道化師とは何を指す?
いやはや皆様たくさんのブックマークありがとうございます♪
まさか初回で前の作品よりもたくさんのブックマークが貰えるとは予想外でした。
本当にありがとうございます♪
廊下を歩いていると私が1歩歩くたびに「コツン、コツン」と音がなり、反響する。私はこう見えても帝国では結構人気の道化師であるため、私を見た兵士たちはチラチラとこちらを見てくる。
そしてしばらく歩いていると将軍様のいる部屋の前に着いていた。将軍様はどうやら私のことがお気に召さないらしく毎回遠回しに挑発しているらしい。
まぁ興味はないため特に気にしていないのだけれども、それが原因なのかなかなか笑ってくれないのが唯一の悩みだ。そう思いながらノックを―――――しないで勢いよくドアを開ける。
「どうもどうもピエロさんでっすよぉ~♪」
そう言いながら入ると将軍様の後ろにいる参謀さんがあからさまに顔を顰める。参謀さんは怒りやすいけどやっぱり牛乳が足りないんじゃないかな?
「イャーソー。せめてノックをしてから入ってくれないか?芸しか知らない君が入るにはいろいろと心の準備が必要だからな?」
「将軍様すみません。将軍様もいろいろとデリケートなお年頃ですもんね。次からは気を付けさせて頂きます♪」
「ッチ。まぁいい。どうして街中であんな募集をしてるか分かってるよな?」
まぁ確かにエリートしか使わない帝国様が意味もなく一般人の兵士を(絶対受からないのに)募集するわけがない。まぁ多方私が見つからないから呼び寄せるためだろうね。
「え~?私にはさっぱりですねぇ~。」
「分かってる癖に嘘をつくな。それで今回の依頼は簡単だ。一言で言えば―――――――――――――――――
奴らの砦をぶち壊してほしい」
将軍様サイド
やつがここを出てから数十分経つがやはり私としては今回のこの依頼には納得していない。今回の戦争には一番下とは言え魔王の1人を討ち滅ぼした勇者があちら側についている。
勇者。一言で言えば人類の希望だ。しかしながらその認識は間違いだ。勇者とて初戦は人間、その上今宵の勇者は異様に女癖が悪く何よりも、勇者としての自覚もないクソ勇者だ。
しかしながらそんなやつでも七魔将と呼ばれる魔王の一人、『軍神グライオス』を倒している。グライオスは他の魔王よりも力も数も劣っていたがその巧みな指揮で人間側の軍隊を一方的に蹂躙し続けた。
はっきり言って奴は私なんかよりも指揮官として何十倍も優秀だっただろう。あぁ、そして私はその事を理解した時悔しさと同時に理不尽な嫌悪感を覚えた。
私はこのちっぽけなプライドのせいで自分よりも優れた人の知恵に頼ることも、困った時に近くの人に相談することが出来ない。だからはっきり言おう。私は私よりも何もかもが優れた―――
イャーソー・ローコ・エパリャーソ…いや、あの人間の皮を被ったイカれたピエロが大っ嫌いだ――――
ピエロサイド
「さてさてゲームと行こうか。私の愛しい愛しい勇者様」
そう言ったピエロの目は見開かれており、黒いはずの瞳が一瞬赤く見えてしまうほどに狂気に染まった瞳。そしてここから彼の、『綾鷹 妖斗』の物語の歯車が回り出す。だからその前に振り返ろうか彼が彼となったその瞬間を…
2年半前
私は誰かに知りたくなかった事実を突きつけられた気がする。いくら思い出そうとしても思い出せないし深く考えようとしても雨の音がうるさい。
私は一人どこかわからないとこに突っ立っている。家族になんて言ってここまで来たのか覚えてないしそもそもとしてここがどこなのかも分からない。
雨雲のせいで辺りは暗く朝なのか、昼なのかはたまた夜なのかさえ分からない。何も理解したくもないし何も思い出したくないと私の心が訴えかける。
そうして私は立ち止まり空を見上げる。何度も雨が目に入り痛いが目を閉じるどころか瞬きすることさえしようと思えなかった。再び前を向き歩きだそうとすると目の前に全くもって見たことのない人が私の前に立ちはだかっていた。
別に悪い意味ではなくただ私の前に陣取っていたと言うだけだけど。何か持っていて雨を凌いでおりここにいると邪魔かと思い横にずれて再び歩きだそうとするがさっき前にいた人がまるで遮るようにまた私の前に陣取る。
何度も、何度も何度も何度も何度も繰り返しても私の前に陣取ってくる。さすがの私も少しイラつく――――っということもなく目の前にたっている人の目を見る。
綺麗な蒼眼だった。しかしそれだけだ。顔は笑っているが目には感情が特に伺えず本当の意味で人形のように美しい人だった。銀色の髪も整った顔も、スラットしたスタイルも全てが人形、作られただけのまさに、観賞用の人形にしか見えなかった。
しかしそんな人物が私の行く手を阻むように先程から私の前から退かない。まるで私からなにかしてくる待つように、まるで私から意識するのを強制するようにそこに佇む。
無視してもよかった。もしかしたら反対方向に向いて歩きだしたらそのまま行けたかもしれない。しかし何故か私はさもそれが当然かのように彼女に問いかけた。
「なにか、用ですか?人形さん?」
「ええ、そうですよ。未来の私のピエロさん。」
この時から始まってしまった。本来何も起こらず当たり前のように起こる当たり前の勇者の黄金伝説から狂ってイかれた殺人ゲームへと変わってしまったのは。
