俺0歳 領主の息子になれました!
初めての評価をして頂き、有難う御座います(  ̄ー ̄)*
本当はこの第二話の執筆は、もっと後に出来上がると思ってたんですけど……やる気が一気に燃え上がって書いちゃった……('∇')
目が覚めた時、正直言って生きた心地がしなかった。
泣いたね、そりゃあもう盛大に。
精神年齢32歳にして、たぶん人生初の大泣きをしたもんだ。
何故かって?
兎に角、全身が物凄くいてぇ!
というか、あれだね。
超々高度からの落下の衝撃による影響だろうね。
たぶん、本当に運良く川に落ちたんだと思うが、よく生きてるよな俺。
赤ん坊の生命力って、実は意外と半端ない?
それはそれとして、だ。
なんか、このおっさん臭い。
というか誰だよ、このおっさん。
見た目40歳ぐらいのおっさんに抱かれて、嬉しくなんてないんだからね!
……。
うーん。
俺、はっちゃけてるな。
あっちの世界じゃ決してこんな性格じゃなかった気がしたんだがなぁ。
やっぱ異世界っぽい所に来れて、すんごく嬉しいのかな?。
それにこれって、やっぱり転生ってやつだよなぁ。
なー。
なぁ。
……
ま、それはそれ。
俺は今、赤ん坊の姿をしてるのは分かった。
ん。
だから、泣くのは当然の仕様だろう。
全身が物凄くいてぇから、兎に角泣きまくる。
抱いてるおっさんが臭いから、兎に角泣きまくる。
よく分からんけど、兎に角泣きまくる。
赤ん坊だから、気兼ねなく泣きまくれた。
泣けたんだが……。
泣きすぎて、疲れきって気を失ってしまいました。
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「ふむ……泣き疲れて寝てしまったか」
急遽、川の|辺【ほとり】に築いた野営地。
人里離れた川沿いに、人の姿などある訳がないにも関わらず、周囲から隠すように張られた幕の内側。
そこで、リゼルグは己の手の中にある赤子の首筋を誰にも分からぬ様に締め付けて、五月蠅く泣き続けた赤子の意識を半ば強制的に眠りへと誘った。
下手をすれば命に関わるのだが、まだいつでも捨てられる赤子に対してリゼルグは一切の容赦も躊躇いもない。
「今の内に移動致しますか?」
「そうだな。予定通り、人気のない道を通る事としよう。調査は済んでおるのか?」
「滞りなく」
既に覚悟を決めた兵隊長に迷いはない。
主であるリゼルグが赤子の意識を無理矢理奪っただろう事も、何となく察していた。
「夜をおしての移動となりますが、本当に宜しいのですか?」
「構わん。隠密行軍の訓練にもなって丁度良いだろう」
「しかし、運悪く魔者に出会ってしまう可能性もあります。その際には如何致しましょうか?」
「狩ればよい。御前達の腰に下げている剣は、ただの飾りではないのだろう?」
「……分かりました。その様に兵達には伝えます」
その兵隊長の懸念は、結果的には杞憂に終わった。
しかし突然の無理な行軍だったため、明け方早くに屋敷へと着いた時には、軍の負傷者は2名に増えてしまっていた。
うち、一名は夜の行軍をする前に既に重傷となっていたので、すぐに軍医を叩き起こし治療を受けさせる。
が、既に時遅く。
結局、その者は二度と剣を振れない後遺症を身体に残し、軍を退く事となった。
そんな些細な事には目もくれず、リゼルグは屋敷に到着すると、まずは赤子を湯船につけて染みついた臭いを消して、身を清める。
その際、赤子が意識を取り戻したが、煩わしいのでまた締め落とした。
一緒にいたメイドの一人が思わず悲鳴をあげそうになったが、睨みをきかせて黙らせる。
その後、亡くなってしまった実の我が子が着ていた服を着せ、自らも軍服から屋敷の普段着へと着替えてから食事をとった。
「ユディアの様子はどうだ?」
朝にしては豪勢な食事をとりながら、リゼルグは側に控えていた老年の執事に妻の様子を聞いた。
予め予期しやすい質問であったため、執事は用意していた言葉を言う。
