18話 VSザ・サンシャイン(2)
二の型、断絶は実体の有無を関係無しに斬る。
現実では、滝に向かって練習をしてたりしていた。
実体の無いものは斬ることは出来ない。では、どうやって斬るか。
それは、一言で言えば風だ。
正確には、刀を超高速で振り、その風で斬るわけだ。
「ウィン良くやったな!ってお前!?火傷してんじゃねえか!」
ロータスがそう言ったので体を見て見ると、来ていた袴は焦げていて、右腕には大きな火傷ができていた。
痛いなぁ。治るかなこれ。
痛い?このゲームには痛みはないはずだ。それに、ここに来るまでの間受けたダメージは痛みなどなかった。
なのに、痛い。突き刺さるような痛み、現実で火傷した時と同じ痛みが存在している。
しかし、ロータスの魔法による治癒と、ポーションを掛けたら痛みは次第に引いていき、火傷も無くなった。
この事をみんなに言うか迷ったが、今は辞めといた。
「それにしても暑いなぁ」
「そうですね、脱いじゃいましょう」
そう言ってミオさんが着ていた上着を脱ぐ。すると、豊かな膨らみ二つが揺れた。サスケさんがそれに目を奪われている時、ロータスと自分は気づいた、暑さが増している。
「ロータス!」
「分かってる!」
二人で走り出し、ザ・サンシャインに近づく。そう消えていないのだ。最初はフィールドボスだから消えないとかかと思ったが、もう違うことが分かる。
まだ終わっていない。
ザ・サンシャインは二つに分かれているが、それが元通りに一つに融合した。
「まじかよ!?ウィンのじゃダメだって言うのか!?」
そうして、ザ・サンシャインとの二回戦が始まった。
「ウィン!」
「りょうかい!」
こちらに向かってきた、炎の槍を穂先から、柄の部分まで、斬る。炎の槍は霧散していく。
「ミオさん!」
「任せて!」
そういうとミオさんが10本を超える水で出来た槍が作られた。
「ウォーターランス!」
水の槍は炎の槍と真正面からぶつかり、蒸発する。
そして、サスケさんが今までとは違う形のクナイや手裏剣を投げる。
それがザ・サンシャインに当たり苦しそうにしている。サスケさんは、魔法破壊を持っていた。
それは、火属性だけを代償にしたものらしい。
戦って分かったことはザ・サンシャインは火属性だけではない。火属性の他に溶属性、爆属性を持っていた。つまり、サスケさんと自分では与えるダメージが違うということだ。
「ウィン!頼む!」
そう言われてボスを見ると、膨張していた。これは先程も見たもので、自身ごと爆発する技だ。
爆発した後バラバラになり集まり出した時、一番ダメージを与えれることが分かっている。
だから、この爆発で吹き飛ばされるとチャンスが無くなることを表す。
3人が自分の後ろにいる。
そして、ザ・サンシャインが爆発した。
まず、右手の桜で爆炎を斬る。次に、左手のフリズベルンで爆風を斬る。
後ろの3人が走り出す。それに後ろから付いていく。
「『一矢壮烈』!!!」
ロータスの【セントラル】のスキルだ。一本の矢が炎を纏い凄まじい勢いで飛んでいく。
それに続いてサスケさんの、爆弾付きクナイが無数に飛んで行く。
「『豹結泉』!!」
ミオさんの【セントラル】スキルで、氷で出来た豹がザ・サンシャインに当たるとそのままザ・サンシャインごと凍らせた。
「『背水の陣』一刀両断、三の型、乱桜」
両手で持った桜を振る。何度も何度も斬る。空中に舞ったザ・サンシャインだった氷が夕日に照らされて綺麗に光る。
レベルアップのアナウンスが鳴り、こんなものも出た。
《ザ・サンシャイン戦でのMVP報酬、特殊スキル『陽属性』を獲得しました》
《ゴールドサンシャインをクリア!エリア開放しました》
MVP報酬とは売却、譲渡不可になっている。
陽属性は、火属性、溶属性、爆属性の性質を持っていて更に独自の性質も持っている、多分ユニークスキルだ。
「みんなおつか……伏せろ!!」
自分の言葉に従いみんながその場で伏せる。
先程まで立っていた場所に、矢や魔法が飛んできた。そのまま通り過ぎて消えていった。
「おおぅ?まじかよ、今の不意打ち躱すかよ」
そう言って下から登ってきたのは、白髪で長身で仮面を着けている男だった。
「お前はリカルド!」
「おおー!あの、リアルエルフ君に知ってもらえるとは、俺も偉くなったもんだなぁ」
「ロータス誰なんだ?」
「PKギルド〈死神の鎌〉のリーダーだ」
