大地の上で
空に浮く巨大艦体[デデンコ]から数機の採掘機が飛び降りた。
「おい、カッシュ今日のノルマは?いくつだ?」
「およそ17cm³、大丈夫しにゃしねぇよ」
「さっさと帰って一服してぇな」
3つの機体が空気抵抗を最大に上げるバックパックユニット[アンブレラ]を展開して降下していく。
事の起源はまだアメリカと呼ばれた国とソ連と呼ばれた国が存在していた頃の話だった。西暦1962年10月16日、ソ連によるキューバでのミサイル基地建設計画が発覚、当時のアメリカ大統領ケネディはキューバを海域封鎖、ソ連はキューバへの連絡手段を絶たれ一触即発の膠着状態が続いた。先手を打ったのはアメリカだった、ケネディはソ連にそちらの回答次第ではキューバへの空爆を宣言、後に引けないソ連はスターリングラードから西ベルリンに奇襲作戦を実行し、第三次世界大戦の火蓋が切って落とされた。そこでソ連は核兵器に変わる、ローアル鉱石を使った。帝国主義の時代から密かに研究されてきたローアルは電気信号を送ると作用反作用の法則で作用で熱を放出、反作用でエネルギーを蓄積する。また逆も叱りだ。ソ連はアメリカにローアルを利用した弾道ミサイルを射出、だが被害は想像を遥かに超えていた。ローアルの熱量はヒロシマの原爆の約5倍を越した、首都を狙えば国は呆気なく滅びるだろう。そして予想が現実になった。アメリカは壊滅またローアルの熱で大気中の酸素の激減、人類は宇宙移民を余儀なくされた。
激しい轟音とともに3機の採掘機[パウドラ]が地表に着陸した、両手に掘削ドリルを搭載しショルダーパックユニットに延長マニピュレーターを装備した巨人たちは目標地点への移動を開始していた。目的は旧アフリカ大陸に多く埋蔵されるローアル鉱石の採掘だ。皮肉なことに宇宙移民のきっかけになったものが現在では生活必需品になっているのである。
「[テデンコ]へ、こちらパウドラ1。目的地点に到達」
「こちら[デデンコ]、パウドラ1了解。採掘を開始しろ」
[デデンコ]の艦長アマンダが応答した
「へいアマンダちゃん、帰ったら1杯どお?」
「[デデンコ]からパウドラ1へ、ディンゴ、パウドラ2を殴れ」
「やめて!分かった悪かった!」
「はぁ……全機パウドラへ、繰り返す。採掘を開始しろ」
「パウドラ1了解」
「パウドラ2了解」
「パウドラ3了解」
「よし!やるか!」
パウドラとの通信が切れてアマンダは背もたれに寄りかかった。そして飲みかけのコーヒーを手に取り飲み干した。
「艦長、[パウドレ]隊の回収終わりました」
「わかった、[パウドロ]隊は?」
「予定通り現在ローアルの回収中です」
「今日は夕食までには帰れそうですよ」
「……そうかな…」
「艦長?なにか?」
「あの戦争でアメリカが、ソ連は宇宙に上がってからの革命で滅んだ。そこそこの時間も流れた」
「それが?」
「何処かの企業が漁夫の利を得るのに持ってこいなコンディションじゃないか?」
「考え過ぎでは?」
「先のことを読むのが私の仕事だ」
人類が宇宙に上がってから国という概念は半ば消滅しかけていて、スペースコロニー事に人種が分かれて住んでいた。宇宙で生活する上で化学工業の発達は達成しなければいけない問題だった。そこでコロニー事に工業専門の会社を設立した。それらはPCと呼ばれ、一部の会社が地球の資源を鹵獲しようとして軍事力に手を染めていくとそれは会社同士の衝突を生んだ。軍事系専門の会社はMCと呼ばれMC同士の中は一部を除いて犬猿の仲となった
その頃[パウドラ]隊は地下に入っていた
「ディンゴ、カッシュ」
「どうした?」
「クソでも漏れたか」
「初のアンブレラで漏らしたのはお前だ」
「そんなことより2人ともこれを見てくれ」
ルーカスから2機にデータが送られた。
全員がマップに反映するとルーカスが話し始めた
「この先の望遠マップだ」
「これはハンガーか?」
「それだけじゃないなトラック用の道路に、外に通じるでかい煙突が付いた建物」
「ここいらは研究所って事か?」
「ああ多分な、それもMCのだ」
「それを地下に作ってる。つまりここは…」
「どっかの秘密基地って所か?」
その時、甲高いサイレンが鳴り響いた。
パウドラの存在に気づかれた。
「やばい!やばいぞ2人とも!逃げるか?投降するか?でもそ…」
カッシュは同様を隠しきれなかった。ディンゴが必死に抑えようとしたが、余裕が無くなった。敵機が来てしまった。とにかく今は最善を尽くさねば。ディンゴが口を開いた。
「カッシュ![デデンコ]に通信できるか?」
「無理だ、深すぎる。送ってる途中で切れちまう」
「やるしかないか…」
「総員戦闘態勢!」
「待て!やる気か?」
「そうだ!掘削機と戦闘機だぞ」
「だけど今から背中向けて逃げても追いつかれる、戦いながら逃げるぞ。基本的に戦法は『待ち』だ」
「……分かった」
全パウドラが移動を開始した。目指すは地表だ、
「ハハッ、ドリルと細い腕で生き残れるかね」
「ルーカス、お前は常に周辺地理に気を配れ」
「カッシュ、お前は通信を続けろ」
「俺は出来るだけ前線に出る」
「大丈夫か?」
「戦闘講習に出たのは俺だけだ」
「悪いな」
「帰ったら奢れよ?」
「だったら無事帰れるように、ちゃんとカバーしろよ」
「はいよ」