19話 アイドル
PV320,000、ユニーク50,000、総合ポイント6,500達成しました!
山頂で爆音が鳴り響く。
「あんのバカっ!後で絶対弓撃ってやる!」
「分かったから早く行くぞ!ここも安全とは分からねえからな。っ!?ほら見ろ!土砂崩れが来たぞ!」
「〈アパン〉!皆さん乗ってください!」
ミオさんが、氷で出来た豹を召喚した。言われるままに背中に乗る。氷なのに冷たさは全く無い。
3人全員乗ったのを確認すると凄いスピードで、山を降りて行く。
30分後、山の麓に着いた。
そのまま3人でウィンの愚痴などを言いながら、ナフルに向かって歩いて行った。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「はっじめましてー!どう?どう?初めてのデスペナルティは?」
いきなりそう話しかけて来たのは、美少女だが、ニヤニヤしているせいで台無しになった残念美人の様な人だった。
(そっか、死んだのか。ロータス達に悪いことしたなぁ。どっから始まるんだろう。)
「ちょっと、ちょっとー!何一人で納得してんのよ!あたしの質問に答えなさいよ」
「えっとー……その前にあなた誰ですか?」
「あっ、そういやしてなかったわね。あたしの名前は、アテナよ!よろしくね、ウィン?」
アテナは確かギリシャ神話の守護や知恵、戦いの女神だったはず。……こいつが?
「ちょっとー、今失礼な事考えたでしょ」
「ま、まあ、すいませんここってどこなんでしょう?」
「ああ、ここは貴方がデスペナルティになった時に来る場所よ。本当はもっと前に会えるはずなのに、ウィンが全然死なないから会えなかったじゃない!
まあ?ぶっちゃけると、アテナって言っても中身は運営してる人で、運営が気に入った人を見つけると会うことが出来るってとこなのよ」
つまり、アテナを操ってる運営の人に気に入られたって事か?
あー、そういえばたまに、運営からって事で色々あったけどこの人か。
「ってことは、他にもいるってことですか?」
「そうね。詳しくは言えないけれど、全部で11人はいると思って良いわよ。1人だけ、選ばないようになっているけどね。だから全部で12人私のような神がいるってこと。もしかしたら今後、アテナとして出るかもしれないからよろーーーちょっと部長!?あっ!ちょっ!?ーーー」
アテナが目の前から消えた。そして、一人の男性が出て来た。
「すまないね。こいつがまだ秘密のこと言っちゃったからね。私はゼウス。君も気づいてしまったと思うけどオリュンポスの十二神だ。アテナも言った通り、今後出るかもしれないからその時はよろしくね。悪いけど、この事は黙っててくれるかな?」
「わかりました」
「ありがとう。ごめんね、これ保険としてしとかないとダメなんだ」
そういってゼウスが手を振ると、金色の光が右腕のマークに吸い込まれていった。
「今のは先程のことを誰かに喋ったり、伝えたりするとなんらかのペナルティが出るようになってる。その代わり、謝罪の気持ちも込めて言わなかったら、いずれ良いことがあるよ。それじゃあ、頑張ってね、ウィン君」
ゼウスが手を振ってお辞儀をしようと瞬きをした瞬間、気づいたら始まりの街アヅイに居た。
「うわぁ、アヅイからかぁ。これは、今日中に合流出来ないな。とりあえずロータスにメールしとこう」
すると、すぐ様返信が来て、一時間待ってろと、今後は街に着いたら、街の噴水でリスポーン地点登録しとけ。との事だ。
一時間待ってろと言われたのでどうしようか迷う。久しぶりに、リリーさんとコウテツさんに会おうと思って、店がある場所や鍛冶場に行ったけれど誰も居なかった。
他の人に話を聞いてみると、二人とも王都に向かったらしい。なんともタイミングが悪い。
少しばかり歩いていると、路地裏で声が聞こえた。それも何やら普通じゃない内容だ。
