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吸血鬼に関わるべからず  作者: 葉月
イケメンに恋する女の子。の話
3/5

「私は今日から全力で二宮君を無視するわ」

お子さんにあまり宜しくない表現、多少のエロスがあります。苦手な方は読まないで下さい。


さあ、話を整理しよう。


いったい全体、何がどうしてこうなったのか。

華斗は一人無言で考える。


私はただ、もしかしたら屋上に二宮君がいるかもと思い見に来ただけなのに。屋上の扉を開けるとそこは異空間。まっ逆さまに落ちていった私は、お腹に巻き付いている蔓状のものに助けられ、上を見上げれば黒い翼を生やした男が二人。

そのうちの一人はクラスメイトのメガネ男子、二宮匠。人種、吸血鬼。もう一人の方は見たことがない。だが、二宮と同じく背中に黒い翼を生やしているという事実を踏まえ、この男も二宮と同じ吸血鬼であると考えられる。



以上。

考想終了。




うむうむ。

もしかして、めんどくさそうなタイミングで乱入してしまったのだろうか。私…。

と、華斗は無考にも屋上に足を踏み入れてしまった自分の浅はかさに少しばかり後悔していた。


そんな中、叫び声が聞こえる。


「何故人間がここに入ってこれる!?」


長髪君が叫んだらしい。


「実はあいつは人間じゃない」と二宮がボケるので、私はすかさず突っ込む。


「いや、人間ですが」


二宮は耳が良いのか、と前回の華斗は思っていたのだが、どうやらそれは少し違うらしい。遠く離れる華斗にも二宮や長髪君の声が聞こえるからだ。

多分、この異次元空間のせいだろう。


「そいつに防壁はきかねーよ」


二宮のその言葉に、長髪君は目をまるくする。


「…そうか…。噂になってたあの人間なのか」

「ちょっと待って。噂って何の噂?私、吸血鬼の人達に何か噂されてんの?」


通りで最近くしゃみの数が半端ないなと。

ていうか噂ってなんだよ、噂って。


「まぁ、お前の件に関しては協定の関係上、俺の親に連絡してたからな。そのせいだろ」


そのせいだろ、って。


「それってもしかして二宮君が吸血鬼だって私が知ってるって事のこと?」


二宮はこくりと頷く。

最悪だ。

知りたくて知ったわけじゃないのに。


「まさか噂が真実だったとは。半信半疑だったが……俺のかけた防壁を潜り抜けてきたんだ。信じる他ないだろうな」


私は長髪君を見る。

何なの。その防壁に対する君の絶対的自信は。そもそも防壁があるとかすら、何も感じなかったんだけど。とは華斗の言い分である。


そんな長髪君は華斗をじっと見下ろしてくる。いい加減、この高低差首が疲れてきたな、と感じ始めた時、二宮が口を開いた。


「ところでお前、何しに来たんだ?」

「え…?あぁ、二宮君がさっきの授業いなかったからもしかしたらここかなぁと思って見に来ただけ」

「そうなのか、悪いな」

「いえいえ。じゃあ、お取り込み中だったみたいだし、私は教室に戻るわ」


早々においとましますわ。

だから下ろして下さい。離して下さい。学校に戻してねー、と華斗は足をぷらぷらさせて自己アピール。

だが一向にお腹に巻き付く蔓が動く気配も、下に広がる暗闇が消える気配も、先程まであった屋上の扉が現れる気配もない。

ああ、言い忘れていましたが例によって例の如く扉は消えています。

ありきたりですね。


「あの、二宮君。教室に戻りたいのですが」


華斗はついにそう口に出した。


「戻ればいいだろ」


バカではないだろうか。


「お前は馬鹿か。私のこの状況を見て何も解らない?まっ逆さまに落ちた所を助けてくれたのはありがたかったけど、そろそろ離してよ、この蔓。あ、言っとくけど屋上の扉の所で下ろしてよね」


