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江戸蔵心中  作者: かもめ
6/8

解離って自分の意思だけじゃ直せないんですよね

今年の夏は変な変な夏でした

 もう決められたことだし、親に従うしかない私だったけど、私がしているなぎなた部にちょくちょく顔をだすママが死ぬほど嫌だ。

「まあまあ皆さん、部活動お疲れ様、これつまらないっものですけど、差し入れ」

「ママ来ないでよ、そんなのいらない」

 いくら抗議しても、

「まあいいじゃん順子、お母さん気を使っていてくれるのよ」

「親のことあんまり悪く言うなよ」

 そう回りがいうモノだから、ますますママは喜んでしまう。

 私にさせたことなら口を出さないでほしいのに、せめて口出ししても、顔まで出さないで欲しい。なぎなた始めてからママが余計に重く感じて息苦しくなってきた。家とみんなの前の態度の違いにも腹立たしい、一体どういうつもりなんだろうか。

 薙刀は正直面白かった。

 同年代だけれど経験者の栞理ちゃんが色々教えてくれるし。初めて防具稽古するとき、面てぬぐいを付けるの教えてくれた時なんだけど。

「ふーんやっぱりね」

「ど、どうかな、ちゃんとつけられてる?」

 鳥の巣みたいな巻き毛を隠す手ぬぐい、それでハッキリするカオを舐めるように見られて恥ずかしい。

「うん、いいよ、いい感じ。ママきっと隠して認めたくないんだわ」

「?」

「順子さん、とっても素敵よ、これから色々教えていって差し上げるわ」

 その時の妙に絡みつく栞理ちゃんの視線が、耳に触れる手肌の体温が忘れられないの。

 彼女とても親切で、なんとブラジャーを私にくれるの! ママはそんなものは自分で買え! って絶対に買ってくれたことないのに、彼女が買ってくれた。もちろんそんなの悪いよって言ったわよ、そしたら、

「いいのよ順子さん、それより今度栞理の家に遊びに来てね」

 そういって半ば強引にブラを押し付けてくれたの。これ以降、私は背中を丸めて学校に通わずに済むようになったのよ。


 夜は恐怖だ。

 順子の意思なんか関係なく、順子を犯す、陰に怯えた。

「順ちゃん、今日はブラしてるでちゅね」

「ぶかちゅどうはおもしろいでちゅか~、ママも喜んでまちゅよ」

「オッパイおおきくなりまちたね」

 心の底から気持ちが悪い、肌の暖かさもが気色悪い、言葉使いに吐き気すら覚える、嫌なことをされ続けると順子はバラバラになる、私は耐えた、誰にも言えないし、酷い罪悪感が苦しい、ママが知ったら何て私を責めるのかと考えたらますます苦しくなる、きっと想像を絶するような酷い言葉を投げつけてくる。誰にも言ってはいけないんだ、家庭を守るために。行為の跡をパパは平気で残していくようにいつの間にかなっていた、それをママに知られないように、私が全て処理する様になっているのが悲しい。


 ほとほと家庭に希望を持てなくなっていた、ママは切れて切れて切れまくった後泣き落としてくるし、夜が怖い。最近パパが言う、

「順ちゃんみたいな不細工一生彼氏なんか持てないよ、だからパパがしてあげてるんだ」

「あそこの臭さったらないよ、みんなこのこと知ったらびっくりするよ」

 そういって順子を脅し、私をどん底に沈める。

 家にいると、パパとママといると最近変な声が聞こえてくるようになった。気分が沈み込んで、のどの奥に何かが詰まった様になってくるの。

 後で知ることになるんだけど、解離や認知の問題とか、幻聴から来るうるささに苦しみはじめていたんだろうなあ。


 ある日曜日栞理ちゃんが順子を誘ってくれた、美容院に行こうって。

「順ちゃんは綺麗にすればもっと良くなるよ、お金のことは気にしないで、わたくしが勝手にしてるだけ、わたくしにもっとプロデュースさせてよ」

 何だかここまでしてくれると断りずらい、ママにはまともに髪の毛の手入れなんてするなブスって言われてきた順子には罪の意識すら覚えるのだ。

「きっと短めのボブが似合うよー、うなじの白さが際立つようにね」

 そう言ってきゃぴきゃぴはしゃぐのだ。

 バッサリ髪の毛を切ると頭がずい分と軽くなって、気分も少し明るくなれた。好みとかいうわけではないし、そもそもどういう髪型にしたらいいかなんて自分じゃ決められないのだ。栞理ちゃんに決めてもらえればそれで良かった。

「すっごく似合うよ順子ちゃん、私って超センスいいでしょ? 絶対みんなから可愛いって言われるから、そのくせっ毛いいなあ」

「そ、そゆーもんかな」

 ママもパパもこぞって順子を小馬鹿にするのが身に沁みついていて、栞理ちゃんの言葉は素直には喜べない、でも何だかちょっと嬉しかった、どう表現していいのか分からなかったけど。