「変わりなく、まだ伏せっております。未だ食事も喉を通らぬ御様子。そろそろ無理にでも口に詰め込まねば命に関わるでしょうな」
「それ程か……」
予期していた言葉ではあったため、リゼルグは驚かない。
若くして子を成し、そしてすぐに子を亡くした妻のユディアの落ち込み様は、想像以上に酷いものだった。
なまじ夫であるリゼルグという個人に酷く依存して生きてきたため、新たな依存対象である腹を痛めてまで産んだ我が子が亡くなってしまった事に、己の半身以上のものを失ったショックを受けたのだろうとリゼルグは推測する。
我が子でもあった愛するユディアのその憔悴ぶりに、流石のリゼルグも平静ではいられなかった。
「やはり、強引にでも代わりの子を用意して正解だったか……」
「本当に宜しいので?」
「仕方あるまい。既に誕生祭すらしてしまったのだ。これで息子が死んでしまったなどと公表しては、折角の好景気もまたすぐに落ちこんでしまおう。何より、ユディアがもうもたぬであろう。荒療治ではあるがメリットは非常に多い」
「奥様は納得しますでしょうか?」
「……少なくとも、気は紛れよう」
現在、リゼルグの治めるベルタユス領は、男児であるイグニスの誕生によりかつてない賑わいをみせていた。
複数の隣国と接している土地のため、ベルタユス領は何かと戦が多く突然の出費や人手を必要とする事も多い。
農地に適してはいても戦ですぐに荒廃し、戦を求めて傭兵の類も集まってくるため治安も安定せず、商人達の足も鈍い。
それが、2年前の北の地への遠征を機に、暫く戦のない安定した時期が続き、そこに領主の息子誕生というニュースと共に盛大な祭りを催した事で一気に景気が爆発した。
税収は鰻登り、人の流れも活発になり、長年頭を悩ませていた幾つもの案件が次々と解決の糸口を見つけはじめている今のこの状況を、領主のリゼルグだけでなく領民の誰もが逃す様な真似を望んでいない。
それは、個人的な感傷である妻ユディアの心情を棚上げにしてでも、一地方の領主としても優先すべき内容だった。
「さて、まずはユディアの件を片付けるとしようか。新しい息子、イグニスは起きているか?」
「まだ目を覚ましておりません」
「なら叩き起こせ」
「……はい。今すぐに」
同じく側に控えていたこの屋敷のメイド長は一瞬躊躇った後、深く礼をしてから早歩きに部屋を退室していく。
執事の方も一度退室し、早朝に帰還した屋敷の主のために叩き起こされていたメイド達へと手早く指示を出し、手筈を整える。
本来の業務時間ではないため暇を持て余していたメイド達は、その命令を受けて一斉に散っていく。
入れ替わりにメイド長が赤子を手に部屋の前へと戻り、その足を止めた。
そして躊躇いがちに老年の執事に赤子を見せた。
「目を覚ましません……」
執事が目を細め、死んだ様に眠る赤子を観察する。
しかしすぐに何か驚くべき事に思い至ったのか、その顔が険しい表情に変わった。
その豹変ぶりにメイド長が息をのむ。
「まさか、もう……?」
最悪の状況を思い浮かべたメイド長は、その瞳に涙を浮かべ口に手を当てた。
「……いえ。狸寝入りしていますな」
「……は?」
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(げ、ばれた……)
イグニスこと眞藤雅宗はあせった。
何しろ、強制的に三度も気絶させられたのである。
四度目五度目がないなどという楽観的な思考ができる筈もない。
(やべぇ! 今度こそ死んでしまう! どうすれば……)
自身が赤ん坊だという事を自覚しているため、ちょっとした事でもサクッと死んでしまう可能性を雅宗はどう考えても否定出来なかった。
むしろ生きているのが不思議というぐらいに、運が良かったとしか思えなかった。
「まぁ、私の気のせいですかな? よくお休みになられている様です」
「び、吃驚させないでください!」
「失礼。冗談のつもりだったのですが」
(じょ、冗談だったのか。助かった……)
「とりあえず、腕の一本でも折れば起きますかな」
(!?)