落とすとかやめてよね。


「……だとよ、あきら


二宮は長髪君に向けてそう言う。長髪君の名前は暁と言うらしい。そして二宮ではなく、その暁君が蔓を使って助けてくれたらしい。


華斗は暁の方をじっと見上げる。


「…………」


無言。

無言で見下ろされる不気味さったら半端ない。


暁君が人差し指をくいっと上げると、華斗に巻き付いていた蔓が華斗ごともの凄いスピードで上へと昇る。


「…っ…わっ…!!!」


そして二宮や暁と同じ高さまでくるとピタリと止まった。

反動で華斗の体が上下に揺れる。


「きもぢ…ぁるい……」


華斗は手を口元に当てる。

もの凄いスピードでの重力への抵抗に、華斗の体はついていけなかったらしく吐きそうになった。あと、多分お腹に巻き付いた蔓の圧迫もあって。


すぐ隣にいる暁はそんな華斗に構わず二宮を指差し叫ぶ。


「俺と勝負しろっ!」

「はぁ……さっきからやってるだろ?何回も」

「お遊びの勝負じゃないっ!真剣での勝負だ!!」


暁は何処から取り出してきたのか。

二本の木刀らしきものの一本を二宮に投げ渡し、もう一本の方を構えて戦闘態勢に入る。


「だからやらねっつっただろ」


投げ渡された木刀を渋々受け取りながらも、勝負する気のない二宮に暁は笑みを向ける。


「この人間がどうなってもいいのか?」


あれ?

もしかしてその人間って私の事ですか?


あまりの気持ち悪さに未だ回復出来ずにいた華斗は、うぅと呻き声をあげながら、気持ち悪さに耐えつつ横にいる暁を見る。


「どうなってもって……どうする気なんだ?」


動じない二宮に暁はふっと笑い、こうするのさっ!と手を広げて私を指す。


お腹に巻き付いていた蔓が華斗の体を這って少しずつ動きだす。二股に分かれた蔓は一方は上へ、そしてもう一方は下へと………。


「ちょっ……!!!」


華斗はぎょっとして気持ち悪さなど吹っ飛んでしまった。必死に体を這う蔓を止めようともがくがびくともしない。その間にも蔓は少しずつ上へ下へと伸びていき、華斗の体を艶かしくゆっくりと這いずり回る。




「ちょ、ちょっと、まっ……!!!」


そんな華斗の制止など何のその。

なおも止まらない蔓の動き。


何これっ!?

こんなエロゲー的展開いらないからっ!!!

私にはいらないからっっ!!!!!

きゃーーとか可愛い事言えないからいらないからあぁぁぁっっっっ!!!!!ぎぃぃいやぁーーー!!!!蔓がもぞもぞするーーーーっ!!!!!!


「……これがお前の言ってたどうなっても、のどうなっても、か?」


二宮が渋い顔をしてじっと華斗を見る。


「あぁ、そうだ。助けたかったら俺と勝負することだなっ」

「…………」


二宮はなおも渋い顔のまま触手ぜ…、蔓の攻撃にあっている華斗の方をじっと見つめる。そしてぼそっとこう呟いた。










「ありだな」



「あほかぁぁっっっーーーーーーー!!!!!!!!!!なしに決まってんでしょーーーーーがぁぁぁっっっっーーーー!!!!!!!!!!!!!」


華斗の叫びが異空間に反響する。


「いいから助けてよっ!!」

「えー……」



不服そうな二宮の顔。

ありえない、こいつ。

ホントありえない。


そんな華斗に突如ぬるりとした感触が襲う。

何、と思い蔓を見た華斗はぎょっとする。蔓からはまるで樹液のようにぬるぬるした液体が出ていて、華斗の体をべたべたにしていっていた。


「………っっっっ……!!!」


これじゃあ正しくリアルエロゲーじゃないのよぉぉぉっっっーーっ!!!!!