「どうせだったら今からうちにいらしてよ、栞理ちゃんのことメイクでもっと綺麗にしちゃうから、絶対期待していいよ!」

 テンションの上がった栞理ちゃんは強引に順子を誘ったのだった。

 スゴイ家だというのは遠くから分かった、ああ本当にお金持ちの家なんだな二条さんて、月並みな言葉だけど超スゴイ家。全面平屋でいながら屋根が高く、庭が広い、いくら千葉といえどもこう東京から近くじゃ土地だって高かろうに、確かにいいとこのお嬢さんなんだなって、親から大事にされてきたんだろうなって思ってしまった。

「ほら自分の家だと思ってリラックスしてよ、今から綺麗になれるんだよ」

「う、うん」

 立派な三面鏡を前にして、調度品の豪華さを見て、建物の立派さにびっくりして、中々リラックスできない、というより自分の家ってリラックスできるところなのかと。

 お化粧をしてもらいながら、様々なメイクの事を解説してくれる栞理ちゃんだった、コンシーラとファンデーションの違いや、基礎化粧品の大切さ、洗顔の仕方まで、全部順子の知らないことばかり、ママの嫌う事ばかりだ。

 出来がっていく顔に罪悪感と不思議な感情に私も戸惑った、髪型が変わり、綺麗に可愛く整っていく様に、困惑した。

「ほらー可愛くなってきたわよ~、わたくしってすごいでしょ~、ねえどう? 感想聞かせて」

「いいかもしれない、栞理ちゃん凄いねえ」

「えへへーもっと褒めてほめて」

 もしかしたらパパもママも褒めてくれるかもしれない位いい出来かも、どうしていままで自分てダメかもしれないって思っていたんだろうか。

 何かが軽く感じられる、不思議なことに家にいると聞こえていた変なサイレンみたいな音が消えている、あの不快な音が。

 仕上がった笑顔の順子に、栞理ちゃんが顔を近づけて来たのが鏡越しに分った。

「………して……いい……」

「? ごめん、何て言ったの……」

 ふふっという風に笑う栞理ときょとんとする私。

「……キスしても……いいかしら? 順子ちゃんって……言ったのよ」

 そう言って、目を開いたままの私の唇の奥の粘膜に、触れてくる彼女の舌の感触を最後に、私は意識が途切れ


「……………………」

 気が付いた時は、彼女の大きなベットで目を覚ました。

「……意識、飛ンじゃったか、香りだけ覚えてるだけまだまし」

 あいつとの忌まわしい夜の恐怖が一瞬頭をよぎったけど、彼女のベットの甘くいい匂いにすごく癒されるようで、すぐにそのことを忘れた。

「良かった~、気が付いた?」

「栞理ちゃん」

「女の子同士で、気持ち悪いよね、ごめんね」

 彼女に謝られて、気まずそうにうつむいてしまった。私はどうなのだろうか、いやだったのかな、何か急に嫌なものを思い出しそうになったけど、それが果たして何なのかむしろ知りたいし、知りたいの? 知りたいのか、そうかこの正体が何なのか知りたいんだ順子、意外っていういうのか、挑戦するわね。でも私みたいな穢れた人間でいいのだろうか、彼女を汚してしまうような気がする、そのことを彼女が知ってしまったら、この娘は傷つくんじゃない? だったら話してしまおうか、話して確かめてみるんだよ、さあやって順子。冗談! そんな事話せるわけないじゃない、こんな秘密、秘密、秘密……

 気まずい雰囲気の二人の世界を、沈黙を不意に破る音がした、部屋のドアがノック音。

「栞理、入るよ」

 栞理ちゃんが一瞬唇を噛んだ様に見え、直ぐに表情をいつもの明るい顔に戻した。なんだろうか、この一瞬の間。

「ハイお兄様、いらして」

「えっ、栞理ちゃんのお兄様……」

 ぎぃぃと低い開閉音とともに現れたのは、上背が高く、少し神経質そうな華奢な眼鏡を懸けた男、栞理ちゃんとは随分歳が離れて居そう。

「失礼、お客様がいらしていたとは」

 何だかどこか憂いを感じさせる人だ。

「あっ紹介します、正弘お兄様」

 のこのこ人の家に上がり込んで、勝手に倒れ込みベットで寝ている自分が急に恥ずかしくなってしまった順子は「はははは、、初めまして、て、て」と、どもってしまう。

 どうにもこうにも男の人は苦手だ。

「お客様がいるなら、また後で……」

 彼の低い声だけは好きになれた、艶っぽくて魅力がある。

「素敵な声……」思わずつぶやく。

 部屋を出ようとする彼は振り向き、

「愚妹をどうぞよろしく」

 軽く会釈して、静かに出ていってしまった。

「何だか静かな人だね、お兄さん」

「ああ見えて、親みたいな人なんです」

 何か複雑な事情を感じさせる言葉ね、と同時に私は強く、彼女に惹きつけられる。正確にはその関係性に。


先日二郎ラーメンの横を通り過ぎただけで気分が悪くなってしまいました、苦手を通り越して、だーいっ嫌いです。他にも大勝軒とかもきらい。

まあどうでもいいですけどね

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