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吸血鬼に関わるべからず  作者: 葉月
イケメンに恋する女の子。の話
4/5

Episode of 二宮


「よし、行くか」


暗黒の空に月が昇る頃。

背中に黒い翼を生やした一人の吸血鬼が、その顔に期待と興奮を滲ませて地上へと舞い降りた。


吸血鬼の地上での名前は『二宮匠』。

吸血鬼自身がつけた名前でその名に特に意味はない。


匠は後ろを振り返る。そこには月の光に照らされて聳え立つ自身の家があった。あの家から出ることには成功した。



だが………。

家。

というか城をバックにもうスピードで匠を追いかけてくる青年の姿が匠の目に写る。


「ちっ!もう気付きやがったか」


匠は前に向き直り、追いかけてくる青年に負けず劣らずのスピードで、目の前の雲に突っ込んでいった。それを青年も追いかけてくるかと思いきや、青年はポケットから小さな丸い物体を数個取り出し、それを雲に向かって投げ入れた。



数秒後、爆発音がして空が揺れる。雲はちりじりになったが、その中に匠の姿はなかった。

青年は暫くそこに佇み、くるりと向きを変えて引き返して行った。










「……いっ…てぇ……っ」


匠は爆発でおった傷を触る。自身の手に赤黒い血がべったりと付着した。マジで殺す気か、あいつと顔を歪める。


匠が今いるのは、どこかの建物内。

痛む傷を抑え、見つからないようにすぐにこの建物内へと入ったので、ここがどこなのかは検討がつかなかった。机が大量にあるって事は人間の学校施設なのかもしれない。



翼をしまい壁に凭れる。

血を流しすぎた。頭がふらふらする。


だがどうしたものか。

周りに人はいない。

周りにご飯はない。

探しに行くにも、この格好はさすがにまずいんだろうな。まぁ、朝になれば人が来るだろ。来るよな?来るかな?


「あー…駄目だ……」


匠は目を瞑り、とりあえず眠る事にした。少しでも体を回復させるために、意識を手放した。










くんくん。

匂いがする。

人間の匂い。ご飯の匂い。お腹が空いたなぁ。あれー、俺何してたんだっけ?何でこんなに腹空いてんだろ?飯って食べたっけ?食べてないのか?あーそっか。これがご飯か。

口を開いて牙を突き立てる。生温かいご飯が口一杯に広がる。美味しい。空きっ腹になんとやら、だ。何か声が聞こえた気がするけど気のせいだろう。いつものご飯なら何かを言う事なんてないんだから。何故かって?そんなもん俺が黙らせるからに決まって………






あれ?

俺、今力使った……か?







牙を外して目を開ける。目の前に見えた状況に、匠は目を見張る。


目の前には女。

意識のない女。

首には二つの傷痕。

今まさに匠がつけた牙の痕。

匠のさっき食したご飯。










「………やべ」



力使う前に血吸っちまった。








これが俺とあいつとのファーストコンタクト。

初めて出来た人間の知り合いである藍田華斗という女との、フィクションじゃない非現実でもない、ノンフィクションで現実でリアルな出会いであった。



「どうだ?感動的だろ?」


匠はそう言ってにやりと笑った。



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