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第21話:湿地に夜は更けていき

本日、二話目の投稿となります。


※前の話は閑話ですが、一度目を通して頂ければ嬉しく思います。

※万一この話から読んでも、話は繋がります。

 オレは今日、十五歳にして初めてレベルが上がった。

 これは冒険者や戦士としては、早いか遅いかで言えば、極めて遅い方だと言う。

 十歳から傭兵として働いていた(!)フィリシスのレベルは、既に五十を越えていると言うし、エルフリーデも最初は兄や護衛と一緒に、比較的難易度の低い迷宮に潜り、レベルを上げたりしていたらしく、現在はレベル二十ほどだと言う。

 一般的には、将来的に戦闘に関わる仕事に就く者は、十歳で魔法を覚えるのと同時に、大人と一緒に狩人の真似事などをして、一つ二つと地道にレベルを上げていくのが普通らしい。

 武器の扱いが上手い者は、もう少し早い場合さえあると言う。

 貴族や富裕層の間では、幼少のうちからベテランの冒険者と共に迷宮に潜り、本人は何もせずともレベルが上がっていることすら有るのだとか。


 これは、レベル上昇の恩恵が一般に広く知られているためで、生命力、体力はもちろんのこと、魔力、知力や精神力などを底上げしておくと、その後に鍛練や勉強をする時に有利になるのみならず日常生活を送る上でもメリットが大きいからだ。

 例えば、レベルを上げている者と、上げていない者が、同じ鍛練、ここでは持久走をしたとしよう。

 よほど才能に差がない限りは、レベルを上げておいた者がまだバテていないのに、上げていなかった者はバテてしまう、ということが考えられる。

 それならば、誰もがレベルを上げてから鍛練しようとするのは、当たり前のことだ。

 同じ年齢でも、多くの鍛練時間が取れるから、成果も上がりやすい。

 ところが大半の者達は、単に楽に鍛練を行うためにレベルを上げたり、そもそも鍛練をしなくても、そこそこの能力を得るためにこそ、レベルを上げているのだ。


 結果として、レベルは高いのに、それに技量が伴わないまま、成人を迎えてしまっている者が非常に多い。

 もちろん、きちんと鍛練をしている者は、そういうこともないのだが、オレやサナさんのように、レベルよりも技量が先行している例は極めて少ない。


 オレやサナさんが冒険者になるまで、レベルが一だったのは、実はジャクスイさんの提案によるものだ。

 ジャクスイさんは、帝国から遥か西に浮かぶ『恵まれた島』の出身で、そこでは十二歳で『元服の儀』が行われるまでは、戦争にも出さなければ、狩りなどにも決して同行を許さないのだという。

 なぜなら、初めてレベルが上がるまでに積んだ鍛練の量で、その者の『格』が決まると、昔から信じられているためらしい。

 事実、ジャクスイさんは強い。

 大陸では見られない『隠密』と言うジョブを持ち、短剣の技の冴えは帝国でも随一の腕前だ。

 大変な女好きで、たまに失敗をやらかしているらしいが、短剣以外にもダンジョンの探索での罠発見、解除、聞き耳、忍び足、解錠、索敵といった斥候役や、戦闘では、投擲、体術と何でもこなす。

 まさに冒険者らしい冒険者と言える逸材だ。

 ジャクスイさんの生まれた『恵まれた島』は、金・銀・銅などの鉱物資源が豊富なだけでは無く、気候風土にも恵まれているため農業には最適、海川山の幸も有り余るほどで、他国からすれば垂涎の的で有ると言う。

 当然、昔から大陸諸国による侵攻が行われているが、未だにどの国も征服を成し遂げていない。

 これは、島の沿岸が浅瀬続きで大船による進軍が難しいこと、風の強い海域が多く、小型・中型の船では転覆の危険性が高いこと、そして何よりも、恵まれた島の将兵の実力が、大陸より数段高いことが、最たる理由だと言う。


 この将兵が精強だというのは、先ほど述べた通り、レベル上げをしないまま、技量や基礎能力を高めて下地を作る習慣が、完全に国中に根付いているからなのだ。

 この世界では、レベルが上がる時に上昇する能力は、上がる前の能力が反映される。

 例えば、初期体力が十八の者がレベルアップすると、二十一になり、次は二十四。その次は何故か二十八になる。

 これが、初期体力が十二の者だと、初回レベルアップで十四、次は十六、その次も十八。そして、その次のレベルで二十一になる。

 お気づきだろうか?