「冗談にも程があります! 間違ってもその様な事はしないでくださいね」
真顔でニヤッと笑う執事に、メイド長は睨み付けてそれ以上の暴言を黙らせた。
「仕方がありませんね。このままリゼルグ様に会わせましょう。後は……天に祈るのみですな」
「……そうですね。イグニス様、どうか死なないでくださいね」
雅宗は瞬時に自分が今どういう状況にあるのかを察した。
このまま狸寝入りをし続ければ、間違いなくあのおっさんは赤子である俺に過酷すぎる責め苦を躊躇わずしてくるだろうと推測する。
また、イグニスという名が自分の名前だという事と、自分を三度も締め落とした男の名がリゼルグだという事も理解した。
「……あら、起きましたね」
あまり信じられる様な事ではないが、狸寝入りが冗談ではないと思っていた執事は別に驚かない。
メイド長もあまり驚かなかった。
何しろ、目の前でその赤子が締め落とされる現場に二人とも出くわしていたのだ。
例え赤子だとしても、身の危険を感じてそういう事ぐらいはするかもしれない、と。
そこにタイミングよくユディアの様子を見にいってたメイドの一人が姿を表し、その様子を二人に伝える。
予想していた答えではあったが、さしもの二人もメイドの報告内容に僅かに顔を曇らせた。
「リゼルグ様。ユディア様、イグニス様ともに目をお覚ましになられました」
「そうか」
早朝にも関わらず高価な酒が並んだ棚から一本を取りだし杯に注いで口に運んでいたリゼルグが、その杯を一気に空にする。
「寝所の用意をしておけ。では、ついてこい」
赤子を抱いているメイド長のみをつれて、リゼルグは妻の部屋へと向かった。
その間、赤子はうんともすんとも言わず、ただぐっと何かを堪えて見ているだけ。
(めっちゃ痛ぇけど、絶対に泣くな……泣いたらこのおっさんに殺される……)
「入るぞ」
そんな雅宗の心配をよそに、リゼルグは妻のいる部屋へと入っていった。
部屋に入ると、すぐに室内に控えていたメイドが頭を下げる。
構わず、リゼルグはベッドの上で外を眺めている妻へと近寄る。
「ユディア」
「……リゼルグ様」
すぐ側まで近付いてようやく顔を向けたユディアの姿に、リゼルグが一瞬息をのむ。
その顔は見るからにやつれており、視察に出る前とは比べ様もないほど見るにたえなかった。
ユディアは、子供を失って以来、ほとんど一睡もしていない。
毎晩の様に泣き続け、食事もほとんどとらず、もはや体力も限界に近いためベッドから出る事すらままならないほど危険な状態にあった。
しかも本人にその自覚もない。
リゼルグが視察に出てからというもの、誰にも会いたくないという本人の強い要望もあって屋敷の者達はあまり近付かないでいたのだが、執事とメイド長も先程メイドの報告を受けるまでその危険度を正確には把握していなかった。
執事は最初の報告でリゼルグに「命に関わる」と言ったが、それは主に対する忠言の意味を込めたものであり、決して事実として伝えた訳ではない。
メイド長はユディアの現状を実際に見て、自分達が犯した失態の重さに解雇以上の罪を覚悟した。
ユディアの実状を見て、リゼルグも覚悟を決める。
「まさか、イグニスの死を御前がそこまで思い詰めるとは思ってもみなかった。すまない……」
リゼルグの謝罪の言葉に、ユディアの表情は益々悲しみに染まる。
「何故、リゼルグ様は産まれたばかりのイグニスを外へと連れ出したのですか?」
「……我が血族のしきたりなのだ。許せ」
「いいえ、許しません」
ユディアの分を弁えぬ言葉に、リゼルグのこめかみがピクッと動く。
しかし今はぐっと堪えてユディアの暴言を聞き流す。
「イグニスを……返してください」
不可能な事を望むユディアの言葉に、後ろで控えていたメイド長もやるせない思いを募らせる。
しかし次の瞬間、リゼルグの発した言葉に、その思いは一気に霧散した。
「ああ、返すよ」
「……え?」
「本当に、すまなかった。手を滑らせてイグニスを谷底に落とし、死なせてしまった等という酷い嘘を吐いて悪かった」
言うが早いか、それを証明するかの様にリゼルグはメイド長から赤子をひったくってユディアに見せる。
「あまつさえ、御前がイグニスの死を非常の悲しんでいるのを知っていながら、イグニスを視察に連れていってしまった事も謝る。すまない」
「……え? え?」
突然の夫の告白に、ユディアの頭が真っ白になる。
そこにたたみ掛ける様に、リゼルグは手に持った赤子をユディアに押しつけた。
「さぁ、受け取れ。御前が腹を痛めて産んだ、愛すべき我が息子イグニスだ」
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その一部始終を聞いていて、もと雅宗ことイグニスである俺はこう思った。
(このおっさん、マジやべぇ……)
何がやばいかというと、そりゃまぁ、こんな若い奥さんを娶って孕ませてる中年親父のリア充ぶりだろう。
どう見ても金持ちの屋敷に住んでいて、抱えているメイドの数もたくさん。
それでいてやりたい放題(主に赤ん坊の俺を躊躇なく締め落とした暴挙とか)なのだから始末に悪い。
しかし……。
その息子として多大な恩恵を受けれるのは、物凄く良い!
「ああ……イグニス!」
幼妻のユディアが俺を抱きしめる。
ちょっと苦しかったが、まったくぜんぜん悪い気はしなかった。
頬ずりしてくる少女?に俺のハートが一気にヒートアップ。
ユディアは随分とやつれてはいたが、もともと顔立ちが良いせいなのか、それでもそれなりに可愛くて俺の情欲はそそられた。
むしろ疲れ切った姿も、虐めた様で背徳感があっていい。
回復した時の姿も早く見てみたい。
それにしても……本当に若いよなぁ。
パッと見、12歳ぐらい?
