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PC:パッション・パウーネ  作者: 新田 拓海
第2章 リターン・フロム・サターン
9/9

一難去ってまた一難

一ヶ月って早いなぁ。

違うんだよポケモンで忙しかったとか別にそんなんじゃないんだよ…

「流石にバレたかしら、まあいいわ」

「エンカウントまで約70秒、肩部デコイ生成装置準備」


パシファエはイオの不意を打つルートを飛行している。

レーダーに映っているイオの機体を確認しながら、ライフルのマガジンを交換して、目の前の小惑星を回り込むと予定通り機体が見えた。迷わず接近する。


すると[ドゥーポン]が回転してこちらを向き、ヘッドセンサーが点灯するのが見えた。


「気づいたわね、好都合だわ」


パシファエは撃ってきた無反動砲を避け、コックピットの左ペダルを踏みつけると、機体の左肩部から光が出てデコイが一瞬にして生成される。


このデコイはチャフの様なパッシブデコイだ。しかし決定的にチャフと違う所が有る。それが1つで十分な働きをする所だ。デコイが起動すると本体はレーダーでは反応が無くなり、肉眼でしか確認が出来ない。


パシファエは中央ペダルを押し込んで上昇し、[ドゥーポン]の頭めがけてライフルを撃ち込んだ


イオは先程の戦闘の経験のおかげで、いち早く本体に反応出来た。体を回転させながら銃撃を回避する。近付きながらHミサイルを斉射してきたので、パシファエはそれに反応してアクティブデコイを生成させた。


「何も学んで無いのね、呆れたわ」

「そう見えますか」


パシファエは攻撃態勢に入ろうとしていた時、異変に気付いた。Hミサイルが騙されていない、イオがホーミング方法を変えたらしい。


ホーミング形式は光波と電波に分かれる。本来フレアは、光波ホーミング形式に属する赤外線ホーミングの妨害用で、電波ホーミングには意味を成さない。一方、対電波ホーミングの妨害にはチャフを使用する。当たり前だが見ただけではホーミング形式が分かるわけがないので、そう言う場合はチャフ、フレアを同時に展開する。


しかし[ゲッスロー]にはデコイの同時展開が出来ない。理由としては、1つのデコイで全てを済ませようとすると、生成装置に負荷が掛かるからだ。1つしか出せない上に、次の生成までに時間が掛かる。ゲームで言う所のオーバーヒートの様なものだ。


起動予測を済ませ、回避する。ミサイル同士をぶつからせながら、[デューポン]と一定距離を保った。

イオもイオなりに頭を使っている。今回の戦闘は疲れそうだ


距離を保ちながらもイオの行動に注意を払っていた。しかしそれが仇になることになった。

少しだけ機体を遠ざけた瞬間、コックピットの背後に爆発が起こり、振動が伝わった。


「クソ…なんなのまったく…」

「やっと引っかかってくれましたね」


[ゲッスロー]の背部に被弾していた。コックピット部分にも少なからず塗料がかかっている。

次被弾すれば、確実に負ける。一気に劣勢になってしまった


パシファエはライフルの弾薬を散弾に変えると四方八方へ打ち出した。

すると、機体の背後で爆発した物の正体が至る所に現れる。

それは無数の、ボールの様な浮遊物だった


「SFマインね、いつの間にこんな量を?」

「逃げ回ってるときとかに、ね」


パシファエはパッシブデコイを生成させてから再び、散弾を撃ちながら[ドゥーポン]に近づいた。

ステルス機能が付いて分かり難いが、地雷のまきが甘い所が多々有る。接近は案外容易だ。


(それにしてもアレ、どんだけ仕込んでいるのかしら。特に珍しい兵装でも無いけど、システムを圧迫するから多くは持てない筈なのに…)


「まあ〔ヘグベッサ〕の賜物って事ね」


余っていた距離を詰めてからブレードを引き抜き、格闘を仕掛けた。これか、もしくは次の接近で仕留めたい。


「落とす‼︎」

「落ちるかああぁぁぁーーーッ」


[ドゥーポン]の機体も徐々に塗られていく。

折角解いた分身マジックのタネも、こう接近されては意味が無い。頭部とコックピットを守りながら応戦していたら、一瞬反応が大幅に遅れる。パシファエはそれを見逃さなかった。


