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PC:パッション・パウーネ  作者: 新田 拓海
第1章 ア・スモール・ウォー
4/9

夢への1歩を

___________________________


その男は地球で生まれた。思い出と言えるものは少ないが、妻との新婚旅行は老いた今でも鮮明に覚えていた。

その男は杖で自分の老体を支えながら自分の会社の最上階から地球を見下ろしていた。その時、社長室のドアが開いた。


「社長、娘さんから連絡が来てます」

「社長はやめろ、仕事が出来なくなったやつはヒラ以下だ」

「社長のネガティブ思考は聞き飽きました」

「で、どうします?」

「まぁ会ってやるが協力するかどうかはそっちの話次第だとでも言っておけ」

「分かりました」


秘書が部屋を出た。男は再び地球を見下ろした


「もう1回…いや」


男は動かなくなった利き手を叩いた


___________________________


大気圏を脱出した[デデンコ]のハンガーでは[パウドラ]の固定が行われていた。[デデンコ]のハンガーは機体のうなじを吊り下げ、各部を固定する。機体自体を自立されるタイプではなかったためパウドラ1の収容は特に困らなかった。が、メカニックの愚痴は絶えなかった。


「アンタねぇ、どうやったらあんなに関節クタクタに出来んのよ?そもそも修繕費が馬鹿にならないの知ってるでしょ!?」

「うるさいな、これでも抑えた方だ」

「抑えた方だって…」


メカニックのジュディの言葉はスピーカーの声に遮られた

声の主はアマンダだった


『全員手を止めて聞いてくれ』


メカニックが行き交うハンガーが静かになった。ここまで音がないハンガーは初めてだった


『みんなも知ってる通り今日の作業で[パウドラ]隊がMCの基地に入った。そこで警備用の機体と応戦、撃退した。ようはMCに喧嘩を売ったことになる。[パウドラ]隊がすべて悪い訳ではないが然るべき報いは受けさせる。戦闘になると決まった訳ではないが降りたいやつは降りてくれ、次の作業からはやりたくない奴は参加しなくていい、以上だ』


放送が終わっても沈黙が続いた。迷っているのだ、誰もが。

死にたくはないが、食いぶちもない。命をすり減らして飯を食うか、裏路地の生ゴミをあさるかの文字通り究極の選択だった。


この空気に耐えられずに立ち上がる


「呼ばれたから、じゃあな」

「あ!ちょっとまて!」


ディンゴは艦長室に向かった。説教なんて久しぶりだ、いや説教で済むんだったらいくらでも受けてやるがそこまで単純ではない。外を見たらコロニー内へのアプローチが行われていた。エレベーターのボタンを押してため息を付いた