その年で子供をもう産んだって言ってたから、手を出したのは二桁の入口過ぎぐらいか……?。
……
犯罪パねぇよ、おっさん!
うらやますぃ……。
「イグニス、お腹が空いていませんか? 今すぐに御飯をあげますからね」
……ん?
などと思っていたら、急に少女が服を脱ぎ脱ぎし始めた。
俺の小さな心臓が跳ね上がる。
おぉ……おぉおおっ!?
「さぁ、どうぞイグニス。お腹いっぱいになるまで飲みなさい」
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
瞬間、俺は理性を失い幼妻少女のちっぱいにしゃぶりついた。
(俺の人生に一片の悔いなし!)
いや、勿論それは嘘だけどね。
俺は夢中になってユディアの随分控えめな胸を堪能した。
両手をそえてマッサージしてみたり、持てる限りの握力で掴んでみたり、ちょっと叩いて弾力を楽しんでみたり、そして何よりチューチューと吸ってみたり。
「ん……」
ユディアが微かなあえぎ声をあげる。
その声は俺にだけ聞こえ、少し離れた場所で見ているリゼルグ達には決して聞こえなかっただろう。
仄かに頬に赤みを帯びているのも気のせいではない。
構わず、俺は赤ん坊の特権を駆使して、兎に角さわってもんで吸う。
もう幸せいっぱい夢いっぱいの一時だった。
なのだが……。
「んぅ……イグニス、どうしたの?」
俺は途中でその行為を止めた。
流石に罪悪感に苛まれた……訳では決してない。
何故なら……。
「リゼルグ様……もしや、母乳がでないのではないでしょうか?」
ユディアの乳を吸っていた俺が、途中から何ともいえない表情になって乳を吸うのをやめた事に、不審に思ったメイド長が俺の言いたい事を代弁してくれる。
そう……ユディアの乳からは、まったくといって母乳が出てこない。
俺は何とか母乳を絞りだそうと、マッサージしたり叩いてみたりと色々試していた訳なのだが、結局そこからは何の液体も沸き出てくる事はなかった。
……誓って言う。
俺は邪な気持ちで幼い少女の胸を好き勝手に弄んでいた訳ではないのだと!
「ユディア、そうなのか?」
「そんな……」
母乳が出ない事が信じられないのか、ユディアが俺の顔を胸へと押しつけてくる。
ちょっと横に顔をずらし、胸の谷間に顔をおさめて、ぱふぱふ♪
すぐに顔の位置を修正されたが、どちらにしてもそこは天国だった。
「ユディア様は最近何も口にされておりませんでしたので、恐らくは栄養が足りないのでしょう」
「ふむ……そうか。では致し方あるまい。カーラを呼べ」
二人の言葉に、ユディアの瞳から涙がポタリと零れ落ちてきた。
そういえば暫く何も口にしていなかった事を思い出し、舐める。
しょっぱいぜ。
「お呼びでしょうか、リゼルグ様」
「うむ。イグニスに母乳を飲ませてやれ」
「かしこまりました」
何やら後ろでそんな会話が聞こえてきたと思ったら、俺は何者かの柔らかい手によって愛しのユディアママの胸から引きはがされた。
突然の暴挙に俺とユディアは互いに引き離されまいと頑張るが、所詮は体力の落ちた少女と赤子。
抵抗虚しく宙へと浮いた時、その瞳に入ったものを見て俺は戦慄した。
「さぁ、イグニス様。お口をどうぞ」
大きくてまん丸くて形が良くて、大きい。
それにすごく柔らかい。
ちっぱいも良かったが、こっちも最高だ……。
俺は差し出された暴力満点の双丘に無我夢中で吸い着いた。
「あらあら、随分とお腹を空かせていたみたいね。あせらなくてもいいのよ、イグニス様」
そう言う黒肌のカーラという女性は、俺を前後不覚になるほど夢中にさせるだけの美貌を持ち合わせていた。
まだ若くて綺麗な容姿に長い髪をストレートにおろし、手慣れた優しい手つきで俺の身体をゆっくりと撫でていく。
「……ぁんっ。いけない子ね」
悪戯をしたら容赦なしに指をつねられた。
涙ぐむほどの痛みが手に走るが、もとより全身が痛みに苛まれていたのでほとんど関係ない。
この痛みさえなければもっとこの至福の時を心から満喫出来るというのに。
ところで、このカーラという女性は何なのだろうか?
母乳が出るという事から、近く子供を産んだばかりだというのは分かる……たぶん。
だとしても、何故こうまでも抵抗なく俺に乳を差し出しているのだろうか?
