女の子優位な競技って、楽しそう
花試合でもない限り、セメントで剣道側に勝ち目は薄いです。
入学式の時は酷いものだった、制服はきちんとしわの無いモノだったのに、髪の毛が鳥の巣みたいにぐちゃぐちゃなの。ママはブラジャーを買ってくれないし、順子が髪の毛を切るのも極端に嫌う。化粧なんて持ってのほか、順子は私は、背中を丸めながら、ぼさぼさの髪の毛で顔を隠し暗い表情で式中居ただけだったわ。
高校に行く条件はなぎなた部に入ること、多分理由はママがなぎなたをしてみたかったからだと思う。多分今までも順子に習い事をさせてきた理由の大半はそうなんじゃないかって。
新入生を部活に勧誘するデモンストレーションみたいなのに、なぎなた部も参加するんだけど、その試技が異様だった。
全国トップレベルの警視庁特連からこの日だけ、猛者がやってきて剣道対なぎなたの異種格闘戦が行われる、女子高生対機動隊員!
その中でもっとも順子の目を引き付けてやまない一戦があった。二年生鈴木という大女と警視流二刀隈本の対決。
剣道対なぎなたですら異色なのに、剣道側が二刀流だなんて! マジですか?
しかもこの二人には過去の因縁があって隈本選手は二刀にスタイルを変えてきたのだという。
試合は真剣勝負そのもの、女子高生がガチンコで警視流とやりあうんだもん。
「鋭!」
「応!」
鈴木が全く引けをとらない、いえそれどころか男性の隈本を押しているようにすら見えた。
世界の半分は順子にとって敵で、その中で自分は逆らうことなんて出来なくてただ犯されるだけ。そんなことが日常の順子にとって衝撃的だった。
「あらあなた、なぎなたに興味がおあり?」
夢中になって試合をみていたら、横から声ををかけられた。
「ふふ、凄いでしょう? あなたもなぎなた部に入りたいの? ねえ一緒に観戦しましょ」
「え、う、うん」
全くの初対面の娘だったけど、彼女はずいぶんとなぎなたに詳しいようだった。始めてみる順子に詳しく解説してくれるのだ。
「ほらみて、二人の距離感よ」
隈本選手と鈴木選手はじりじり僅かに、前進と後退をくり返しているように順子にはみえる。
「隈本選手の小太刀が中段から少し上にあがったわ、それに応えて鈴木選手の左足が僅かに前に出たわね。これってかなり高度な駆け引きなのよ」
「駆け引き?」
「そう駆け引きよ、互いにわざと隙を作って、対手を誘っていらっしゃるのよ、時にそれは先の先を取るためだったり、後の先そ取るためだったり色々よ」
「何そのセンノセンとかゴノセンって」
「いいからそれより見て、他にも色々な罠を二人して張ってらっしゃるわよ、呼吸のリズムだとか重心の僅かな移動、視線の移動、……色々なの、あっ」
「あっ」
それは一瞬だった、半歩後ろに下がった隈本選手が一気にその間合いを詰めた、というより跳んでいた。
それを鈴木選手は首を僅かにひねり、かわしながらなぎなたを下に振り下ろしていた。
「脛」「面」
ぱしーーーーん
「一本」
上がったのは鈴木選手の旗だった。
「八重違い!」
解説してくれた娘が興奮して叫んでいた。
「凄いわ!!! こんなに鮮やかにきまるトコ初めて見せてもらったわ! 実戦の対剣道戦で使えるなんて」
この娘が興奮するのも無理ないと、なんとなく感じられた、周りもざわめいていたし、何より二刀流対手の警視庁の猛者を女子高生が倒してしまうなんて!
「興味持っていただけたかしら? あら失礼、わたくし二条栞理ですわ、どうぞよろしく」
サラリとした髪の毛が印象的な、一言で言えばクールビューティーという言葉がぴったりの娘だった。
久しぶりにマヨネーズ口にしました、美味しいけど罪悪感が……