「ディンゴー」

「カッシュ」


カッシュがエレベーターに乗ってきた


「さぁさぁ腹パンかな?解雇かな?」

「縁起でもないこと言うなよ」

「運が良ければ腹パンで済むかもね」

「永遠にサンドバッグ係は御免だ」


階数を示す液晶を見ながら言った。3階に着いてエレベーターから出る。角を曲がり艦長室に入った、中でルーカスが待っていた。


「ディンゴとカッシュ到着しました」

「よう、ルーカス」

「ああ」


上座に座っていたアマンダが話し始めた


「ここに呼び出した理由は分かってるな?」

「…はい、責任を取れ、という事ですよね」

「そうだ」

「何をすれば?」


アマンダは足を組んだ。少し間を置いてから口を開いた


「ジョンソン商会は知ってるな?」

「大手金融機関…」

「そうだ、コロニー内の全機関に金を貸しているCFIの1角だ、発言力も高い」

「私達は全くと言っていいほど金がない、から借りに行く」

「それで俺達は何を?」

「私についてきてくれ、交渉は私が行うが論破された時はお前達が助けろ」

「それだけじゃない、お前達はこれから主戦力になってもらう。商会の傘下にでも入れれば力強いな」

「ルーカス、お前はここに残れ。ディンゴとカッシュは着いてこい」

「交渉が決裂したら?」

「その時はその時だ。まぁ決裂=詰みだけどな」

「入港が終わったら直ぐに商会に行く。それまでに準備しておけ」

「「「了解」」」

「じゃ解散だ」


3人は部屋を出た。入港完了まで30分くらいはかかるだろう

ディンゴは自室に戻って睡眠をとった


次に目を覚ましたのは車の中だった


「あれ?」

「おっ、起きたか。起こそうと思ってたし丁度いいな」


隣のカッシュが話しかけてくる。カッシュの言い方から商会の近くまで来ているのが分かった。完全に寝過ごした


「よし、着いたぞ」


助手席にアマンダが座っていた。背もたれを元の角度に戻し

ドアを開けた。次の瞬間、高層ビルが目に入った。驚くべきはその高さだ、50メートルは越しているだろう


「懐かしいな」


アマンダがつぶやく。数秒感傷に浸ったあと入口に向けて歩き出した。それに着いていき受付を済ませエレベーターに乗る。随分長い時間昇っていた、このビルの高さが商会の力を表しているように思えた。目的の階数に着き外に出る。そこは社長室で1人の男が待っていた。商会長のジョンソンだ


「お久しぶりです、父上」

「元気そうだな」

「おかげさまで」

「じゃあ話を聞こうか」

「要点を言うとMCに喧嘩を売ってしまったので金を貸していただきたい」

「…」

「勿論借りっぱなしということは無い、そちらが応じた額の利子を乗せます」

「…お前らとは話が出来なさそうだな」

「!?何故ですか!」

「他の奴らと言うことが同じだ。金がないから貸せ、利子は乗せる。そんな奴のエゴにこちらが応じる必要が?」

「…」


アマンダは何も言い返せなかった、彼女の額から汗が流れる沈黙が続き、次に口を開いたのはカッシュだった


「俺達には夢が有ります。達成には程遠いですが、地球復興っていうデカイ夢が。学校の図書室でずっと動物の本を読んでました。ここには犬とネコしかいませんが、地球は違う」

「だがお前らだけでは無理だ」

「ええそうです」


ジョンソンは敢えてきつい言葉を浴びせたが、カッシュは怯まない


「だからこれはチャンスなんです。身勝手かもしれません

がこの緊迫した状況は俺の、俺達にとっての二度と来ない好機なんです!」

「だけどその前に仲間を守らなきゃいけない」

「だけどそれもエゴだ」

「違います。そこの後ろにある写真、それって地球で撮った写真ですよね」

「そうだが」

「そしてさっきから窓の外ばかり見ている。あの藍色に輝く星を」

「俺達を商会の傘下に入れてください、後悔はさせません。必ず地球に連れていきます。俺達に掛けてくださいお願いします!」


カッシュは頭を下げた


「…ダメだ」

「何故!」

「直ぐに金は用意出来ない。2、3日待て」


3人は歓喜の声をあげた。


「ありがとうございます!」

「それじゃあまた後日…」

「待て」

「ローアル・シェルって知ってるか?」

「聞いたことはあります」


アマンダが答えた。流石艦長と言った所か、世間には詳しい


「そいつを前金としてくれてやる」

「ホントですか!」

「先行投資だよ、その代わり失望させるな」

「ありがとう父さん」

「もう送ってある、さったさと帰れ」

「ありがとう」

「フンッ」

「失礼します」


3人がドアから部屋を出た。秘書が声を掛けた


「シェルを上げるなんてケチの会長らしく無いですね」

「あの小僧良くやる。俺を言いくるめるなんて早々出来ん」


ジョンソンは再び地球を見下ろし笑った


その頃、エウロパ達が基地を出発していた

ツイッターで更新報告をしてるんでフォローオナシャス

@takumi_nida


次回から多分戦闘シーン多くなります。多分

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