もしかして、ユディアに代わってイグニス(俺じゃない、死んじゃった方だよ)を育てるために雇い入れた乳母なのだろうか。
「カーラ、後は任せた。ユディア、早く元気になってイグニスに乳を飲ませてやれ」
「お任せください」
「リゼルグ様……」
母親?であるユディアの言葉を最後まで聞く事なく、親父殿?であるリゼルグのおっさんは部屋を出ていった。
ついでにちょっと年のいっているメイド長もいなくなる。
室内に残ったのはユディアとカーラと、側付きだろう若いメイドの三人だけになった。
プラス俺。
(おおっ……ビバッ、ぷちハーレム万歳!)
カーラの弾力ある胸に頭を預けながら、俺はそんな事を考えつつ瞼がトロンとなっていく。
やばい……ちょっと調子にのりすぎておっぱい飲み過ぎた。
居心地の良いカーラの胸の温もりが、その眠りを加速させていく。
折角これからキャッキャとハーレム気分を楽しもうとしていたのに……。
まぁ、これから幾らでもそんな機会がありそうだから、別にいいかな。
幸福の絶頂を予感しつつ、俺はゆっくりと瞼を閉じていった。
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イーゼル国、ベルタユス領、中央都ギレン。
その地に屋敷を構えるリゼルグ侯爵は、既に40歳を越えていた。
リゼルグは若くして隣国に人質として留学し、報復を恐れた父によって帰国する事を許されず、国に帰る事が出来たのはその父が他界してようやくであった。
既にその時、リゼルグは20歳。
異国の地では妻を娶る事も許されず、留学先では国主によって軟禁扱いを受けていたため女遊びも出来ず、リゼルグはほとんど女性との付き合いのない思春期青年期を過ごした。
国に帰ってからは亡くなった父の代わりに領主となり、その慣れない仕事に日々を忙殺される。
20歳を過ぎて未だ妻を娶っていない領主たるリゼルグに、周囲の者は当然の事ながら様々な縁談を勧めた。
しかし留学先での長年の禁欲生活により異性に対する意識の欠如を招いていたリゼルグは、問題が山積みの領内事情としばしば起こる戦を理由に、その縁談の尽くを断り続ける。
いっこうに世継ぎ問題が片付かないベルタユス領侯爵家。
しかし別の領地をリゼルグの叔父が統治し、子もたくさんいたため、例えリゼルグがそのまま亡くなったとしても国としては別に大きな問題にはならなかった。
よもや、このままリゼルグは跡継ぎを残さないまま他界するのかと皆が確信し始めた頃。
その問題の真の原因に皆がようやく気付いたのは、リゼルグが領主となって15年以上もの時が経った頃だった。
リゼルグは30歳になった時に、偶然に一人の幼子を助け、自らの屋敷に招き入れた。
その子供は戦で親を亡くし、放浪し命尽きかけていた時にたまたま通りかかったリゼルグの目にとまり、助けられたという。
当時、リゼルグは若年層の死亡率と孤児問題の解決に着手しており、幾人もの子供達に次々と手を差し伸べては、その以後がままならぬ状況に苦悶し続けていた。
その最中に、子供の一人を屋敷で保護し一時的に養うという手段を講じたとしても、誰もあまり気にしなかった。
その子供は幸運だったといえよう。
しかし、そのたった一つの幸運を他の不幸な子供達に知られるというのは、優遇不遇の不満を招くために、その情報は侯爵家によって秘匿された。
時が過ぎ、その子供が元は孤児であった事を皆が忘れかけた頃。
幼い時から屋敷で小間使いの真似事をしながらせっせと働いていたその子供が、突然に懐妊した。
当然の事ながら、屋敷にいる者達はその突然の珍事に慌てふためいた。
いったい誰が……という問いかけを、皆が皆、それとなく察していたために。
少女は、リゼルグを親としてとても慕っていた。
リゼルグの方も、その少女をまるで我が子の様に可愛がり、暇をみては過剰なまでに接していた。
二人の仲は、屋敷の誰が見ても仲睦まじかったという。
遅かれ早かれ、いつかはそうなっても不思議ではないと皆思っていた。
ただ、その時期は予想以上に早かった訳だが。
兎も角として、世継ぎが出来た事はリゼルグ侯爵家にとってとても良い事である。
リゼルグも少女のお腹に出来た子供が自らの子である事を認め、少女も同意したため、話は加速度的に進んでいった。
当初は難色を示していたリゼルグの叔父も、リゼルグの根強い説得を受けて折れた。
というよりも、政治・戦ともに数々の功績を着実にあげていたリゼルグの圧力に屈したといってもいいだろう。
リゼルグ侯爵家は、ようやく順風満帆な時代を築き始めたかと皆は思い始めた。