何の罪もない現代人が薄汚れた殺人者になってしまったのも全てはこれが始まりだ。この世に偶然なんて存在しない。幾つもの選択肢のどれかが選ばれた結果が残る。それがこの薄汚れた英雄には言うに及ばない古い御伽噺だ。
「今から貴方は私のパートナーです。」
「…せ………い………ん……い……先輩!」
いきなり私の後輩くんが大きな声で私のことを呼んでくる。でも先輩って……なんか学生感あっていいね。
「なにが学生感ですか?普通学生は敵国なんかにたった2人で行きませんよ。」
「まぁ確かにねぇ~。じゃあ……サーカスショーでもしようか!」
「もうやだこの人が何をしたいのか私には分かりません(涙)」
「ピエロたるものいつでも笑っているべきだと思うよ、うん。」
私は今ラクシオン聖王国にいます。えっ?理由………なんとなく?っと言うのは冗談でちゃんと仕事はするよ?まぁ道化師としての仕事9割に軍の仕事1割かな(きりっ)
「私はピエロじゃありませんよ。あっ。後道化師の仕事9割やるとか言ったらぶち殺すのでよろしくお願いしますね?」
「…君、もしかして心読めるの?」
「何ふざけたこと言ってるんですか」
後輩くんが呆れたように盛大にため息をつく。そもそもとして道化師としての能力以外特に強い力がある訳でもないのにどうしてこんな命懸けのことをしなければならないのか。
ついでに言うと聖王国は一言で言えば宗教国家だ。崇拝してるのは確か………女神レクシアだったかな?というよりもよく思うけど女神は聞くけど男の神は聞かないのはやっぱりイケメンよりも美女の方が人気が出るからかな?
「ところで後輩くん」
「どうかしました?ピエロ先輩?」
「君は…………胸は大きいのと小さいのどっちがいいと思う?」
私はそう問いかけ後輩くんの顔を見るとあからさまに呆れたような顔をされた。理由が分からなく考えてみたら簡単だった。そう言えば私の部下って…女しかいなかった…
よくよく考えたらおかしくないか?私男、今いる後輩くん女、今別の街を偵察してる2人の部下も女、今私がいない間に来た書類を処理する部下も女…まぁ…考えないことにしよう…うん。
「またくだらない事考えてないでさっさと行きますよ。しばらくは情報収集ですが、いつどこで私達の正体がバレるのかわかったもんじゃないですからね。」
「ちょっと待ってくれよ~。ちゃんと仕事するからスルーだけはやめてくれよ~(涙)」
私はそういい後輩くんの後を追う。普通これ逆じゃないかな?そうは思いながらも足は止めずに口笛を拭きながら後輩くんの横を歩く。その後輩が心中で畏怖の念を抱いていることを知っていながら。
後輩サイド
私はこのピエロを名乗る先輩のことを心から尊敬しているし、恐れている。この人が敵になれば私たちは為す術もなく滅ぼされてしまうと断言出来る。だからこそ私はこの人が仲間である限り、絶対に勝てなくても敗北はないとどんな状況でだって言うことが出来る。
私は彼のことを知らない。彼は恋人が寝取られたと言った。もしかしたらその復讐で軍に入ったと思ったがそれは違った。なら、死ぬために軍に入ったと思った。しかしまたも違った。
教えてくれないと思っていたがなんとなくある潜入調査中に聞いてみたことがある。「なんで軍に入ったんですか?」って。そう言うと彼は言った。1年間一度も絶やさなかったいつもの笑で言った。
「笑ってほしいからだよ」
意味が理解できなかった。いや、聞けばもしかしたら理解出来たのかもしれない。だけど聞けなかった。私の中の警報が鳴り響く。それを聞いたら後戻りが出来ないと。それを聞いたら、それを理解したら私は本当の意味で彼を見てしまうと。
少しの沈黙の後、彼はキョトンとした顔でこちらに顔を向けた。最初の頃は可愛いとすら思っていたその行動は今では恐怖の対象でしかない。彼はある時一人の部下が裏切ったことがあった。
彼女はプライドが高くて誰かのしたについていることが不愉快だったらしい。一言で言えばただの馬鹿だ。もしもそれで殺せたとしてもどうせすぐに軍に消されていただろう。
まぁ結果からいえば彼女はただの肉片になった。そもそもとして彼女は何故先輩に勝てると微塵にでも思えたのだろう?確かに彼は彼女よりも遅かった。彼女よりも力がなかった。彼女よりも魔力は少なかった。
だけどたったそれだけだ。あの人の方が勘も、技術も、経験も、死の覚悟も違った。彼女は負けていたんだ。いや、誰もが負けている。私たちでは彼には勝てない。だって――――――
聖王国の騎士だった私がこうもあっさりと真っ黒なドブに足の先から頭のてっぺんまでたったの数日で使ってしまっているのだから。そう、イャーソー・ローコ・エパリャーソというのはどこまでも人の心を惑わせる。
そう、その姿はまさに人の心を騙し続ける道化師の名に相応しいと言えるだろう。
今回はちょっと色々と書いてあって理解のしにくいところがありますがそういうところは感想で書いていたければ補足、または次回に分かるように説明を織り交ぜますのでどうかご了承ください。
次回はもうちょっと話の内容を纏めてから書いていくので何卒これからも読んでいただけたらと思いますm(*_ _)m