8話 イベント2日目 (2)
ドラゴンベビーが光の粒子となって、消えていくと同時に持っていた刀が砕け散った事に気がついた
「まだまだ修練が足りないって事かな。あ、回復しなきゃ」
そう言ってポーションを取り出して飲み干す。クールタイムが終わるとまた、ポーションを飲む。
すると、広場の真ん中に何かが落ちていた。
近くに行き拾って見るとそれは、『魔法紙』だった。
『魔法紙』とは紙に魔法陣が刻まれている紙のことで、魔法や道具を収納でき、ノータイムで使うことが出来る。もちろん、一度使うと消えてしまう。
問題の中身を見て、書いてあったことは、
この場所はトウキョクの拠点になったことや、魔法結界が使えること、そして最後に小さく、
「おめでとう!これを見ているということは無事にドラゴンベビーを倒せたという事かな?この紙を見ているということはこのゲームで初めて竜種を倒したという事でもある!ご褒美として、称号をあげちゃう!これからも頑張ってね!by運営一同」
《特定のプレイヤーが規定に達した行動を成功させたので称号システムが全プレイヤーに適応されました。詳しくは運営メッセージをご覧下さい》
……なにか、やってしまったぽい。偶然広場に行く事になって、偶然ドラゴンが出てきて、偶然倒しちゃったから、悪くないよね?よね?
「おい!大丈夫か!?今援軍を連れてきた…ぞ……」
「ウィン大丈夫か!?それでドラゴンはどこだ!?それにさっきのアナウンスはなんだ!?」
「あー……サスケさんにロータス、えっと……ドラゴンベビーは倒したから安心してください。あっ、これ倒したら出てきました。どうぞ」
「あ、ああ……。ありがとな。じゃなくて!どうやって倒した!?硬くて刃が通らなかったよな!?」
「お、お、落ち着いて下さい!えっと、倒した方法は企業秘密です。さっきのアナウンスはその紙に書いてある事を読んだらなりました」
「……分かった。基地作成組と護衛組以外は拠点に戻るぞ!作戦の練り直しだ!」
そうサスケさんが指示を出し、みんな続々と戻って行く。しかし、ロータスだけがこちらに向かってきて耳元で囁いてくる
「もしかして、【セントラル】のあの謎の部分が分かったのか?」
「どうして、そんなにロータスはいつも察しが良いかなぁ。まあ、そういう事だから後で教えるよ」
「いや、教えるなよ!前に言っただろうに」
「良いんだよ。ロータスだって教えてくれたじゃないか」
「一つだけな。それに基礎能力の方だから気にするな。とりあえずお疲れ様。良くやったよ!」
「ありがとさん。今その能力のせいでステータス下がっちゃってるんだよ。だから、今攻撃食らうと即死もありえる」
「はぁー。なんで弱点を言っちゃうかな」
「そういえば思ったんだけど、サスケさんとか、半蔵さんとか他の人たちなんで【セントラル】使わないんだ?」
「まあ、簡単に言うと単に能力が戦闘向きじゃなかったり、その状況に適してなかったか、情報を秘匿するためだな。サスケさんは状況にあってなかったというべきかな」
「イベントで使わなかったら使う機会なんてあるの?」
「それがな色々あるんだよ。冒険者ギルドの二階にはな、PvPランキングやギルドランキングとかが見れるようになっていて、そっちに賭けてるやつだったり、この戦争イベント以外のイベントに向けてとかだったりな。まあ難しい話は後にして一先ず戻ろうぜ」
「そうだね、疲れちゃったし戻ろうか」
拠点に戻った後はその日は何もすることがなかった。
作戦通り攻めたり、作戦会議を行ったりしていて自分の出る幕がなかった。
モンスターだけでも倒そうと思ったけど、手元にあるのは無残に鍔から上がない刀と剣身がボロボロで刃こぼれしまくっているフリズベルンだけだ。
フリズベルンの方は時間が掛かるが、どうにか直るみたいだ。しかし、無銘刀の方は修復不可能だった。
いつもなら薄く発光する鞘、〈ファントム〉が無銘刀の方の鞘は光らなかった。
作ってくれたコウテツさんに悪いなと思いながら刀をアイテムボックスに仕舞う。
夜空を見上げながら折れた原因について考えていた。
ドラゴンベビーの首を切ったあの時、持ち手部分にヒビが入り、斬った瞬間に刀身が自分の筋力値に耐えられていないと分かった。
単純に自分自身の腕が未熟で刀を操り切れてないというのが原因とも思っている。
しかし、これについてはまだ前向きに捉えられる。このVR世界で刀を、剣を、振るうようになってから以前より幾分マシになっているのが分かる。
それが、単に経験を積んだからなのか、VRだからなのかはわからない。
しかし、強くなっている。それだけ分かれば十分だ。
夕食の準備をしているのが目に見えた為手伝う事にした。今日のメニューは定番のカレーらしい。
材料は至ってシンプルで肉や玉ねぎ人参などで、この世界にも普通の材料があるんだなと感心していた。
なんせ今まで倒してモンスターからドロップした肉を焼いて食べていたのだ。……ん?ドロップ?
