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PC:パッション・パウーネ  作者: 新田 拓海
第2章 リターン・フロム・サターン
7/9

巨人の住まう星

トルヌス宙域:エンケラドゥス周辺、某MC


「艦長、2時の方向に大型敵戦艦を発見!」

「なんだとっ」

「レーダーに反応は無かったのか!」

「ありませんでした、完全に肉眼でしか発見出来ません」

「1番隊から3番隊までの射出、艦隊艦ミサイルの準備急げ」

「クソ、どんな手品だ?」


そして次の瞬間、ブリッジが赤い閃光に包まれ、戦艦は浮遊する鉄くずに成り果てた


___________________________


[デデンコ]はトルヌス宙域に侵入していた。

ココにいる限り絶対なる安全など有り得ない。実際、宙域に入ってから襲われないこと自体不思議だった。

目的地のタイタンを眼前に捉えている中、アマンダは肘掛けの無線機を手に取り、船内通信のスイッチを入れた


『乗員に通達する。現在本艦はトルヌス宙域を航行中、これから予定通りタイタンへ降下する。気を緩めるなよ、今襲われても不思議じゃない。緊張感を持て、以上だ』



タイタンは土星の第6衛星で、火山活動がある山があり、雨が降り、風が吹き、海には波も立っている事から〔もう一つの地球〕や〔土星の月〕とも呼ばれている。故にテラフォーミングが行われていたが、作業班の撤退にともに激戦区になってしまっていた。激戦区を解放すればだいぶマシになるだろという事だ。


その頃ディンゴはハンガーに居た。自分の新機体を眺める事しか特にやることが無いので、支給されたパイロットスーツを着てキャットウォークのフェンスに寄りかかっている。


[パーウィベル]と言うのが新しい機体の名前だった。[パウドラ]は先の戦闘で流石にガタが来てシェルを取り外された後、ハンガーの隅で吊るされている。

紫を基調としたこの機体は[パウドラ]より性能が上がっている事は勿論、最大の特徴はホバー持ちだと言うことにある


他の2人の機体の調子が気になったのと同時にルーカスが降ってきた。


「ディンゴ」


缶コーヒーを投げつけられた。コーヒーのプルタブを開けながら、ルーカスに話しかけた。


「ルーカス、機体の調整はいいのか?」

「俺が出来ることなんてほんの一部だよ。後はジュディに任かしときゃ何とかなるしな」

「やっぱり近距離か?」

「ああ、スリーマンセルで行動する事を前提に配分されてる。他の部隊もそんな感じだ」

「俺とルーカスが近距離でカッシュが中遠距離か…」


多数の敵と交戦することを考えるとスリーマンセルで動くのは正解だ。小隊を組む場合はお互いの信頼が必要不可欠だが、今回は問題無いはずだ。


「それにしても平和だな〜もっとこう、ドカーンバコーン見たいな感じになると思ったんだが…」

「まあ、それならそれでいいんじゃないか?どうせタイタンに突入したら戦闘は避けられないし、出来れば大気圏突入まで何も無ければいいよなぁ」

「重力何て殆ど無いようなもんだろ」

「あるよ、ローアルで作った重力増幅装置が…と言うか聞いてなかったのか」

「何だそれ、ローアルで作れるのか?」

「作れるよ。増幅装置っていってもローアルを地球レベルに重くすればいいだけだし。まぁそれでも遠心力が地球と比べて小さいから多少の誤差は出るけど」


コーヒーを口に運んだ。ブラックコーヒーはあまり好みでは無かったが奢りならば別だ。人の金で食べる焼肉と同じく、人の金で飲むコーヒーは美味い、してやったり。

ドヤ顔でコーヒーを飲んでいる時、激しい振動が立っている鉄板から体に伝わった。思わず手すりに掴まる


「クソッ来たか」

「ルーカス、[ファスペオ]は?」

「ジュディなら終わらしてるに違いない。2番ハンガーに取りに行く」

「分かった」


敵が来た。話をすれば、というヤツである。

無線機を取り出してブリッジに通信をはじめた。


「ブリッジへ、パウドラ隊出るぞ。射出機の準備してくれ」

『今してます、急いで下さい』


キャットウォークを蹴りつけて[パーウィベル]のコックピットへ飛んだ。全機体に共通していえることだがコックピットは女性器の子宮の辺りに設置されている。これは、パイロットへの負荷を最小限に抑える働きがある。が、それもあくまで重力下での話で、今から行う戦闘には関係の無い事だ。

機体に着いてコックピットに入り込んだ


「[パーウィベル]、スタンバイモード解除。ローアル、電力供給共に正常。兵装良し。各部ロック解除」


[パーウィベル]を縛り付けていたロックが脚部から順に外され、最後にうなじを吊り下げていたフックが収納されて機体が自由になる


「解除良し。[パーウィベル]、射出態勢に入る」


数十秒のカウントの後「パーウィベル」が宇宙に射出された

隣の射出機からルーカスの[ファスペオ]が出てくるのを確認した


「カッシュは?」

「まだ調整が終わってないと」

「そうか仕方ない。ブリッジ、敵影は?」

『戦艦底部です、大気圏突入までに片付けてください』

「分かった」

「ルーカス?」

「聞いてた、行くぞ」


[ファスペオ]が加速した、当たり前だがその動きは[パウドラ]より速い。負けじとブースターをふかした


「なんだこれ……!」


[パーウィベル]の扱いはシュミレーションで経験済みだと思っていたが、比べ物にならない速さと爽快感に驚いた。


「本物の手足みたいだ、これならッ!」


[デデンコ]の側面を沿いながら加速し続け、底部に回り込んだ。数機の未確認機が見えたが減速何てものは要らない。

全部で6機、スリーマンセルを組んでいた。1人3機ずつ落とす計算になる。


「ルーカス、いいな?」

「おうよ!」


二手に別れて接近した。一斉射撃をしてくるが、集弾性能が高くないうえ、高速移動をすれば射撃が追いついていない。

あっという間に接近し適当な機体の頭を掴んで更に加速した

持ってきた機体の股にブレードを突き刺し、盾にして他の2機にタックルを仕掛ける。1機を停止させ、こぼしたもう1機をライフルで処理した。

ルーカスも既に敵を片付けていた


「ルーカス、無事か」

「大丈夫だ」


言葉通り目立った外傷は無い


「それにしても奴等なんだったんだ?」

「MCなんだろうが母艦が見つからんな」

「兵装もボロボロだった、機動力だって低すぎだ」

「まあ、全滅したから考えても仕方ないな」

『2人とも、無事ですか?』


ブリッジからの通信が入った。データ管理及び命令伝達係のオルゲルトだ。アマンダのコーヒーを入れているのは彼だが、それはアマンダだけに留まらずブリッジ全員分を入れているらしい。今度作ってもらおう、絶対。


「ああ、大丈夫だ」

『そうですか、大気圏に入ります。帰投してください』

「了解。パウドラ隊帰投する」


2人は[デデンコ]に戻った。あの加速性能とは裏腹に着艦はスムーズに行える。これもジョンソン商会の財力があるからだ。コックピットから出てヘルメットを外し、パイロットスーツの首元のファスナーを取った。

サイレンが鳴り響く、降下が始まった。

ハッチが閉められ、窓はシャッターで封鎖し、穴という穴を埋めた後、[デデンコ]を熱が襲った。


『大気圏突入完了まで残り3、2、1…突入完了。通常モードへ移行、目的地へ向かいます』


シャッターが空いたのを見ると、[パーウィベル]から離れ外を見た。そこはまさに地球と言える様な場所だった。


「ここがタイタン…トルヌスの激戦区…!」

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