、結構社交的なのかな?
他の人も積極的にはしゃべらず半面金属さんに任せるようだ。
「呼んだと言えばそうであってそうでないというか…」
なんかはっきりしないなあ。
「言えないことなのか」
「い、いえ、事情を説明するにも長くなる故、ここでは何ですから我らについてきてほしいのですが」
う~ん説明はしてほしいが、安易について行っていいものか。彼らを信用する材料がない。
それはみんなも感じていたようだ。
「そうは言われてもなあ、お主たちを信用してついて行って囚われないとも限らんしのう」
お侍さんはのんびりとそう言うが、素人の俺から見ても油断してはいない。
「のこのこついて行ってバッサリっていうのも間抜けだものね」
「私としては信用してやりたいが、なんせここは異世界のようだからな」
4人とも警戒感丸出しだあって当然か、全てが未知の場所らしいしね。
「とは言っても…」
俺が口を開くと全員の目が向けられた。
(う…)
コミュ力の高くない俺としてはこういう視線は苦手なのだが、話始めた以上仕方ない。
「疑ってばかりいたんじゃ状況は変わりませんし、思い切って話に乗ってみませんか」
何の保証も説得力もない言葉であるが正論だとは思う。もっとも平和ボケした日本人ならではともいえるが。
俺を無き者にしてたはずの老人が目を丸くして俺を見てきた。
4人の警戒心が強く困っていたところ、思わぬところからの援護射撃に驚いたようだ。
初対面でどんだけ評価が低いんだよ。
まあ変な期待されるよりはましだけどさ。
「ふむ。虎穴に入らずんば虎子を得ずというでござるからな」
「確かにここにいたところで状況が変わるわけでもないか」
仮面ラ〇ダーさんがうなずく。
「そうだな」
半面金属さんも異論はなさそうだ。
「罠にはめるようなら全て打ち砕くだけだ」
うわ~物騒だなあ。確かに半面金属さんは強そうだけど、俺はそうはいかない。
「俺は争いごとは苦手なんで、できれば穏便にいきたいんですけど…」
弱腰の俺にシレーヌさんが微笑んできた。
「ふふ。何かあったら私が守ってあげるわよ坊や」
蔑むのでなく、優しい笑顔が俺を安心させてくれる。
仮面ラ〇ダーさんも大丈夫だと言うように頷いてくれたので胸をなでおろした。
「そ、それでは案内いたしますのでついてきて下さい」
老人一行が立ち上がり俺たちに一礼してから来た道を戻り始める。
俺たちもゆっくりとその後に続いた。
広場を出て丘を下りると草原が広がり、少し先に城壁が見える。
町があるのだろう。突き出た尖塔が見えるから城下町かなと想像しながら、老人たちの後を追って城壁に続く地肌の道を歩く。
周りに何もないので思ったより遠く感じたが、ほどなくして城壁にたどり着く。
近くで見ると城壁はかなり高く、正面に大きな木製の門が構えていた。
その巨大な門の横にトラックが通れるくらいの通用門があり、衛兵の詰め所も隣接している。
「なかなか立派でござるなあ」
俺たちが城壁を眺めてる間に、一行の中でも若いローブの男が衛兵に声をかけて通用門を開けてもらっていた。
老人に促されて俺たちは城壁の中へと入っていく。
門をくぐるとそこはメインストリートでまっすぐ伸びており、先を見ると尖塔がある方へ繋がっている。
日本の城なんかにもあるんだけど、城下町は万が一を考えて、敵兵対策でわざと入り組んだ構造にするんだけど、この街は効率や機能を優先してるのか見える範囲だが整然としている。
道の両脇に並ぶ建物は高くても2階建てでみな白壁だ。
大通りだから商店や飲食店が並んでるんだろうなあと思ったのだが一般家屋がほとんどで、お店らしき建物は見受けられないし人通りも少ない。
何でだろう。
とか考えてるうちに目的地に着いた。
4、5メートルくらいの高さの白い外壁に設置された、厳かな意匠が施された門の前で立ち止まった。
見上げると外壁から頭を出した建物群が見える。
城というより神殿といった感じだと思い、そばにいるローブの男性に話を聞くとそうだった。
さらに説明を求めると、あとで全員にしますというので大人しくついていくことにした。
一行の足取りは早く、確かにこんなとこで話を聞いていたら置いて行かれちゃうもんな。
白亜のキレイな建物を横目に見ながら進み、奥の方にある一際大きな建物に導かれる。
等間隔に並んだぶっとい石柱の間を抜けて、大きな門から中に入っていく。
そこはとてつもなく広い講堂で、中央の通路を挟んでベンチが対称に並んでいる。
奥には祭壇のようなものがあるが遠くてよく分からん。
俺たちはその祭壇の方には行かず、脇の扉をくぐって通路に出、神殿の奥へ案内される。
途中見事な庭園を眺めながら着いたところは、楕円形の円卓が占める会議室のような部屋だった。
「どうぞお好きなところにお座りください」
特に座席は決められていないようなので、一応上座を外して座ろうかなと思ったらどこか上座か分からないことに気づいた。
中途半端な知識しかない自分が情けないと内心頭を抱えていたら、他の4人はさっさと目の前の席に並んで座ってしまった。
(異世界なんだから難しく考える必要もないか)
いつまで立っていても仕方ないんで、俺も仮面ラ〇ダーさんの隣の席に腰を下ろした。