ブレードを振りかぶった後の運動エネルギーを乗せて機体を回転させ、踵落としを繰り出した。

[ドゥーポン]の防御が一挙に崩れる。


「貰った!」


パシファエはライフルを構え、凹んだ頭に全弾を撃った


✳︎ ✳︎ ✳︎


オペレーターが録画を止めて口を開いた


「大佐、帰投させます」

「[ドゥーポン]の機動力をもっと上げなくてはな」

「機体洗浄の準備させます」

「頼む」

「俺の機体は?」

「終わってますよ」


エウロパは立ち上がり、外に出てケツのポケットから髪を取り出した。指令書だ。


「全く、金星なんてめんどくさい所に送りやがって。まだ地下勤務の方がマシだぞ」


__________________________


「もっと速く動けないのか」

『やってますよ、って第4波来ます』

「チッ」


[パーウィベル]を滑らせながら、ライフルで敵を処理していく。


[デデンコ]は 襲撃を受けていた。

聴いていた敵機の特徴からして【ジャヒューメッド】傘下のMCで間違い無かった。早急に【グランコーサ】領に急ぐしかない。


「クソッこのサイト、ブレブレじゃねーか!感度も悪い!」


敵機の反応が有り、銃口を右に向けようとしたが間に合わない。地面を蹴りつけて後退してブースターを蒸かした。

しかし、機体が再び地面に着いた時には既に敵の機体は腹の辺りを斬り裂かれスクラップと化していた。


「悪い、ルーカス助かった」

「まだ慣れないか?[ヴッジ]ってヤツ」

「スナイパーなんてゲームでもやってなかったんだぞ」

「FPSでは芋ってるんじゃ?」

「バリバリナイファーやってますよ」

「援護してたほうが?」

「いやいいよ、大丈夫だ」


肩部ブースターが熱気を吹いて[ファスペオ]が浮く。

飛び上がった機体を確認した後、再びスナイパーを構え、

[パーウィベル]と[ファスペオ]の援護をする。


[パーウィベル]の左方向にいた敵が頭を貫かれて、勢い良く転がった


「やるなカッシュ」

「どーも」

「グランコーサ領まで後どれくらいだ!」

『およそ20キロ』

「急げ!」

『だからやってますってんでしょうに‼︎‼︎』

「ディンゴ!右斜め後ろ!」


レーダーに接近してくる赤い点があった。[パーウィベル]のブレードのリーチなら届く範囲にいる。

機体を回転させ、運動エネルギーを乗せて斬撃を放つ。


「油断大敵だな」

「次来るぞ」

『最低でも後10分は必要です』

「わかったやってみる」


10分タイマーを起動させる、あくまで目安を付ける役割だが。[デデンコ]本艦を護衛している2小隊は…大丈夫だな。

最早、心配する事すらおこがましい。それにこっちは援護出来る余裕が無い。


「この空飛ぶ円盤みたいなの、どうにかならねぇのか。弾速が合わなくてライフルが役に立たない」

「[ヴッジ]でどうにか出来ないか」

「やってみる」


警告音がコックピットに鳴り響く。

レーダーに反応があった方を向く


「なんだあの機体、俺たちと同じハイスペックか?」

「だろうな、雰囲気が違う」

イオ…じゃ無いな。接近する」


前進する、あの機体は特別だ。量産機では無い機体「ハイスペック」と呼ばれるそれは【ジャヒューメッド】位の大企業ともなれば珍しい物では無いが、潰せる時に潰しておきたい


相手が腕部ミサイルを斉射する。それを蛇行走行で回避した。更に接近してブレードを振り上げた、相手は回避しようとしたが遅過ぎる反応だ。剣先が肩の関節から食い込み、そのまま胸先へ引き裂いた。左腕が地面に落ちる。押し合いには弱いが、一瞬の攻撃力は高い[パーウィベル]の特性が功を奏した。