だが。
ここにきて、若かりし頃の禁欲生活のツケが回ってきたのか、リゼルグの周囲が徐々に色めき始めたのを、まだ屋敷の者はほとんど誰も気が付いていなかった。
同時に、リゼルグの周囲が突然にきな臭くなってきたのもこの頃の事である。
その最初の犠牲となったのが、子供が生まれる前にいち早く行った乳母の募集で見事採用されたカーラという女性だった。
ほぼ同時期にお腹に子を宿したカーラは、もともと高級娼婦であったため、そのお腹の子には父親は存在しない。
カーラが何を思ってわざわざ子供を宿し、それを機に娼婦の職を辞めたのかは本人以外誰も知りえないだろう。
リゼルグが生まれ育ちに関わらず広く乳母を募集した際に、そのカーラが選ばれたのは、胸が大きく父親がいない事が決め手だったと、彼女を選んだ執事は言う。
決して自身の好みで選んだ訳ではないと、しつこい程に周囲の者に諭していたという。
だが、幸か不幸か、それはカーラのその後の幸福だった人生と、不幸な事故の両方をもたらした。
リゼルグは、産まれたばかりのカーラの子供を、事故に見せかけて意図的に殺した。
それはリゼルグが、妻であるユディアが身籠もったために、ユディアを抱いた事で目覚めてしまった性欲を持て余し、カーラの身に手を出した時に引き起こされた。
もとは高級娼婦であったカーラは、リゼルグからの求めに応じるのには全く抵抗がない。
しかし予想以上の長時間求められ続けた結果、赤子の事を失念してしまう。
気が付いた時、カーラの子供は既に息をしていなかった。
その事に、カーラは当然の様に悲しむ……様な事は何故かなかったという。
「カーラを選んだのは御前だったな。イグニスも随分と喜んでいた。礼を言う」
「勿体なきお言葉。ありがとうございます」
執務室に移動し、屋敷を留守にしていた間に貯まっていた手紙の封をあけながらリゼルグは言う。
夜を通して移動し、早朝に帰宅したばかりにも関わらず仕事をし始めた主の仕事中毒ぶりに、流石の執事も舌を巻く思いだった。
この分だと、隣国からの密使にまで会いかねないと思いながらも、執事はリゼルグの仕事には口出ししない。
以前、身体を心配して忠言したところ、予想以上の不快をかって暫く遠ざけられたため。
「時に、ルードヴィヒ」
一瞬、執事は自分の名前が呼ばれた事に、気が付かなかった。
何故なら、リゼルグは決して執事の名前を呼ぶ事はなかったためだ。
リゼルグが長い留年かを終え屋敷に帰ってきてから、執事は一度として自らの名を呼ぶリゼルグの声を聞いた事がない。
屋敷に仕えて40年以上、現当主リゼルグに仕えて20年。
ルードヴィヒは悪い予感がして身構えた。
「何で御座いましょう、リゼルグ様」
「御前に北の地にある村の一つをやる。隠し里を作り、暗殺者を育成しろ」
「……は?」
言われた意味が分からず、ルードヴィヒは思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。
しかしすぐに気を引き締め直して身を正した。
「私めに……ですか?」
「そうだ。兵士の幾人かと屋敷のメイドを数人連れていけ。人選は任せる。急ぐ訳ではないが、来月には準備を終えて出発するぐらいの気持ちでいろ」
「それは……流石に即答できかねますな。私にその様な役が務まりますかどうか……」
それに何故、私なのか。
ルードヴィヒは主の真意が見えず判断に迷う。
いや、迷う事すらおかしな話だとルードウィヒは思った。
「別に御前自ら暗殺者を仕立てなくともよい。ただその手配をし、成長の監視と報告をするだけでも十分だ。御前一人にそこまで重荷を背負わせるつもりはない」
「だとしても、暗殺者というのは……どなたか、十年二十年先において消しておきたい者でもおられるのですか?」
「別に不思議な事ではあるまい。養成というのは兎も角、この時世に暗殺者の一人や二人、懐に囲っておくのは常套の手段だ。むしろそれをしてこなかった俺の方がおかしな事だったろうに」
リゼルグが意味深な言葉を呟くが、ルードヴィヒは一切の感情を表に出さない。
ただ執事としての顔をし続ける。
「暗殺者といえば、そういえば昔、一時期にだけ随分と世間を騒がせた輩がいたそうだな」
「……暗殺者が有名になるとは、それはいったいどの様な愚か者だったのでしょうな」
闇に忍んでこその暗殺者。
ちょっとした噂程度ならば仕方がないが、例え腕が良くとも世間を騒がせるほどに名を知られてしまっては2流もいいところだろう。
