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江戸蔵心中  作者: かもめ
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親の方が性的に成熟してるって当たり前なんだけどね、それもってこられるとねえ……

昭和って時代ってねえ

 小学校に上がってしばらくした後、何故か勝手に英語教室に通うことになっていて、スイミングスクールの方は退会ということに。せっかくスイミングスクールで仲良くなれたお友達だっていたのに……さすがに「もう勝手に決めないでよ」と抗議した、ママは怖いの分かっていたけど、女の子は小学生くらいになると結構おませなところがあるのだ。

「なに生意気な事言ってるの、あんたはママの言う通りにしていればいいんだよ、あんたのためを思ってやってることなんだから」そういってプリプリ怒って耳なんか貸してくれなかった。

「だってあっこちゃんや、りさちゃんと逢えなくなるんだよ!」私にしては懸命に抵抗したわ。

「うるさい黙れ! 親のいう事と友達に会えなくなるのの一体どっちが大事だとおもっているの、大体ママのいう事聞けないんだったら……」

 怒りを満面に浮かべたたママは怖い、一体何を言ってくるのか私は身構えてしまう、

「お前なんかうちの子じゃない、家から出ていきなさい」

 ショックだった、身構えていてもショックだ。喉の奥から何か熱いものが込み上げてきそう、すごく悲しい、何もしてないのに小刻みに身体が震えて口がきけなくなる。小さい子が親から捨てられるのはとってもとってもこわいことなのだとその時心の底から思い知らされた。

 結局私はママに完敗し、英語教室に通うことになったの。


 小学校高学年になるとよりませてきた私はチョットえっちなライトノベルを読むようになっていた、ママが重く、空気なパパという家庭にきつい物を感じていたので、少しでも楽しい世界に逃げ出したかった。現実世界のがむしゃらな苦しさから逃れたかった、友達関係もうまくいかなくなっていたことも相まって、ライトノベルはいい癒しになっていたの。

 そのライトノベルの中のかなりきわどいシーンのイラストにドキドキした私は、しおりを挟んで、何度も見てドキドキを楽しんでいた。

 その次の日、学校の図書室に返さなければいけない本が無くなっていることに気が付いた。おかしい、確かに学習机の右端に置いておいたはずなのに、見当たらない。図書室のモノを失くしたらなんてとんでもないことだ、そういう罪悪感から私は焦り始める。机の棚、引き出しの中、ランドセル、鞄の中を冷や汗をかきながら必死に探しまくった。

「ないない、どうしよう、もしなくなっていたら先生なんて言うかしら……いやだ、どうしようどうしよう」

 どうしても見つからなくて、泣きべそをかいていた私にママは家事を中断して楽しそうにその本を持ってきた。

「ママその本どうしたの! 順子探していたんだよ」

 本がママの手にあるとほっとしたのもつかの間、しおりを挟まれたところのイラストを開いて「順子ちゃんコレなーに」というのだ。

 そのイラストはオッドアイの可愛い女の子の黒いパンツがちょっと見えているという、今となってはたわいのない物だったけど、「こういうのに興味があるの順子ちゃん」というママの、べっとりとした粘液の様な、甘い蜂蜜の様な優しい言葉に私はからめ取られてしまう。

 このままママのペースに進んだら、より絡み取られてしまうと直感し、私は黙った。黙っていながらにして小刻みに、意識とは関係なく体は震え、そんな生理的反応をママはじっと見ていたんだろう、口元は笑っていないのに目尻がドロリと垂れ下がるのだ。

(ヤバイって……)

「いいのよママ理解ある人なんだから、正直にはなしてごらん」とことんどこまでも優しくささやきかけてくるママ。

「……」

「もしかしてクラスの男の子が順子ちゃんのランドセルの中にそっと忍ばせたのかしら」

 助け船だと安心した、反射的に「そ、そう、そうよ」といってしまったのだ、それをママは期待していたんじゃないかな。

「え~~なんてかわいそうな順子かしら……学校の先生に電話していじめっ子を叱ってもらわなくちゃ」

 やおら立ち上がり、電話に手を伸ばす。

「や、やめてよママ! お願いだからそんなことしないで!」

 私は必死になって、ママに追いすがった。

「どーして電話しちゃいけないわけー、順子がいじめられてるって心配してるのよ~」

 ママは私よりずっと身体が大きいからいくらジャンプしても肩に手が届かないけど、その時は必死になってママの身体によじ登って電話を止めた。恥ずかしくなってワンワン泣きながらママを止めた。こういうことにママには関わって欲しくない、侵入してきてほしくない、でもママったら、私のレンガで出来た強固な城壁のわずかの隙間も見逃さず入ってくる雑草とか植物の根の様だ。瞬く間もなく私はママに侵食されちゃう。

「順子ちゃんが借りたんでしょ~」

「悪いコトじゃないんだから、ママは理解あるんだよ」

「恥ずかしいことじゃないからね、ね、ね」

 そんなことを言いながら口角を上げ、ニヤニヤ笑いながら……鼻水を垂らしてボロボロ涙を流す私を一時間以上優しく生暖かく慰めたの。


夏は豚肉が美味しく感じます、特に揚げ物でね。

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