「左肩落とした。次頭ァ!」


再び[パーウィベル]が接近戦を仕掛ける。

ライフルを脚の関節に向けて撃った。1発1発の弾丸が確実に相手を地獄へと引きずり込んで行く。

敵機が自分の体重を支え切れずに跪く。ライフルを構えたまま[パーウィベル]を制止させた


「聞こえるな。所属を答えろ」

『…』

「聞こえないフリはいい、機体こいつはどこで作られた。ジャヒューメッドか?それ以外か?」

『…』


応答は無い。正直、この機体は持ち帰りたかった。一概にハイスペックと言っても性能や仕組みは多種多様だ。

もし所属が【ジャヒューメッド】であったとすると、どれ位の性能なのか調べておきたい。しかし、そう上手く行かないのは当たり前である。


右肩の背後に気配を感じた。それは2連装の小型ミサイルモジュールだった。


「なにっ」


機体を滑らせ、相手に対して垂直になるようにして回避する。しかし、お目当ての敵機は友軍に引きずられて、撤退していた。追い掛けるのは得策では無い。


タイマーは2分を切っていた。[デデンコ]に合流するには丁度いいタイミングだ。


「2人とも帰るぞ」

「ハイスペックは?」

「逃した。仕方ないだろう」

「大分、減ったな。これでパウドレの姉さんにどやされなくて済む」

「カッシュはナリィさんに気に入られてるからな」

「勘弁してほしいよ」


___________________________


「ハイスペックは貴重なんですから、大切にして下さいよ」

「とか言ってお前のもボロボロじゃねーか」

「[ナフタ]は量産機だからいいんですよ」


ハイスペック[アディクト]のパイロット、ガルドは

シートベルトを外して背もたれを少し傾けてから、注射器を腕に突き刺した


「またそれですか、そろそろやめたらどうです?」

「もうやめられん。流石の〔ヘグベッサ〕でも恐怖心を無くす技術なんてものは作れねーんだ」

「だからって…」

「こいつ無しじゃもう戦えないし生きていけない。ディスプレイが歪んで見えるんだ」


ガルドはコックピットを開けて使い終わった注射器を投げ捨てた。


「…本当に馬鹿な人だ」

アワトは聞こえないように呟いた


* * *


雑音混じりのサイレンと共に次々と機体が格納されていく。

そんな光景の隣でガルドの頰に衝撃が走った。殴られた場所にはしっかりと跡が付いている


「折角の機体をボロボロにしやがって」

「無被弾で帰ってこれるのはゲームの中だけですよ」

「だからって左腕が迷子になった機体が何の役に立つ?木星までの距離を考えても見ろ」

「そんなこと知りませんよ。それより俺が交戦した機体、初めてのヤツでしたよ」

「量産機無しのMCなんて聞いたことが無いが、進路から考えて向こうの援軍だ」

「ジョンソンのところの?」

「ホバーを付けようなんて考えるのはあそこしかいない」


CFIをスポンサーに付けて戦っているMCとしては付いている商会の違いが敵味方を決める。宇宙に上がって以来、CFIの商会とその傘下のMCによって政治が行われてきた。国の概念が消えているのはそれが理由だ。完全消滅とまでは行かないが国もCFIの金銭的協力は必要な為、日に日に影が薄れているのは事実である


___________________________


一方[デデンコ]は目的地についていた。

今日から駐留する〔スピルキャスティ空港〕跡地の格納庫近くに着陸させ、【グランコーサ】のお偉方に挨拶に行ったアマンダを待っている間にメカニックとパイロットは機体の整備を行っていた。そんな時だった


ロビットが向かい合わせになっている格納庫に機体を見つけた。数機の量産機と明らかに風貌が違う機体。ハイスペックだ。


「ロビットさんお疲れ様です」


コーヒーを持ってきたメカニックに「ああ」と素っ気無い返事を返した


「どうしたんです?」

「向こうのハイスペックが気になってな」

「ああ、聞いたところによるとアレのパイロット、女性らしいですよ」

「パウドレみたいだな」

「ですね。じゃあ」


メカニックが踵を返した。

それと同時に走ってくる人物がいる。


「ロビットさん、はぁ…はぁ…」

「落ち着けどうした、オルゲルト」

「戦闘ラインが急激に押し上げられてます。もう目と鼻の先です」


四方八方でサイレンが鳴り出す。速い所はもう小型艇が出発しているかもしれない。


「俺たちは?おいジュディ!」

「今切り上げてるよ!」

「[デデンコ]は?」

「電力供給が追い付かなくてローアルが役に立ちません」

「なら小型艇を借りよう」


ロビットが機体を取りに走り出す。


「これは給料アップしてもらわないと割に合わないな」


諸事情により半年ほど投稿を休みますお( ´_ゝ`)


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