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ウォッチャー  作者: 河野守
第4章 悪人に正義の鉄槌を

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第7話

 今まで黙っていた徹はようやく口を開き、声を絞り出す。

「……なんで……」

「うん? もう少し大きい声で言ってくんない? 皆に聞こえないじゃん」

「な、なんで……なんでこんなことをするんですか? 今回だけじゃない、子供の頃も、八年前も。何故、川村先輩は俺を陥れようとするのですか? 八年前のことは、単なるイタズラだと聞いていた」

「確かに、俺はそう言ったな」

「だが、イタズラどころか、テロだった。篠津川を代わりに行かせてなければ、俺がテロリストにされるところだった!」

 徹は裕太郎をきつく睨みつける。今まで貯めていたものが、一気に吹き出したかのように。その目の中で怒りが燃え上がっていた。

「何故、あんたは俺を、俺の人生を破壊しようとするんだ!」

 その問いに対し、裕太郎はニヤリと口の両端を引き上げて見せる。

 暗い笑顔。悪意に満ち満ちた、とても暗い笑顔だった。見た者が吐き気を催すほどの。

 よくもこのような悪辣な笑みを作れる人間がいるのだと、徹は戦慄。

「何故かって? ()()()()()()()

「……は?」

「お前の人生を壊すのが面白いから。お前は国会議員の息子で、将来が約束されてる。そしてお前は自分の将来のため、支援者の子供である俺のご機嫌を取らなきゃいけない。お前が俺の言いなりになって、自分の人生を守ろうと右往左往する様子を見るのは愉快だったぜ。今回のことだってそうだ。お前の過去の悪事をバラして、人生を台無しにする。……今のお前の絶望した顔、最高に面白いぞ」

「き、貴様ぁぁぁ……!」

 徹から怨嗟を込めた視線を向けられても、裕太郎は意に介さない。

「さて、次は何を話すかな。そうだ。中学生の頃の麻薬パーティーの話でもするか。徹がパーティーの場所を用意……」

 裕太郎が更に徹の暴露話を続けようとした時。

「お客様、飲み物はいかがですか?」

 髪を後ろに束ねた、ホテルの若い女性スタッフが裕太郎に話しかけた。女性はグラスとワインボトルが乗ったトレーを手にしている。

「おー、気が効くじゃねえか。喋り疲れて、喉が乾いてたんだ。一杯もらおうか」

「かしこまりました」

 女性スタッフは慣れた手つきでボトルのコルクを抜き、グラスに赤ワインを注ぐ。

「どうぞ」

「サンキュー」

 裕太郎は赤ワインをグラスの半分ほど飲み、酒臭い息を吐く。

「美味いな、このワイン」

 もう酔いが回ったのか、裕太郎は顔を赤らめる。残りのワインを一気に飲み干すと、女性スタッフに目を向けた。

「にしてもあんた、良い女だな。美人だし、こんな状況で俺達に話しかける度胸もある。強い女は好きだぜ」

 裕太郎は女性スタッフの尻に手を伸ばし、パンツスーツの上から軽く撫でる。

 セクハラを受けた女性スタッフは表情から笑顔を消し、ワインボトルで裕太郎の後頭部を力一杯殴りつけた。

 ガラスの破片と共に、裕太郎は床に倒れる。髪をワインで赤く濡らした彼は、ピクリとも動かない。その裕太郎の様子を、割れたワインボトルを片手に、女性スタッフが軽蔑の眼差しで見下ろす。

「な、なにしてんだ、ババア!」

 リベルタスの少女は動画配信に使っていたスマートフォンを投げ捨て、スカートのポケットからトカレフを取り出す。だが、少女が銃の照準を女性スタッフに向けるよりも早く、女性スタッフはトレーの陰に忍ばせていたテーザー銃を構え、少女の薄い胸にスタンガンを打ち込んだ。スタンガンが刺さった少女は甲高い悲鳴を上げながら、近くに置いたあったテーブルを巻き込み床に倒れる。

 女性スタッフは目を吊り上げ、少女を睨みつけた。

「大人の女性をババア呼びするな。小便臭いガキが!」

 女性スタッフの豹変に、呆気に取られていたリベルタスのメンバー達。仲間が攻撃されたとようやく認識すると怒号を上げながら、女性スタッフに銃口を向けようとする。

 女性スタッフ、に扮した鳳明日香は、複数の殺意を向けられながらも冷静。

「お前ら、パーティーが好きなんだろ。ほらよ、特大のクラッカーをくれてやる」

 明日香はそう言い、スタングレネードをリベルタスに向かって放り投げる。

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