「その者は、たった一つの技のみで数多の命を奪ったと聞く。しかもそれは場所を選ばず、衆人観衆の中だろうと厳重に守られた城の地下深くだろうと、自由自在に無差別かと思うぐらいに大量に殺したそうだ。怖いものだな」
ルードヴィヒは表情を変えない。
頷きもしない。
「それもたった一年のこと。さて、あれは俺がまだこの世に生を受ける前の出来事だったかな? 当時、俺が子供の頃にこの屋敷にいた誰かにその話を聞いた気がするのだが、あれは誰だったか。御前はこの屋敷の誰かからその話を聞いた事はあるか?」
「いえ。私はその噂のあった時代に生きていましたので。屋敷で耳にする以前に知っておりました。それに屋敷では、その様な噂は聞いた事はありません」
「そうなのか。それはさぞ、御前も恐怖した事だろうな。子供の頃か?」
「この屋敷に仕える少し前の事です」
ルードヴィヒはあえて先代の領主、リゼルグの父の名を口にするのを避けた。
互いに互いを毛嫌いしているのを、この屋敷に仕えている者は大抵が知っている。
それは先代が死んでもかわらない。
知らないのは、イグニスが産まれる前頃に雇われた新参者だけだろう。
カーラもその中に含まれる。
「もしやとは思っていたが、御前は俺が産まれる前から俺に仕えていたのだな。長い間、ご苦労だった」
「私はまだリゼルグ様の申し出はお受けしていませんが?」
「ふん。断るまい?」
「……断っても宜しいのですか?」
「俺は御前が受けてくれる事を信じているよ」
「勿体なきお言葉」
口癖の様になってしまったその言葉を口にしてから、それは少しおかしいなとルードヴィヒは思った。
「ふむ……もう一押ししておくか。いい加減、次の世代にその席を譲れ。御前がいつまでもその席にのさばっていては、次に産まれてくる我が子に長く仕えてくれる若木が入って来れぬであろう?」
ルードヴィヒは答えるべき言葉を見失った。
同時に、暗殺者などという輩を育てる理由が、実の息子ではないイグニスを殺すための手段としてだという事も理解した。
ついでに、だんだんと年齢層が高くなりつつある屋敷内の人事に、女性を抱く楽しみをようやく覚えたリゼルグが、己の性欲を満たすためと、若年層は低賃金故に金銭面の負担も同時に減らせるという一石二鳥の方策を思いつき、それを早速実行に移し始めたのだと気が付く。
あまり認めたく内容だが、一つ二つの方策でリゼルグにとってはそれなりに利はある内容だとルードヴィヒは感心する。
しかし次の言葉を聞いて、ルードヴィヒは更に心の中で驚いた。
「隠居する許可と、のんびりする事の出来る土地と権限、それに本来の腕を活かして後任の育成も出来る。長年仕えてきた御前に、俺は随分と大盤振る舞いをしていると思うのだがな。どうだろうか?」
ルードヴィヒは、主であるリゼルグに自身が元は暗殺者であった事を一度として話した事はない。
にも関わらず、リゼルグはそれを看破した。
リゼルグははっきりとその言葉を口にした訳ではないが、これまでの話からしてそれは間違いないだろう。
ルードヴィヒは名目上は執事ではあるが、もともと身辺警護と要人暗殺を目的に、先代の領主によって雇われた。
それは、屋敷の者にも一切秘密である。
知っているのは、自身を雇った先代のみ。
いったいどこで感づかれたのだろうか。
リゼルグの側に仕えて20年という長い年月の間か、それともリゼルグが子供の時に何か失態を犯していたのか。
第一線を退いて、はや20年。
それはリゼルグの父が亡くなってからの時であり、自らの力を必要とされなくなってからの時間でもある。
既に腕は衰え、身体も老いた。
もはや二度とその世界には戻る事はないだろうと思っていたのだが……。
それは兎も角として、ルードヴィヒはこれでリゼルグの申し出を断る事が出来なくなった。
元は暗殺者とはいえ、所詮は一介の執事。
それも老いた身。
とてもではないが、リゼルグの持つ巨大な力に抗う事は出来ようもない。
悪い予感はあたるものだ。
「……分かりました。お受け致します」
「そうか。ありがとう」
そう言ったリゼルグの笑みは、最初からルードヴィヒのその返答を確信していたかの様な含みのあるものだった。
「言い忘れていたが、屋敷から連れていった者達は、育成してる暗殺者どもの練習台として10年以内に殺せ。拷問の練習に使ってもよい。但し、明るみには出すなよ」
「!?」
さしものルードヴィヒは驚いていた。
それは、別にリゼルグがいとも簡単にメイドを切り捨てた事に対してではなかった。
新しい仕事内容を早速検討し始め、そしてすぐに懸念し始めていた案件。
暗殺者を仕立てあげる上で、最も重要な殺しの経験を如何にして与えるか。