〈死神の鎌〉とは、トウキョクに存在するPKギルドの中でも、特に有名なギルドだ。
リカルドという男の後ろから続々と来ていた。全部で18人、3パーティー分だ。
普通のデスペナルティーに比べてPKされた場合のデスペナルティーは大きい。
武器や防具、道具を落とす可能性があるし、所持金がの半分がその場に残る。
「どうするロータス」
「疲労困憊だけど、戦うしかねえな」
「ウィンなら大丈夫だろ、一人でレイドを倒すんだからな!」
「そうですね!みんながいれば大丈夫です!」
「じゃたやるか!」
オレンジやレッドのプレイヤーを攻撃しても、こちらがオレンジやレッドになることはない。だが、前にロータスが、オレンジやレッドに混ぜてグリーン、つまり犯罪などを起こしてないプレイヤーを混ぜている場合があるという。見分けるには鑑定だが、誰一人として鑑定が通らない。ということは、レベルが自分よりも高いという事だ。
「ウィン!他のPKは俺たちに任せろ!リカルドを頼む!」
「わかった!」
そう言ってロータスは、一人のプレイヤーに近づく。そのプレイヤーに攻撃せず他のプレイヤーを攻撃している。そのプレイヤーが攻撃を仕掛けて来たときにわざとかするようにして避け、オレンジにした。
「〈シノビ〉」
サスケさんがそう呟くと、辺りが暗くなり夜になった。すると、本来はPKに有利になるはずの暗闇がサスケさんの独壇場になっていた。
気づいたら後ろにいて、PKの首を切り次のプレイヤーを狙っている。さすが第二回のイベントでランキング1位、最多のプレイヤーを討伐した〈忍者〉のサスケさんだ。
「余所見していいのかよ!」
リカルドが両手で振り回している鎌を柳で受け流す。多分この鎌がリカルドの【セントラル】だろう。重さを感じていないように軽々と振り回しているし、地面に生えてる草を刈った瞬間、草が枯れていった。
「お前の鎌は水分、もしくは生命力を狩る力を持ってるな?」
「ヒュー!こんな短時間でバレたのは初めてだぜ、まだ攻撃を当ててもないのにっな!」
鎌をしゃがんでかわし、桜で斬りつける。しかし、斬ったという感触が全く無い。
「これはな『闇化』っつてな、一切の物理攻撃を効かなくして、魔法防御力が上げるんだよ。中々えげつないだろ?」
わざわざ教えてくれたリカルドに対し、魔力を纏わせた桜で斬りつける。
「っち!魔法破壊持ちかよ!今更あんなスキルもつとか、変わってんな!」
舌打ちをしたのにかかわらず、笑みを絶やさないリカルドに何かを感じつつ攻撃をしかかる。
数度撃ち合いをしてる時、異変があった。
「ミオさん!」
ロータスの声を聞き振り返ると、PK達はそこには誰一人いなく、倒れてるミオさんにロータスとサスケさんが駆け寄っていた。
「ウィン気をつけろ!PKは倒したんじゃなくて急に逃げ出した!何かあるかもしれんぞ!」
ミオさんにロータスが何か飲ませていると、リカルドが悔しがっていた。
「リアルエルフの野郎知ってやがったな、くそっ、もう加減はいらねぇな!この『黒粒子』は、全ての生命から生命力を奪う。さて、お仲間は生き残れるかな」
そういうとリカルドの身体から僅かに出ていた黒の粒子が勢いよく出てきた。
これはまずいと、頭の中に警報が鳴り咄嗟に退がる。
周りの生き物が次々と枯れていく。
「ウィン!あの粒子に触れたり、吸い込んだらするなよ!」
「対処法はあるのか!?」
「一度に吹き飛ばすしかない」
「ロータス!サスケさん!ミオさんを連れて先にナフルへ向かって!後から追いつきます!」
「バカ何いってんだよ!」
「早く行って!!」
「絶対追いつけよ!」
そう言って3人が山を降りていく。その間にも黒の粒子は広がっている。
「お仲間を逃がすために残るなんて、なんていう自己犠牲溢れる行動なんだろぉなぁぁ!」
「自己犠牲だけじゃねえよ、お前を倒すためだよ」
そういって新しく手に入れた陽属性を使う。この陽属性は他とは違いレベルによって魔法が増えるのではなく、熱量が増える。
つまり、この魔法はイメージによって様々な魔法作ることが出来る。
熱量を今集まれる最大限まで集め、解き放つ。
ザ・サンシャインが自身ごと爆発した技をイメージに。
「超新星爆発」
「バカヤロウが!クソッ!」
リカルドが斜面を転がるように逃げる。だが、遅い。
ゴールドサンシャインの山頂で、凄まじい音と光が発せられた。