声のする方に向かってみると、そこには5人の男性プレイヤーと一人の高校生くらいの女子プレイヤーが居た。
「すいません、そういうのは断ってるんですいません!」
「いいじゃん、いいじゃん!カレンちゃんちょっと一緒にモンスター倒しに行こうよ!」
五人で囲むようにしていたので思わず声をかけてしまった。
「すいません、困ってます?」
「はい!絶賛すごく困ってます!」
そう言ったので助けることにした。だが、案の定周りの五人は……
「あぁ?お兄ちゃんよぉ。俺らが先に話してるのにどういうことだ?あぁ?」
「やっちゃおうぜ」
「でも、ここアヅイだぜ?どうするんだ?」
「へっ!簡単だよ!おら!にいちゃんよ、受けるよな?」
そういってPVP、一人対五人を申し込まれた。受けようとすると……
「あ、あなたたち卑怯ですよ!一人を五人でするなんて!」
「いや、いいよ。やろう」
「へへっ、そうこなくっちゃな」
「ちょ、ちょっと貴方!助けてくれるのは嬉しいけど大丈夫なの!?」
「大丈夫だから、まあそこで見てて」
カウントが始まりスタートする。手に何も持たずに、素手でやる。
「あぁ?調子乗ってんじゃねぇーよ!腰についてる剣と刀はおもちゃか?」
そう言ってリーダー格の男がバトルアックスを手に持って襲いかかってくる。それをひらりとかわし掌底で顎を打つ。そのまま鳩尾にも一発。
現実ならこれでノックダウンするのだが、これはゲームで痛みはないのでHPが減るだけだ。
残る四人も一斉にかかってくる。しかし、狭い路地裏で四人もが来ると突っかかる。それをジャンプで飛び越え、後ろから一人ずつ蹴りを入れる。
すると一人が急に震え出した。
「お、思い出した。こいつ、剣に刀の二刀流。ドラゴンスレイヤーのウィンだ」
「ま、まじかよ……」
「お、おれはリタイヤする」
そう言って一人がリタイヤすると、他の3人もリタイヤして逃げていった。
「で?お前はどうする?」
「ちっ!ドラゴンスレイヤーだがなんだかしらねぇが、このまま終わると思うなよ!」
そういうと男から火でできた矢が飛んで来た。
魔力を右手に纏い、そのまま掌底で霧散させる。驚いた顔をしている隙に、人体の急所を攻撃していく。
そして、男は光となって消えていった。
目の前にYou Winner!と表れた。
「大丈夫?」
声を掛けたがポーッとしている彼女を揺さぶる。
「おーい?大丈夫?」
「あっ、はい!助けてくださいありがとうございました!お強いんですね!」
「そんな事ないで「カレーン!!」す?」
振り返ると、こちらに向かって飛び膝蹴りをしてきている女子のプレイヤーがいた。
その蹴りをフリズベルンで受け止める。
「ッチ!カレンに近寄るケダモノめ!あたしがぶっ飛ばしてやる!」
「ち、違うの!この人はーー」
「分かってるって!いつも通りぶっ飛ばしてあげるから、カレンは待ってて!」
「お、おい。ちょっと勘違いしてるぞ」
「問答無用!」
彼女が殴ってくる。手にグローブを着けているのを見ると、拳士タイプなのだろう。
流石に女の子相手に武器はまずいので剣をしまい。手で相手の拳を受け流す。ちなみに合気道の一つだ。
「今回の不審者はなかなかやるな」
「誰が不審者だよ」
「お前に決まってるだろ!」
さらに殴りかかってくるので、右に左にとかわしつづける。路地の壁を利用して彼女を飛び越え、カレンに話しかける。
「カレンだっけ?どうしたら止まるの?」
「気安くカレンの名を呼ぶな!」
「え、えっとー、えい!」
カレンが両手を広げながら、彼女の前に立ちはだかる。
「お、おい!?カレン避けろ!」
「よ、避けないよ!この人は助けてくれた人だもん!」
「本当なのかカレン?」
「本当だよ!リンちゃん!」
ようやく止まった彼女が、こちらを睨んでいる。そこである事に気付いた。
「あっ、もしかしてよくテレビに出てるアイドルのカレン?」
「あ、はい。そのカレンであってます」