その生贄を、いったいどうやって調達すればいいのか。
「御前もそうならぬよう、存分に励むがよい」
ルードヴィヒ・ハーケルン。
かつて若き日に一角の伝説を作りあげた暗殺者にして、晩年には後の世に多くの優秀な暗殺者を送り出した男。
王侯貴族や軍人隊にとって、最も忌むべき存在。
彼の死に際に放った一言は、世界の人々を恐怖へと誘った。
「私の暗殺術ですか? 欲しければあげますよ。私の技術を全て本に残しておきました」
悪しき人々は『伝説の暗殺術』が眠る偉大なる本を探し、
更なる闇に堕ちていく。
世はまさに大暗殺時代。
それは今より30年後の世界。
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眞藤雅宗ことイグニスは、それを知る事は勿論ない。
イグニスがリゼルグに拾われて、はや三ヶ月が経っていた。
その頃には既に執事のルードヴィヒは屋敷を出ており、急激に減ったメイドの数も、新しく雇われた若い娘達によってうめられていた。
といっても、うめられたのは数だけであり、仕事の中身まではすべてカバー出来た訳ではない。
教える者が急激に減ったうえ、平均年齢も下がったために、屋敷内の至る所で問題は徐々に浮き上がり始めていた。
「あうー♪」
そんな事には一切関係ないイグニスは、今日も母であるユディアと乳母であるカーラと若いメイド達にベタベタと甘えまくって日々を満喫していた。
朝起きたらまずユディアの控えめな胸へと抱きつき、乳を吸い、もむ。
軽くケプっとげっぷをした後、キャッキャと喜んでユディアに頬ずり。
頭を撫で撫でして貰った所で、また眠りにつく。
一眠りした後、目が覚めたら今度はカーラの豊満な胸へと顔をうずめる。
一頻り抱擁したら、パクッと頂きます。
カーラはあまり悪戯すると体罰をしてくるので、比較的おとなしく食事をする。
但し、マッサージをすると乳の出が良くなる事が分かっているので、もみもみだけはしっかりと頑張った。
飲み終わるとまたケプっとげっぷをして、ご馳走様を知らせる。
するとカーラは役目を終えたとばかりに屋敷のメイド達を呼び出し、イグニスを彼女達に預けて自身は何処かへと消えてしまう。
分を弁えているのか、それとも何か思う所でもあるのか。
イグニスは何度かおねだりをしていかないでくれと懇願してもみたが、授乳以外の事でカーラが構ってくれた事は残念ながらなかった。
屋敷のメイド達との時間は、どちらかというとイグニスが遊ばれる時間となる。
何しろ赤ん坊であるイグニスにはほとんど何も出来ないのだから。
勿論それだけが理由ではなく、ほとんどのメイドがこの三ヶ月間で年若い娘にどんどん様変わりしていったので、ほとんど遠慮がないのも原因だろう。
まるで玩具の様に可愛がられては、イグニスに迷惑を掛けていた。
といっても、可愛い娘達にちやほやされるのにイグニスが機嫌を損ねる事はない。
主に撫で撫でされた時や頬ずり、胸に抱く、スキンシップをした時にキャッキャと喜んで、メイド達に自分が何にとても喜ぶのかを学ばせていく。
早い段階からそう躾けておけば、ある程度育って大きくなっても少年期の間ならば気兼ねなく彼女達に抱き着く事が許されるだろうとふんだからである。
そのメイド達の中でのイグニスの一番のお気に入りはというと。
「にゃー。今日も遊びにきたですよー」
「♪~」
猫の耳と尻尾を生やした獣人の娘だった。
もともとイグニスは猫好き(正しい意味で)であったため、その猫娘が目の前に現れた時には大はしゃぎした。
その喜び様は、母であるユディアが少し嫉妬してしまう程に。
他にも狐っぽい娘や眼鏡っ娘などにもイグニスは好意をよせ、逆に犬っぽい娘は少し反応が鈍かった。
それは次第にメイド達の間に格付けとして広まっていき、ていのいい玩具であるイグニスで遊べる休憩時間の過ごし方に少しだけ影響した。
とはいえ、キャッキャし放題のイグニスには、それは担当している仕事とイグニスに会える時間との都合だろうと考え、あまり気にしていない。
また出来る限りイグニスは分け隔てなく取っ替え引っ替えメイド達に甘えているつもりだったので、それを知るのはもう少し成長してから実際にメイド達と会話した時であった。
「あー♪ うー♪」
イグニス、0歳。
まさに男であれば誰もが夢見るハーレムの境地。
但し……。
その裏では、父であるリゼルグによって様々な殺処分計画が着々と築きあげられつつあるのを、彼はまだ知らない。
次話の投稿は、ちょっと時間が空くと思います。ご免なさい……(--メ)