ピエロを知りし者
長らくお待たせしました!
今日から復活です!
ピエロサイド
戦争初戦が終わった。はっきり言えば圧勝だったのだが…帝国は今、混乱の渦に呑まれていた。
その結果、私はーーの私室へと呼ばれ、ーーと向かい合うようにソファーに座っていた。
「真祖吸血鬼の復活ねぇ~。」
私はそう言葉を零す。ただの格下吸血鬼でさえSランク級なのに、真祖吸血鬼ともなればその戦闘力は軽く数十倍にまで膨れ上がるだろう。
「そうよ。Sランクパーティー、古の呪剣が盗賊1人を残して皆殺しにされたわ。」
その言葉を聞いて思わず私はクスリと嗤う。普通こんな緊急事態に笑う(嗤う)ことなど不謹慎にも程があると叱責れても文句は言えないだろう。
しかし相手――――――もとい皇帝は何も言わない。いや、言えないのだろう。相手は第5刺客とはいえ2つ名の所持者であり、あの勇者を圧倒するほどの実力者だ。
下手なことをして別の国に寝返られては笑い話にもならない。そう思い皇帝は黙っていると不意にピエロの嗤い声が止む。
「それでぇ〜?私に監視でも排除でもなく補助って言うのはどういうことですかねぇ〜?」
私は攻めるでも、疑問に思うこともなく確認するかのように尋ねる。普通皇帝に対してこんな物言いをすれば不敬罪に問われても文句は言えないだろうがそこはやっぱり第五資格だからと免除されている。
「貴方も分かっているだろうけどそれは、帝国の士気を上げるためなのと、他国への牽制のためよ。」
そういった皇帝を一度よく見てみる。その烈火の如く赤く煌めく赤髪に、全てを見透かすかのように透き通った鮮やかなエメラルドグリーン色の瞳、そしてシミひとつない美しい白い肌にその肌を際立てさせるように揺れる漆黒の装飾の一切ないドレス。
人によっては「もっと装飾があったほうが皇帝らしいのでは」?と馬鹿げたこという人もいるかもれないが、それは否である。確かに並大抵の令嬢ならそれでいいかもしれない。
しかしながらそれは並大抵の令嬢ならである。しかしながらこの皇帝は違う。この皇帝はすでに完成されているし、この皇帝以上の美女も例外を除いてまずいないだろう。
私は内心そんなくだらないことを考えながらもそれと並行してもしも私が補助をして勝てた場合のことを考えるが、やはり良い考えとは思えなかった。
「確かに牽制にはなるだろうけどそれにしてもリスクが大きすぎないかい?確かに私が補助という形で介入すればほぼ確実に討伐は成功するだろう。しかしながらそれではその子らは近いうちに死ぬよ?」
私のその発言を聞くと皇帝はくつくつと笑う。その顔を見れば分かる。皇帝はーーーーーーいや、この腹黒女は元々そんな奴らは捨て駒だと言っているのだ。どうせ理由は
「そんなに暗殺者が怖いですか?」
保身のためだ。私は自分が卑怯者のクソ野郎ということは重々しょうとしているがこの女狐は自分のためならどんな悪にだって手を染める。噂によると昔は闇ギルドにいて人を騙して殺しまくってたとか言われているような人だ。
「あら?私がそんな者怖がると思う?」
普通の者ならここで「滅相もございません!」とかご機嫌とりをするのだろう。だけどそもそもとして歴史に名を残す王とは何だ?勇気ある者か?慈悲深き者か?有能な者か?それは合っているがそれは二の次だ。偉業を成し遂げる王とはーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
臆病者なのさ。
この言葉を聞いて違うと思う人もいるかもしれない。じゃあ例え例を出そうか。王は何故相手の内情を探る?自分に有利になるように、相手の弱点を探るために、と色々とあるかもしれないが最終的には怖いから、恐れているから。そう、臆病だからこそ相手の手の内を探るのだ。
王は何故城を築く?威厳のため、力の誇示のため、そう言った理由を言う。じゃあ何で威厳を保とうとする?何で力を誇示しようとする?それは怖いからだ。臆病だからだ。だからこそ王は他人に自らの力を知らしめる。
そんな風にしか捉えられないなんて捻くれてる?自分に都合がいいように解釈しているだけだ?それの何が悪い?それの何が間違っている?それはただ単に自分の縋るものを壊されたくないだけだろう?
だからこそ私には断言できる。人なんてものは皆、嘘と見栄に塗れた。醜い種族なのだと。
「えぇ。私にはそう見えますね。」
「ふふっ。貴方、今の発言不敬罪で首切られても文句言えないような発言よ?」
「今更ですよ」
「それもそうね。」
皇帝は再びくつくつと笑う。いつも民の為やら帝国の為やら言っている美しく、それでいて冷静であり冷酷の『氷花』の異名が嘘のように笑い、それでいてまるで壊れ物を触るかのようにどこまでも優しく見つめる。
きっと彼女がこのように接するのはピエロを他においていないだろう。しかしながらそれはきっと自分を相手にしくれる人形のようで、どこまでも自分と対等に接してくれる者の珍しさからくるものなのだろう。
「ねぇ。」
「どうかしました〜?」
私がそう言うと皇帝は、私との間にある机に両膝をつけ、左手も机につきバランスを保ちながら目を細め、私の左頬にあたる辺りの仮面の表面を右手でゆっくり撫でる。
「やっぱり貴方、私の物ににならない?」
その微笑みはどこまでも美しく妖艶で、きっとその微笑みを見たものは皆、男女問わず一瞬で恋に落ちてしまうのだろう。それくらいその微笑みは美しかった。
だけど私は綺麗なものが嫌いだった。いや、とうにそんな感情は失われてしまっているのだからこの表現は正しくないだろう。きっと美しいものに嫉妬していたのだろう。
だってーーーーーーーーーーーーーーーー私のショウではそんな純粋で美しくて、どこまでも綺麗な笑顔なんて決して生み出しことができないのだから。
私はそんなどこまでも自分勝手な嫉妬をしながら跳ね除けるのではなくゆっくり、それでいて優しく包み込みように握り、そして机の上へと下ろさせる。
「お断りしますよ。」
私はそう言って席を立ち上がり皇帝に背中を見せるように扉の方へと歩き出す。靴の影響か、それとも沈黙のせいなのか分からないが、歩くたびに足音が反響する。
そして扉の前まで来ると皇帝の方へと顔さえ向けずどこか懐かしむように、そして噛みしめるかのように、今にも消えてしまいそうなほど小さい声で声を発した。
「じゃあね。彩香。」
そしてその後は皇帝の小さな囁きと靴の反響する足音だけが鳴り響いた。
皇帝サイド
「じゃあね。兄さん。出来たらそんな、悲しいことを決意して欲しくなかったよ」
そう言って彩香と言われた少女は、先ほど座っていた席に再び腰を下ろし、扉を見つめている目に涙を溜めながらもそう、微笑みながら呟くのだった。
机の上にある紙には一切目を向けずにしばらくはずっとそうしていたのだった。
ピエロさん色々ありすぎて書いてて頭がこんがらがいそうですよ(^_^;)
皇帝さんという存在が今後ピエロの動きに影響与える、かも?
まぁこれからも読んでいただければ幸いです♩