ピエロは狂い続ける
皆様遅れてすみません!
次回からは気をつけますので許してください(><)
カナリア:サイド
私はきっとどこかで彼に甘えていたんだ。いつも笑顔で隣を歩いてくれたから。いつも見放さいで隣で見ていてくれたから。
だからきっと私はそれが『当たり前』だと思い込んでいた。いや、勘違いをしていたんだ。私が一体どれだけ恵まれていたか今なら痛いほど分かる。
彼はもうきっと昔のように優しくてどこか力強くてそれでいて私の胸を暖かくしてくれるような笑顔を見せてはくれないだろう。
そして彼は私のことを『剣聖』と呼んだ。きっとそれは私と彼との決別を意味するのだろう。それに彼は決して弱くなんてなかった。
ただ私が一人で生きて行けるように見守ってくれていたんだ。その上彼はそもそもとして私を『女』として見てはいなかったのだろう。
昔から違和感があったんだ。まるでエリクが同年代じゃなくて年上の、例えばお父さんのように感じることが何度もあった。私はそれを勘違いだと思ってた。
でも違った。それは勘違いなんかじゃなかった。彼の中ではきっと私は妹のような、もしかしたら娘のような存在だったんだと思う。
彼の愛情は『恋慕』ではなく『親愛』のようなものだったんだ。だから彼は私を追わなかったんだ。だって彼の中では嫁に向かう家族とのような心境なんだから。
それを理解した私は何とも自分が馬鹿らしく思えた。そもそもとして彼は自分に恋をしているどころか女として認識すらされていないと理解して乾いた笑いが漏れる。
「あ~あ。馬鹿らし馬鹿らし。惚れてたのは彼奴じゃなくて私じゃない。もう昔みたいに戻れないかもしれない。なら、昔よりももっといい関係になればいいだけじゃない。」
私はそう呟く。誰に言うでもなくまるで自分に言い聞かせるかのように。まるで決意したように。
するとピエロ、いや、エリクも私の変化に気が付いたように仮面越しにこちらを伺う。その見方は何とも興味なさげで昔の彼ならきっと想像もできなかっただろう。
でも私は決意したんだ。もう、振り返らない。ただ前も見据えて彼を一心に追いかけて追いついてそして私の決意を彼奴の目を見て宣言してやるんだ。
「いつまでも子供じゃないんだクソ野郎ってさ。」
きっと私はこの時他人の気持ちを考えることが欠落してたんだと思う。もし、私がもっとエリクの気持ちを考えていたらきっと…あんな結末にはならなかったはずだから。
リリナ:サイド
私はあの剣聖とかいうビッチが大っ嫌いだ。あの人は…ご主人様は1度として私たちに笑顔を見せてはくれない。いつも仮面の中に仮面を被って今にも泣きだしそうなほど悲しそうな顔をしている。
私は理由を聞いたけど教えてはくれなかった。でも昔1度、たったの1度だけ私たちに自分の惨めな失恋話を聞いたことがあった。その時あの人は初めて私たちの前で涙を流した。
あの頃の私には理解ができなかったけど今なら理解が出来る。あの人はいつも泣いているんだ。きっとその時の傷は治るどころか今もくっきりと残っていてあの人の心をズタズタに引き裂き続けている。
それが私たちの考えだ。だから私たちはまたあの人が笑顔を浮かべられるように、幸せだって言えるようになるまでこの剣を振るい続ける。
それがもし、自らの崩壊へと向かうとしても関係ない。私たちはあの人にこの命を助けられた。なら、命を持ってあの人を救うことは当たり前なんだ。
なにがピエロだ。何が人類の限界だ。何が帝国最終兵器だ。何が狂人だ。そんなことは関係ない。私にとってあの人はでも唯一無二の家族なんだ。
だからここに私の愛を捧げよう。身体を捧げよう。剣を捧げよう。心を捧げよう。私の命を、この私の全てをあの人に捧げよう。私、『幻惑』のリリナはかつてルルナと共に宣言した誓を再度噛み締めるように脳に刻んだ。
ピエロ:サイド
私は流し目程度に剣聖を見ながら別のことを考える。今回勇者たち一行を殺すことは認められていないが逆に言うとそれ以外は許可されている。
私はそう考えそこら辺に転がっていたギリギリ生きている冒険者の頭を持たあげる。その冒険者の顔は痛みのあまり歪み、見ているだけで痛々しい。
「あぁ、可哀想に。痛いよね?苦しいよね?死にたいよね?大丈夫。その命は無駄にしないから、さ?」
私はそう言いながら仮面の下で満面の笑みを浮かべる。きっと他の人が見れば狂人者の狂った笑なのだろう。でもでも~仕方ないよね~?人間誰しも興奮すると笑っちゃうよね?
「さ~て。ポチ。おやつの時間だよ。」
私はそういい冒険者の身体をまるで飼い犬にフリスビーを投げるかのように軽く投げる。そしてそれと同時に冒険者の身体が消えてグシャグシャと何かを咀嚼する音と断末魔だけが響く。
「あ~も~。ポチったら~。お腹すいてるのは分かってるけどもう少し綺麗に食べなよ。」
私はそう言いながらポチが噛み付いた際に飛んできた血を拭き取りながら笑顔で虚空に話しかける。その姿が異質だったのか勇者たち一行の顔は引きつっていた。
「さてさて賢者様~?私が憎いんでしょ?殺したいんでしょ~?なら、ポチ程度は倒してみせなよ」
私はそう言いながら賢者の方に顔を向ける。そしてそれと同時に私の後ろで爆音がなり砂埃が大量に舞う。もちろん私は仮面を付けているからその影響を一切受けない。だから私は砂埃が舞う真ん中で笑い混じりにそう告げる。
「この魔力まさか―――――――――地龍!」
「さぁ皆様!まだまだ楽しんでいただきましょう!」
「GYAAAAAAAAAAAAAA!!!」
そして地龍の鳴き声が響き渡る。まるでそれが本当のはじまりの合図とでも言うように
書いてて思った。この剣聖何言ってんの?




