『戦争』の始まりの証
勇者サイド
俺は謎の爆発によって吹き飛ばされるが、加護のおかげでほぼ無傷と言っていい。そして俺はカナリアと賢者の無事を確認しようと周りを見渡すと上でカナリアと賢者は浮遊していた。
ちなみに賢者はスカートでカナリアは短パンなのだが、ちょうど俺の真上なので賢者はもろでカナリアは短パンの隙間から微妙にパンツが見えている。
「うむ。眼福眼福。」
「この腐れ外道さん。これ以上私の下着も見るなら先に貴方を消し炭にしますよ?」
「すみませんでした。」
俺たちがそんな会話をしていると一瞬何か違和感を感じ横に避けると俺の横を通り抜けるように風が吹き抜ける。
「リリナ、リリナ腕落ちた?やっぱり肥満気味なの?プークスクス」
「ルルナ、ルルナ喧嘩売ってんならご主人様の見てないところで買うよ?」
ふと消えの聞こえた方に振り向こうとすると誰かに思いっきり押され尻餅をついてしまう。文句を言おうと前を見るとそこにはあの銀髪の少女の剣を受け止めているカナリアの姿があった。
ピエロサイド
勇者君の右腕を切ろうとしたのに剣聖ちゃんに弾かれ力で劣っている私は容易く押し返されるが、バックステップをしながらナイフで牽制をする。
しかしながらさすがは剣聖。ナイフを軽く弾き一気に私との距離を詰めてくる。そして気が昂ぶっているのか、かなり大振りの一撃を放ってくる。
それと同時に私はバク転し靴に仕込んでいた隠しナイフでいなし、再び距離を取る。
やはり剣聖が一番厄介と言えよう。勇者は確かに肉体的なステータスは高いが単調で大振り、それに加えてスタミナ配分を考えないので無力化するのは簡単だった。
しかし、剣聖は違う。剣聖は勇者よりはステータスは低いがその代わり技術、冷静さ、力を使いこなす才能を有していた。
「いやはや、さすがは剣聖様は格が違うねぇ〜。凡人の私にはとてもとても敵いませんね~。」
私はそう言いながらケタケタと笑う。別に私が勝てないだけで足止めするだけなら彼女らでも問題は無いだろう。
「お前だけは殺す。私の村を、家族を、幼馴染を、幼馴染の両親を殺したお前だけは許さない!」
そう言うと剣聖は私に向かって駆け出してくる。その速さは尋常ではなく、その速さは本来人類には不可能なことだろう。
「リリナ、ルルナ、足止めしといて。」
私がそういうとルルナが私と剣聖の間に割って入り、軽く剣聖の斬撃を受け止める。リリナもルルナも見た目は確かにただの少女かもしれない。
いや、実際数年前まではただの少女だった。そしてこんな力を与えた私は非道なのかもしれない。こんな呪われた力を与えた私はさながら悪魔なのだろう。
でも私にはこうすることしか出来なかった。彼女たちが最も安全かつ、一緒に暮らしていくにはこの方法しかなかった。
世界なんて不確定要素の塊だ。もしかしたら私が力を与えなくても幸せに暮らせたかもしれない。だけど、今の彼女たちの笑顔でいられるなら、これはこれでよかったと私は思える。
「あぁ。こんな日々が終わればあの子たちはもっと笑って暮らしていけるのかな。」
あぁ。そうだ。そのために勇者はーーーーーーーーーーーー
殺さなきゃいけないんだ。
「さ〜てさてさて。私たちも始めましょうか。勇者様に賢者様!私と一緒に醜く踊りましょう?」
「2対1とは随分と余裕なのね?何?私たち程度一人で充分ということかしら?」
「いえいえいえいえ。賢者様のことは大変尊敬とともに同情いたしますよ?だって初恋のお相手がーーーーーーーー」
私が続きを言おうとすると賢者から今までに感じたことのないくらいの膨大な魔力を感じる。その圧倒的魔力を前にし、言葉が途切れる。
「だ…れ。」
「な〜んて言いました?」
「…まれ。」
「まぁ彼らも彼らであの世で仲良くしてるんじゃーー」
「黙れ!」
賢者が大声を出したので勇者は驚いたように賢者の方へ振り向き、私は賢者がここまで反応することがおかしくお腹を抱えて笑っていた。
「あははは。あ〜ごめんごめん。賢者ちゃんの反応が面白くてね。プププ。あぁ〜お腹痛い。そんな君に朗報だよ。実はね〜あそこに残ってた村人〜皆殺しにしたのは〜ーーーー
わ・た・し・です。ってね?」
そして私は幻惑を解き、ピエロの仮面を天へと投げ捨てる。
~~数時間前~~
中央魔王会議室
「クソ!戱生の奴は一体どこで何をしている!」
そういいながら拳を叩きつけているのは戦王グライティオス。戦闘狂で短気な彼は戱生のことをもともと嫌っており、事あるごとに喧嘩をふっかけていた。
「貴様は相変わらす短気だな。奴のことだ。どうせどこかの国か人かは分からぬが戯れているのだろう。」
そういいながら胸の下で腕を組み、その大きな胸を押し上げ大人の女性のような色気を醸し出しているのは紫桜サナリカース。彼女は戱生のことを気に入っており大抵戦王をたしなめてくれる。
「あぁ~れぇ~?彼って~、確か~死んだんじゃなかったっけ~?」
そんなまるで相手を逆撫でるように話すのは堕皇ミネラカティーラ。実際これは相手を挑発しているわけでもキャラ付けでもなく素なのである。
「彼のユニークスキルの中に輪廻転生ってのがあるから何度でも復活出来ると何度言えば覚えてくれるのかな?」
そして若干呆れ、ほぼ覚えてくれることを諦めて苦笑しているのが知王エラカステラ。他の魔王たちが個性的過ぎる中、唯一まともな苦労人である。
「でも実際最近顔出さなすぎじゃない?かれこれ最後に会ったの50年前じゃん。」
そう疑問を投げかけるのが愚王イザグラミス。彼は王としては愚かだが、別に彼自身が愚かとかそういうわけではないのにみんなから蔑まれる可哀想な人である。
「そもそもとして堕皇!貴様がどっちかを決めればこんなことにはならなかったのだ!」
今、彼らが行っている会議の内容は人間との不可侵条約を破棄すべきか否かである。今のところ戦王と愚王が破棄して戦争をするべきと言い、紫桜と知王がこのまま平穏に暮らしていくべきと言っている。そして堕皇などっちでもいいと言ったせいでこのようなことになっている。
戱生は50年前から配下を置いて行方意不明。軍神グライオスは前の暴走の時に勇者によって死亡と言う状況になってしまっている。
彼らが終わらないというかどうあっても終わりようのない会議をしていると突如として扉が開かれる。この会議室の扉は彼らの力によって特殊な効果が施されている。
その効果の一つに扉が計八つあるのだがその内の7つはそれぞれの魔王にしか開けることは出来ない。そして最後の一つは魔王が許可したものなら入れるという効果を有している。
しかしながら今回開いたのは八つ目の扉じゃない。今回開いた扉。それは5つ目の扉。つまり、戱生スティラメーサスの扉だった。
「Hello.お元気でしたか?魔王の皆様?」
そして腕の傷にに手を添え、スティラメーサスは挨拶を交わすのだった。