#2 僕ちゃんは猫?である?名前はまだニャい。
引き続き、どうぞ、よろしくお願い致しにゃす!
【前話のあらすじ:「人生」→「猫生」に変化した「元人間」。配信サイトに見つかって、世界で「猫生」が話題になっていることを知らずに、「人生」を取り戻そうと、決意するのであった....】
(あれ……? なんか、体がさらに軽くなってない?)
ゴブリン三匹を「猫パンチ!!」で蒸発させた直後のことだ。
僕の視界の端っこで、ピコン、ピコン、と、やけに軽快な、まるでゲームの通知のような電子音が鳴り響いていた。
『レベルが上がりました:Lv1 → Lv2』 『レベルが上がりました:Lv2 → Lv3』
(……おん? ちょっと待って。三匹倒しただけで2レベルアップ? いくらなんでも、世の中の道理ってものを無視しすぎじゃない?)
普通、こういうファンタジーの定番だったら、最初はスライムとかツノウサギみたいなのを何十匹も、それこそ泥にまみれて倒して、ようやく「あ、1上がった!」って喜ぶものだよね。
それとも何、あの緑色の、鼻をつくような悪臭を放っていた方々、実は一匹で経験値一万くらい持ってるボーナスモンスターだったの?
……いや、どう見てもそんな高貴なオーラはなかった。 ということは、原因は僕の方にあるってことだ。
「……あ、あの……猫、さん……?」
さっきまで配信カメラを僕に向けていた女の子が、震える声で僕を呼んだ。
名前は知らないけれど、確か配信の中では自分のことを「新米探索者のユウナ」とか言ってた気がする。
隣にいるお兄さんは、剣を構えたまま石像みたいに固まっている。
まあ、目の前でゴブリンが氷のオブジェになった瞬間にオレンジ色の爆炎で霧散したんだから、無理もないよね。
僕だって自分がやったことじゃなかったら、腰を抜かして逃げ出す自信がある。
僕はとりあえず、自分が今どういうスペックになっているのか、しっかり確認することにした。
「えーっと、ステータス、オープン! 表示! 出ろ!」 心の中で必死に念じてみる。
すると、配信者の画面越しではなく、僕の網膜に直接、青白い半透明のウィンドウが浮かび上がった。
【名前:----------】 【レベル:3 / 5(次進化必要レベル:Lv5)】 【個体:ユニーク個体】 【属性:氷・炎・風】
【ステータス】 HP:50 MP:50 攻撃力:10 防御力:5 敏捷:100
(敏捷100……!? これ、初期値だよね? まだ生まれたて(?)だよね?)
この「100」という数字がどれだけ異常か。
さっきの移動でなんとなく理解はしていたけど、改めて数値で見ると背筋が凍る。
1歩踏み出せば景色が線になる。瞬きする間に敵の背後に回れる。
これ、世界最速の男とかが一生を捧げても全然たどり着けない領域なんじゃないかな?
神様、ありがとう。僕を「スピードの向こう側に行ける猫」にしてくれたんだね....
……いや、猫なんですけどねぇぇぇ!!
そして、その下。
明らかに「これだけは別格です」みたいな、禍々しいほどのオーラを放つスキル項目があった。
まるで、俺TUEEEと言わんばかりの存在感だ。
【固有スキル:万象統御】
種類:不変的固有スキル(常時発動)
効果:1.怪我・疲労の回復速度超UP(通常の魔物の10倍以上)
2.全状態異常無効(麻痺・毒・凍結・睡眠・魅了・混乱など)
3.成長速度超UP(獲得経験値5倍以上)
4.水・氷・炎・風の属性吸収(HP・MP回復)
5.全属性耐性(火・氷・風・水・雷・光・闇)
6.制約無効(罠・隷属魔法・テイミング・封印・契約など)
(…………は?)
ちょっと待って。
一瞬、思考が宇宙まで飛んでいった。 何これ。 盛りすぎじゃない?
神様、設定会議の時に「とりあえず最強のやつ全部乗せといて」って適当に決めたでしょ。
怪我は秒で治るし、毒も効かないし、レベルは5倍速で上がる。
おまけに、誰かに飼われる(テイムされる)ことすら拒否する完全無欠の不干渉権。
これ、魔物が持っちゃいけない力だよ。
例えるなら、RPGを始めた瞬間に「レベル99・最強装備・全魔法習得済」の状態でスタートボタンを押したようなものだ。
(神様ぁぁぁ!! 僕をペットにしたんじゃなくて、人類の手に負えない災害に仕立て上げたんですかぁぁぁ!!)
こんなチート、物語だったら第3話くらいで「強すぎてつまんね」って打ち切られるレベルだよ。
でも、現実(?)の僕は、このモフモフの体で生きていかなきゃいけない。
【スキル(習得済)】 氷魔法:Lv2 炎魔法:Lv2 風魔法:Lv1
【技能】 ・小火球 ・小氷弾
技能は意外と可愛い名前だね……。でもさっきの、あれだよね?
「あっち行ってて!」っていう拒絶の猫パンチに、小火球と小氷弾を同時に、全力で、風の加速を乗せて撃ち込んだから、あのゴブリンたちは蒸発したんだよね。
……なるほど、名前は「小」だけど、出力源(僕)が「大」なら、結果は「超」になるってことか。
(小×大=中でしょぉぉぉ! なんで、小×大=超になるんですかぁぁぁ!!)