 元の数値を六で割った数値分だけ、レベルアップで能力上昇する仕組みなのだ。

 これが、エルフは知力・魔力、ドワーフは器用・体力、地這族(ミニラウ)は敏捷、獣人族は筋力に優れ、人族は平均的な能力の者が多くなる『仕掛け』となっているのだ。

 実はジャクスイさんの話を聞いて、ここまで理論究明したのはオレ、では無い。

 ナシュトさんだ。

 ナシュトさんがサナラさんを育てる時に、レベル上げをさせず『恵まれた島』式で十二歳まで鍛練中心の生活をさせて、サナラさんの希望を聞き入れて十二歳の時に冒険者デビューさせたのは、こうした理論が分かっていたからだというのだ。

 オレの父も十二歳までは……と思っていたが、思いの(ほか)、レベル上げ無しでオレが長足(ちょうそく)の進歩を見せたものだから、何だかんだで十五歳まで引っ張ってみた、らしい。


 何となくで引っ張らないで欲しいものだが、そのおかげで、オレの初レベルアップは、恐ろしい成果を上げたのだから、まぁ結果オーライと言うべきだろうか?


 ここで、レベル一の時と、レベル二になった現在のオレの能力を比較して欲しい。



『名称:カインズ』

『種族:ハーフエルフ』

『年齢:15歳』

『職業:冒険者(Gランク)』

『LV1』


《能力》

生命力:531

魔力:7829

筋力:353

体力:581

知力:1892

敏捷:622

器用:718

精神:935

統率:160


これがレベル一の時。


以下はレベル二の現在。


『名称:カインズ』

『種族:ハーフエルフ』

『年齢:15歳』

『職業:冒険者(Gランク)』

『LV2』


《能力》

生命力:620

魔力:9135

筋力:413

体力:678

知力:2207

敏捷:727

器用:838

精神:1095

統率:188



 これは恐ろしい数値になっていくこと、請け合いであろう。


 微妙に試算数値より伸びている能力が有るのは、恐らく『解析者』の補正効果ではないだろうか?


 そうそう、解析者なのだが、新しい派生スキルが解放されていた。

 恐らくアシッドモールドやジャイアントリーチとの戦闘、つまりモンスター撃破などが条件だったのだろう。


 新しく『存在強奪:初』『経験値補正:小』『戦意向上:小』『戦意反映:初』『弱肉強食:G』と言う五つが解放、追加されいた。


 また無理やり一文で説明しちゃいます。

 敵を倒すと能力値やスキル熟練度の一部を強奪出来、経験値も普通より多く貰え、戦闘中は戦意が向上し、それが能力成長や戦闘能力全般に反映され、おまけに倒した敵が猛毒持ちでも喰えるようになっていて、しかも喰うと、能力やスキル熟練度が上がるらしい。


 ……これ一体、どこの主人公(バケモノ)の話だよ?

 オレの『解析者』が、ここまで壊れ性能なチートスキルだったとは。

 まぁ、エルフリーデの『獣魔調教』や、フィリシスの『転移(短距離)』も大概なのだが……。


 フィリシスに簡単な説明をし『貪婪(どんらん)なる背嚢』の中に入れておいたアシッドモールドの黒焼きと、ジャイアントリーチの討伐証明部位になる『外鰓(がいさい・そとえら)』を出して貰い、ジャイアントリーチの鰓は生活魔法で火を通して、思いきって食べる。

 不味い…かと思ったが、アシッドモールドの黒焼きは、少し焦げた煎餅。

 ジャイアントリーチの鰓は、貝柱みたいな味に感じられた。

 フィリシスは顔を背けていたが、エルフリーデが羨ましそうにしていたので、鰓を分けてやると……しばし硬直。

 後ろを向いて吐き出していた。

 生臭くて食えたものでは無いらしい。

 まぁオレにしても、一度味わったら、後は好んで食べたい物でもない。


 急拵えだが、冒険者ギルドが用意した宿兼冒険者用の酒場に落ち着くと、酒場で初の冒険の成功に祝杯をあげ、明日に備えて眠りにつく。

 ……サナに会いたいな。



 翌朝、微妙に伸びた能力や熟練度と引き換えに、オレは酷い下痢をしていた。

 アシッドモールドの黒焼きは、単独で服用すると下剤になるのを、その時のオレは知らなかったのだ。

お読み頂き誠にありがとうございます。


明日も一話以上投稿予定です。


ご意見、ご感想、誤字、脱字、読みにくい点など御座いましたら、ご遠慮なく、お寄せ下さい。

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