ああ!ドラゴンベビーからドロップしたのか確認していなかった!それに多分レベルも軒並み上がっているだろう。この手伝いを終えご飯を食べたら確認しよう。そう決め、人参の皮むきをしていく
「ウィンさんって料理得意なんですか?」
そう聞いてきたのは中学生?くらいの女の子だ
「まあ、料理作る機会も多いからね。それなりには出来るよ」
そう言うと聞いてきた子と、その子の後ろに居た女の子達が
「料理男子だって!すごくない?」
「イケメンで、強くて、料理も出来るなんて……」
「今日ロータスさんと一緒にいるとこ見つけちゃって写真撮ったよ!」
「えぇー!ずるい!後でデータ送ってね!」
「イケメン2人が仲良く一緒に……ぐふふ。」
……若干1名危なそうな子がいたが気にしないでおこう。気にしないでおく。大事なことなので二回いった
そんな女の子達に質問されたり、フレンド登録をお願いされたので、断る理由も特にないからオーケーを出しフレンドになった。
そして今、ご飯を食べ終えステータスと格闘しているとロータスが隣に座ってきた。
「よっ!モテモテだったな!流石ドラゴンスレイヤーだな!」
「いつもロータスだってそうだろ。それに、後ろのやつは冗談じゃ済まないぞ」
「みんなお前のことドラゴンスレイヤーって呼んでるぞ?」
「……実はな、称号でもそれがあるんだよ」
「アハハ!マジか!運営公認のドラゴンスレイヤーか!いいじゃん!」
「良くないよ……そんなの言われても嬉しいわけでもないし」
「それで?なににそんなに悩んでるんだ?」
「いや、特に悩んでるってわけじゃないけど明日どうしようかなって」
「どうしようってそりゃあ……あぁ、なるほどね。刀が無くなって、剣の修復も間に合わないと参加できないと」
「そんなところだね」
「そういえば、お前が倒して手に入れた『魔法紙』に刻まれていた魔法結界の効果、中々えげつなかったぞ」
「なんだったのさ?」
「3時間の間、敵国、ないしは敵意を持った者の侵入拒絶だ」
「それは確かにえげつないな……」
「それで明日、正午に全軍突撃する事になったぞ」
「なるほどね、3時間でケリをつけると」
「今日も一人が旗を奪取出来たらしいんだけど、すぐ捕まって旗は戻されたとよ」
「へぇー、旗をとる事自体は出来てたんだ」
「まあな、詳しい作戦は明日らしいからゆっくり休めよ?」
「りょーかい。じゃあお疲れ」
こちらを見ずに手を振りながら戻っていく。
……イケメンってどんな姿も様になるよな。
明日はイベント最終日。相手も全力を持ってくるだろう。そう考えながら拠点の中に戻り就寝した。
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ウィンLv29 剣士Lv29
SP24 ステータスポイント18
生命力 46 +2
魔力量 53 +2 +10(神木の腕輪 既に足されています)
筋力値 50 +3
敏捷値 50 +3
知力値 43 +2
器用値 43 +2
スキル 剣Lv32 片手剣Lv16 刀Lv17 二刀流Lv9
火属性Lv16 水属性Lv19 風属性Lv19 土属性Lv16 光属性Lv18 闇属性Lv16 氷属性Lv8 時空属性Lv1
気配察知Lv23 回避Lv24 受けLv24 鑑定Lv16
【セントラル】道具 モデル鞘 〈ファントム〉二対
・納刀時に刀剣が修復される
・刀や剣のおおきさによってサイズが変化
『背水の陣』任意のステータスを1にして、減少した値分、筋力値に追加される。初撃のみ防御力無視でダメージを与える
称号 【竜殺し】
プレイヤー討伐数 85
モンスター討伐数 302
キラーベアー、ゴブリンキング、ゴブリンクイーン、
デス・ラビット、ドラゴンベビー
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【竜殺し】
竜種を倒した者に与えられる称号
竜種に対して1.2倍ダメージ量増加