華斗は泣きそうになりながら必死にぬるぺた蔓と格闘するが、ぬるぺたになったおかげで先程よりも蔓が掴みにくく、無駄な抵抗に終わる。

蔓は華斗の胸を強調するように巻き付き、腰を強調するように巻き付き、お尻を強調するように巻き付き、足にぐるぐると巻き付く。

華斗の体、制服は蔓の樹液でぬるぬるでその体を一層艶かしく見せていた。


「………」


二宮がそんな華斗を無言でじっと見ているのをみて、華斗は口を開こうとするのだが、這いずりまわる蔓の動きに泣きそうになっている華斗はなかなか言葉が出なかった。


「おいっ!勝負する気はあるのかっ!」


ちっとも動こうとしない二宮に暁は苛立ちそう叫ぶのだが、二宮はあとちょっと待て、と言い手で暁にストップをかける。


ぎっ、と華斗は二宮を睨む。


「…っ、ちょっと待て、じゃなーーいっ!!!!!あんた何考えてんのよ!!!この変態っ!!!」


やっとの思いで口をひらく事に成功した華斗。


「へんたい!へんたいへんたいっっっ!!」

「男は皆変態だ」

「開き直んな!!!」


いい加減にしないと………と本気でブチキレる寸前。蔓が華斗の服の内その手をぬるぬると伸ばした。


「……っっっ!!!!!」



マジっ!!

マジなのっっその展開ぃぃぃっっっ!!!


華斗がぎゅっと目を瞑ったと同時に、二宮が動いた。ひゅんっという音がしたかと思うと、気がつけば華斗に巻き付いていた蔓はバラバラにされ、華斗が投げ出された所を二宮が無事にキャッチしていた。


「さすがにそこまではまずいだろ」

「……そこまでもここまでもない………。最初っから悪いに決まってんでしょ……」


姫抱っこされながら華斗は二宮を睨み付ける。


「男は皆変態」

「あんた、それ言えば許されるとでも思ってるわけ?」

「泣き顔も可愛いもんだなぁ、って思ってさ」


イケメン顔でにやりと笑いそう言う二宮。

いつの間に眼鏡を外したのか。


「……くっ…!!」


激しく最低な行為をされたのに、イケメンに姫抱っこで怒りよりトキメキが軽く上回ってしまった華斗であった。



そして突如現れた屋上に華斗は下ろされる。暗闇の異空間はいつの間にか消えていた。華斗の体をまさぐっていた蔓も消え、べたべたにされた体や制服は何事もなかったかのように綺麗になっていた。


「あの男、暁…だっけ。どこ行ったの?あいつに一発ぶちかましてやらないと気がすまないんだけど」


怒りに拳を握り締め、華斗は二宮を睨む。

二宮は眼鏡をかけ直していた。イケメンが成りを潜めた普通二宮はあっちと指を指す。

華斗が

そちらの方向を見ると、逆くの字に折れ曲がって動かない暁がいた。

え、何あれ。怖い。


「ど、どうしたの…?あれ」

「あぁ……勝負したがってたからしてやっただけだ。お前助ける前にぷちっと」


ぷちっと、って。


何だか物凄く可哀想になってきた……。

あれだけ勝負勝負言っといてぷちっとやられるなんて。逆くの字に折れ曲がっている暁を哀れみの目で見つめる華斗。


それにしても大丈夫だろうか。

あの格好。怖い。怖いよ。


そんな中、休憩時間が終わった事を告げるチャイムが鳴り響く。と同時に逆くの字に折れ曲がっていた暁がゆっくりとその場に立ち上がった。


生きてた。

良かった。


そして暁は捨て台詞を吐く。「……覚えてろ……次こそは必ず……っ!!」と。


そして暁は黒い翼をはためかせ屋上から飛び立って行った。

ああ、物凄くやられキャラ。


「……結局、あれは誰なの?」


華斗は二宮に聞く。


「俺と同じ吸血鬼」


それは聞くまでもなく解ったんだけど。


華斗はため息をつき空を見上げた。

どんより暗い曇り空。

さっきまでの異空間より暗くはないのに、あの灰色の空に何故か気分がどんぞこに落とされてしまうのは何故なんだろうか。

太陽はいったいどこに隠れてしまったのだろうか。あの和みのある青い空は何処へ消えてしまったのだろうか。









『何か悪いことが』


杏のその言葉を思い出す。


私がテストで100点とったわけでもないのにこの仕打ち。



「…酷すぎる」


吸血鬼には関わらない方がいい。

改めてそう思った今日このごろ。





彼女の名前は藍田華斗。


吸血鬼には、

関わるべからず。



「私は今日から全力で二宮君を無視するわ」



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