僕が自分のステータスに引きつっている間も、女の子――ユウナちゃんの持っている魔導デバイスからは、止まることのない異常な通知音が響いていた。
まるで、壊れた目覚まし時計が狂ったように鳴り続けているみたいだ。
「お、おい、ユウナ……カメラ、まだ回ってるのか?」
「……うん。お兄ちゃん。リスナーが、リスナーがもう三万人を超えちゃった。しかも、サーバーが重すぎて画面がカクカクしてる……!」
ユウナちゃんが見せてくれた画面をチラッと横から覗き込む。
そこには、僕が知っているインターネットの世界とは明らかに違う、熱狂と混乱が渦巻いていた。
『待て待て、今のゴブリンの消え方、原子レベルで分解されてなかったか!?』
『鑑定結果がバグってるぞ!【測定不能】ってなんだよ、魔王かよ!』
『でも見た目は超かわいい……なにあのポーズ。あざとい。あざとすぎる!』
『「混合色の猫」って呼ばれてるけど、あれ絶対「聖獣」だろ。誰か保護しろ!』
『保護とか無理だろw 触れた瞬間に凍結爆破されるわ!』
(バズってる……僕、めちゃくちゃバズってる……)
でもさ、人間たち、声を大にして言わせてもらうよ!
僕は君たちの敵じゃない!むしろ、さっきのゴブリンから君たちを助けた、正義の味方(猫)なんだよ。
だから、そんな「捕まえろ」とか「ラスボス」とか怖いこと言わないでほしいな。
さらに、人間たち、声を超大にして言わせてもらうよ!!
「僕は(元)人間なんだぁぁぁ!!」
ふぅ。少し、すっきりしちまいました。
そこで、僕は、ふと悟ってしまった。 僕って頭いいからねぇ~
今の僕はレベル3。
そして、ステータスの横には「次進化必要レベル:Lv5」とはっきり刻まれている。
レベルが5になったら、僕の姿はどう変わるんだろう? もっと猫っぽくなるのか。もっと巨大になるのか。それとも……。
(……もしかして、進化したら人間に戻れる、とか?)
その可能性に気づいた瞬間、僕の胸がどくんと大きく高鳴った。
もちろん、この淡い青とオレンジの毛並みは最高にオシャだし、肉球のぷにぷに感も捨てがたい。
足が速いのだって、正直に言えばめちゃくちゃ気持ちいい。
でも、やっぱり僕は人間として、お箸で炊きたての白いご飯を食べて、ふかふかのベッドでスマホをいじりながら寝たいんだ。
猫としてカリカリを食べる生活も悪くないかもしれないけど、それはまだ、最終手段にしておきたい。
「よし……!」
僕は決めた。
とりあえず、このダンジョンの奥へ行こう。
レベルをあと2つ上げれば、僕が何者なのか、もっとはっきりするはずだ。
神様――あの「楽しんで!」とか言ってた無責任な御老体が、何を考えて僕をこんな姿にしたのか。そのヒントだって、もっと強い魔物を倒せば見つかるかもしれない。
僕は、固まっている二人の方を向き、もう一度渾身の「キメポーズ」を披露することにした。
今度は少しあざとさを意識して、首を45度傾け、片方の肉球を頬に添える「てへぺろ」スタイル(舌は出してないけど)だ。
これ、僕がいた世界でアイドルがやってた最強のポーズなんだよね。
「ミャウ!(ちょっと修行してくるから、バイバイ!)」
「あ……ま、待って! 猫ちゃん! どこ行くの!?」
ユウナちゃんの呼びかけを背中に受けながら、僕は再び地面を蹴った。
今度はかなり手加減をしたつもりだったけれど、それでも一瞬で景色が溶け、視界は瞬く間に加速していった。
(うわぁ……やっぱり、この風を切る感覚、最高にハイになれる……!)
四本の足が地面を掴むたびに、体の中から強大な魔力の鼓動が伝わってくる。
正直に言おう。
人間だった頃の、満員電車に揺られて学校に行くだけの日々よりも、今の僕の方が……何倍も「生きてる」って感じがするんだ。
(レベル上げ、意外と楽しい……いや、かなり楽しいかもしれない!!)
僕は、ダンジョンの暗闇の奥へと、青とオレンジの閃光となって消えていった。
レベル5へのカウントダウンは、もう始まっている。
そこにはどんな驚きが待っているのか。あるいは、さらなるツッコミどころ満載の設定が待ち構えているのか。
……まあ、僕ならどんな状況でも、最高に格好いいキメポーズで乗り越えてみせるけどね!
—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—
にゃーのスピnド・OFF:「えー、本日のぼやき。ステータス画面って、もっとこう『頑張って育てました!』っていう達成感があるものじゃないの? 最初からフルコンプのセーブデータ渡されても、逆にプレッシャーなんですけどぉぉ!! あと、てへぺろポーズでサーバーを落とすのは、営業妨害に含まれますか?……ニェァァァ!!」
【お読みいただきありがとうございます!】
次話は、ついに、〇化!!
~高評価やブックマーク、感想等いただけるとありがたいです!~
E.Nyaward:「E.はEpisodeです!!個人的にはもう少し、気の利いた"やつ"を考えたかったんですが、筆者の"ちいのう"では、ひねり出せなかったです(笑).....次回も、よろしくお願い致しにゃす!」
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