「なるほど。道理で見たことあると思った」
「お前、気付いてなかったのかよ?」
「さっきまで男たちに囲まれて顔よく見れなかったし、この路地裏暗いしね」
「リンちゃん!この……お名前なんて言うんですか?」
「ん?ウィンだよ」
「んんっ、リンちゃん!このウィンさんに謝って!」
「悪かったな。またいつもの悪漢かと思ってよ」
「いや、もう気にしてないよ。とりあえずどこか明るい場所に行こうか。またあいつらみたいなのがくるかもしれないしね」
そういって二人の行きつけだというカフェに行く。
入った途端、店内が騒ついたが、店長らしき人が来て、個室に案内された。その時に、自分にだけ聞こえる声で、
「私はここの店長で、カレンの叔父です。マネージャーさんに頼まれているので、変な真似はしないでくださいよ?まあ、リンちゃんが許してるから大丈夫だとは思いますけど」
「わかりました。そのように見られないよう気をつけます」
そういって個室に入る。中は落ち着いた雰囲気で、中々いい場所のようだ。
明るいところで見ると、二人はいつかの掲示板で見た通りどちらも美少女だった。
カレンは、とても可愛らしく、水色の髪でポニーテールをしていて、女性らしい体のラインでウエストは細いが、出るとかはしっかり出ていた。
リンは、気が強い性格もあってか男っぽい感じだが、美人という感じだ。女子にしては背が高くモデルのようなスタイルの良さだ。ちなみに、身長の割にカレンのが大きすぎるだけで、リンも小さいわけではない。
「で、カレン。何があったか説明して」
そう言われて、カレンがリンに説明する。時々足りない部分があったので、補足説明を加える。
「なるほどねぇ。まあ、ウィン……さん、うちのカレンを助けてくれてありがとうございました」
呼び捨てにしようとした時にカレンが、リンを睨んだ。うちのを、強調して言った。
「いや、気にしなくていいよ。それで、気になってたんだけど、なんで攻撃出来たの?」
「あっ!それは、カレンがアイドルって事で運営からの配慮って事で、カレンとあたしと叔父さんに、危険を防ぐ為って事で会社がお願いしたんですよ」
「へぇー、アイドルって大変だね」
「ウィンさんって、前のイベントで大活躍してたあのウィンさんですか!?」
「大活躍かは、分からないけど、多分そのウィンであってると思うよ」
「わぁー!私あのドラゴンベビー戦見た時からファンなんですよ!強くて、優しくて、料理上手ってフレンドのみんなが言ってたので、一度会って見たかったので会えて嬉しいです!」
「あ、ありがとね。ドラゴンベビー戦見たって、あの場所に居たの?」
「いえ、あの後公式でイベントの映像が流れたんですよ。国ごとに編集されて。その中でもウィンさんの戦いが一番長く映ってましたよ」
そんなのがあるのか。今度見てみよう。
二人で話していると、そこにリンが混ざり、同い年という事がわかり、お互い呼び捨てで呼び合う事に。
「へぇー!やっぱりウィンは、リアルエルフと仲が良いのか」
「そうだね、今度連れてくるよ……って!忘れてた!」
時計を見てみると、一時間を過ぎて居た。
「じゃあ、カレン、リンまた今度ね!フレンド登録したし、何かあったら連絡してね」
「はい、また会いましょう!」
「またな!」
二人と別れ、代金を店長さんに3人分払い、急いで約束の噴水広場に向かう。
そこには、イライラしているロータスがいた。
「ご、ごめん。遅くなった」
「ほぉ?勝手に死んどいて、一時間もありながら遅れる理由をしっかり説明できるんだろうな?」
「えっ、えっとー……」
包み隠さず、あったことを全て正直に話した。リリーさんとコウテツさんを探したが居なかったこと。歩いていたら、ナンパしていたカレンを助けたこと。その後、話が楽しくて時間を忘れていたこと。
話終わった後、めちゃくちゃ怒られました。
次回は明日、の筈です。




